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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
最終章 英雄の帰還
62/70

分隊

 兵達が怯える中で、ゲオルグだけは森の中を駆け回った。

 一陣の槍を掲げて突風を起こし、燃え盛る火の勢いを弱めていく。風によって北へと追い返された炎は、すでに燃え尽きた木々の中で消えていった。

 しかし、火事の規模はゲオルグだけではどうにもならない域に達する。

 ゲオルグは森から一度抜け出し、川にいる両軍に向かって叫ぶ。

「東西に溝を掘って火の手を食い止めるんだ! 逃げていてはこの軍勢どころか、この山ごと国も人々もすべてが焼き尽くされるぞ!」

 両軍の兵士達は慌てて川から上がり、剣や槍を使って溝を掘り始めた。南側へ火が回らないように、燃えそうな木は先になぎ倒す。

 ゲオルグは鎮火するためひたすらに走り回っていると、北から軍勢を引き連れたテレーズがやって来た。随分と慌てた様子である。髪飾りはなくしたのか、長い髪が乱れていた。

「あっ、無事だったのですねゲオルグ! この火事の原因は何なのです?」

「さっぱりだ。東ベルン軍の策略でもない。すべてが突然だった」

「そうですか……」

 ゲオルグの後方からバルガと両軍の混ざった集団がやってくる。

「テレーズ! 城の方の火はどうだ!?」

「こちらに比べて勢いも弱かったので、ほぼ鎮火済みです! それよりも、ソ、ソフィーティア様が!」

 ゲオルグはテレーズの背後にいる軍勢を見渡した。

「ソフィーティア、見当たらないな。一緒じゃないのか?」

「そうなのです! 火事の直後、黒い鎧の騎士に連れ去られたのです!」

「なんだと!?」

「火事になり、軍を先導して消火の指示していたところを……こちらには?」

 ゲオルグは首を横に振った。

「どこに向かったか分かるか?」

「いえ、それが……煙の中に消えていきました……」

 流れてきた煙を扇子で払うテレーズ。気が付くと、周囲の火の勢いが増していた。

 一人の東ベルン兵がバルガの前に出る。

「その黒い鎧を着た騎士は、騎士団長のクロードです!」

「本当か!? 間違いないな!?」

「はい! ですが、どこにいったのかまでは我々でも……」

 バルガが兜を被りなおす。

「おのれっ! わしが成敗してくれるわ!」

 北の森に向け、バルガは馬を走らせて行った。

 ゲオルグも手綱を引く。

「テレーズはここの指揮を頼む。俺はクロードを追う」

「えっ!? む、無理です! ゲオルグも一緒にここで指揮を!」

「なあに、難しいことはない。テレーズならできる」

 しかしテレーズは首を縦には振らなかった。

「ソフィーティア様もいない今、私一人では、こ、怖いわ……怖いのです……」

「火事が怖いだって? テレーズ…………ちょっと来るんだ」

 ゲオルグは手招きをしてテレーズを呼び寄せた。

「耳を貸すんだ」

「?」

 疑問に思いながらも耳を貸すと、ゲオルグは小声で耳打ちをする。

「火事なんかより……怒ったテレーズの方が……ずっと怖い……」

「な、なんですってーっ!?」

 テレーズが思い切り振り抜いた扇子は、ゲオルグの首筋をとらえた。

「あぐおおおーっ!?」

「あっ!? すみません、つい……で、でも!」

「うう……な、なかなかの一撃だった。その意気でやれば絶対に出来る」

「そ、そうですね! 分かりました。では、ソフィーティア様とバルガを頼みます」

「任せろ。少し兵を借りるぞ」

 小勢を引き連れ、ゲオルグはバルガを追って燃える森の中へと飛び込んでいった。


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