決意と祈り
柔らかな夜風がソフィーティアの髪を揺らす。
「ねえゲオルグ、西ベルンに戻らない?」
「俺が戻って何になる」
「うん、書状は破られちゃったらしいわね。身代金も貰えないと思うわ」
「その通り――」
ゲオルグは起き上がる。
「俺は、無価値の城主だ」
ソフィーティアは小さく肩をすくて微笑んだ。
「そんなの関係ない。西ベルン城主としてじゃなく、私個人として戻ってきてほしいの」
「……?」
「ゲオルグがいないと、さびしいわ」
「……」
真っ直ぐにソフィーティアに瞳を見つめる。
「ソフィーティア、俺は何をすべきかわかったぞ」
「……教えて?」
「つまりだ、もう心配事はなくなった。今の俺は、心置きなく自由に戦える」
「戦うつもりなの?」
「ああ」
ゲオルグは体をバネのようにして飛び上がると、槍の切っ先をソフィーティアにむけて構えた。
「ち、ちょっと待ってよ! 何を考えているの!?」
「動くな」
ソフィーティアは思わずたじろぎ、台から落ちた。草の上を腰で後ずさる。
「や、やめて……やめてっ! 助けて! 嫌よゲオルグ!」
「おい、だから動くな」
狙いを定め、槍を振り下ろす。
「きゃーーーーっ!」
すると、ソフィーティアのすぐ横の茂みに突き刺さった。
「……?」
薄っすらと目を開けると、ゲオルグの持つ槍に大きめのヘビがぶら下がっている。
「ヘビ……?」
「さっきからニョロニョロしていたんだ」
「だったらそう言ってよ! 殺されるかと思ったでしょ!」
「す、すまない……」
ソフィーティアはゲオルグは正座させ、延々と説教を垂れた。
「次やったら許さないんだからね!」
「反省する……」
ゲオルグは正座を解いて足の痺れを取る。ソフィーティアは咳払いをひとつした。
「……で、話はそれたけど、城には戻らないの?」
「戦いには必ず参加する。だが、今晩はここにいさせてくれ」
「まだ何か用事なの?」
「死んだ両親に、ここから祈りを捧げたい」
「そう……わかったわ」
ソフィーティアが三つの指輪を手渡す。ゲオルグは指にはめ、膝を着いて両手を組んだ。
馬に跨り、ソフィーティアは何も言わずに走り去ったが、ゲオルグは一晩かけて眠ることなく祈り続けた。




