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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第一章 敵国、西ベルン城へ
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騎士団長の訪問

「何よそれ! どーいう意味よ!」

「そのままの意味ですが、それが何か?」

「馬鹿にしないでよ!」

「では、何か良い考えがあるというのですか?」

 ソフィーティアは押し黙った。

 テレーズはゲオルグを扇子で指す。

「この男、生かしておけば必ず我々に襲い掛かってくるでしょう」

「なんだと貴様!」

「ほら、あの顔を見てください。鋭い目つき、剥き出した歯……まるで野獣のようですわ」

「言わせておけば……ぐぐ……」

 だが、ゲオルグはテレーズの指摘どおりの顔をしていることに気が付いた。。そしてその顔をソフィーティアに見られている事にも。

 言葉を呑んでこらえたゲオルグを見つつ、ソフィーティア。

「確かに怖いけど、うーん……」

 テレーズが扇子をパチンと閉じた。

「迷う必要はありません。処刑です」

 ゲオルグは自らの死がいよいよ差し迫ってきている事を感じ取る。

「ま、待ってくれ! 話くらいは聞いてくれてもいいだろう!」

「何も話すことなどありません! 連れ出しなさい!」

 両脇の兵士がゲオルグの服を手荒に掴み、立ち上がらせる。

「くそっ! 離せ! 俺が何をしたって言うんだ!」

 ゲオルグが抵抗するので、複数の兵士が抑えかかって動きを封じる。

 顔が床に付いて身動きが完全に取れなくなった、その時。

 バァン!

 突如、乱暴にドアが開かれた。

「おうおう! いたか、この敵城主めぇーい!」

 首だけで振り返ると、中年の男が入り口に立っていた。ゲオルグの鼻に蹴りを入れた男である。一人では立てないほどに酔っているらしく、兵士の肩を借りながらバランスを取っていた。手に酒瓶を持ちつつ、フラフラとおぼつかない足取りで進んで来る。

「ヌハハ、こいつだ! わしは昨日、この小僧を捕まえたのだぁ!」

 ゲオルグを押さえつけていた兵士が立ち退いた代わりに、今度は中年の男の足が背中を踏みつける。

「この小僧は、わしに蹴られて情けなくも鼻血を出して気を失ったのだ!」

 踏みつけてくる足の重みに耐えていると、ソフィーティアが声を上げた。

「バルガ! 騎士団長のくせに昼間からお酒なんか飲まないでよ!」

「うるさいわ、この小娘がっ! 敵城主を捕まえたのを祝って飲んで何が悪い!」

 そして手に持った酒瓶を口に運び、ぷはぁと酒臭い息を吐く。

「そんなことより褒美をよこせ! 金だ! 金を出せ!」

 テレーズが酒臭さを扇子で防ぐ。

「ではソフィーティア様、バルガには私から相応の賞与を与えてもよろしいでしょうか」

「もう、お金ばっかり欲しがるのね……好きにすればいいわ」

 不満そうに答えるソフィーティア。騎士団長のバルガは満足げに笑みを浮べた。

「やったぞ! 敵城主がバカで儲けたわ、ヌハハハハっ!」

 再びグイグイと背中を踏みつけたところで、ゲオルグはその足を払って立ち上がった。

「黙れ! このハゲ頭が!」

「な、な、なんだとぉ!」

 ベルガの怒号が響く。それ以上に大きな声でゲオルグは反論した。

「ハゲをハゲと言って何が悪い! このハゲ!」

「この小僧がぁっ!」

 ベルガは顔を真っ赤にして怒った。ゲオルグはその様子を指差して笑う。

「ハッハッハ! 赤くなったらまるでタコだな! 山岳地帯にもタコはいるんだな!」

 周りの兵士も声を必死に殺して笑い始めた。バルガは肩を支えていた兵士を払い退け、酒瓶を投げ捨てる。

「ええいっ! その生意気な口を黙らせてやる!」

 腰に下げていた剣に手を掛けた。

 テレーズが叫ぶ。

「騎士団長と言えど、度が過ぎますよ!」

「黙れぃ! この小僧は騎士団長であるわしを侮辱したのだぁーっ!」

 ついにバルガは剣を鞘から引き抜き始める。

「この剣で貴様を今すぐ処刑して――お、おっとっと!」

 剣の重みでバランスを崩し、よろめくバルガ。

 そのまま剣が引き抜かれ、切っ先がソフィーティアの顔面を目掛けて振られる。

「きゃあっ!」

「あ、危ない!」

 短い悲鳴を上げるソフィーティアをかばうように、ゲオルグが自分の左腕を突き出した。間一髪、その腕が刀身を受け止める。

「あ……あ……」

 漏れるソフィーティアの声。ゲオルグの腕を伝う血が、肘から床へと滴り落ちる。


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