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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
最終章 英雄の帰還
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思案

 ゲオルグは満天の星空の下、野ざらしにされた断頭台の上で思案をめぐらせていた。

「俺が次にすべき事は……なんだ?」

 ただそれだけを考える。

 視線の先には満月が大きく輝いていた。久々に一人になったゲオルグは静かな夜を享受する。その時間は無限にあるようにすら思えたが、騒々しく接近してくる蹄の音が邪魔をした。ゲオルグが気にせずそのまま寝そべっていると、音は台の真横で止まる。

「ゲオルグ……」

 ソフィーティアに名前を呼ばれたが、ゲオルグは気にも留めなかった。

「ここ、座ってもいい?」

「……好きにしろ」

 ソフィーティアは持ってきた松明の火を手頃な枯れ木に移して明かりを取ると、ゲオルグの横に腰掛けた。

「こんな所で何してたの?」

「考え事だ」

「どんな事?」

「……」

「教えなさいよ、けち」

 小石を拾って顔に放り投げる。

「命拾いしたんだから、いつまでも落ち込んでないで起きなさいよ」

「死に掛けてもいないし、落ち込んでもいない」

「うそつき」

 ゲオルグは頭を木枠にはめ込んで刃の真下に首を置いた。

「試してみるか?」

「……どういうことよ」

「刃を繋ぎ留めている縄を解いてみろ」

 未だに繋がれたままの縄を見上げるゲオルグ。ソフィーティアは慌てて木枠を外した。

「じ、冗談でしょ!?」

「俺は本気だ。何なら両手両足を固定してもらっても構わない」

「刃が落ちて死ぬわよ!」

「だから、それを試してやろうって言ってるんだ……こういう風に」

 ゲオルグは腕を伸ばして縄の結び目を解いた。即座に落下を始める刃。

 ソフィーティアが悲鳴を上げる直前、

 ひゅおう!

 疾風が断頭台に吹きつけると同時に棒状のものが高速で飛んできた。それは断頭台に突き刺さり、刃とゲオルグの首との間に割って入ると刃の落下を食い止めた。

「ほら、大丈夫だっただろう?」

 体を起こして長い棒を引き抜く。それは一陣の槍だった。誰もいない場所に刃が下まで落ち切る。

「一陣の槍は、風になって飛んでくるんだ」

 自慢げに槍を見せると、ソフィーティアは怒鳴り散らした。

「この馬鹿ゲオルグ! びっくりしたでしょ!」

「ど、怒鳴る事はないだろう」

 ゲオルグは槍を大事そうに抱えて座りなおす。

「もしあの時バルガが刃を落としていたら、この槍を使ってひと暴れしてやるつもりだったんだ」

「じ、じゃあ、それまでボケっとしてたのは何だったの? 落ち込んでたんじゃないの?」

「違う。次にすべき事を考えていたんだ。両親が亡くなった今、どうすべきかを……」

「あ……」

 ソフィーティアは視線を落とした。

「ご両親、残念だったわね……」

「言ってしまえば、これは仕方のないことかもしれない。人の上に立つというのはこういう事なんだろう」

「そう、かしら……」

 ソフィーティアはたき火に薪をくべる。

「私には、どうしてゲオルグがそんなに強くいられるのかが分からないわ」

「俺が?」

「ええ。どんな困難にぶつかっても、それを跳ね除けてしまうんだもの」

 ゲオルグは槍で小さな風を起こしてたき火に送った。更に火は強く燃える。

「火と同じだ。風に吹かれれば吹かれるほど、より強く燃え上がる」

「そういうものなの?」

「ああ。どうも俺の国の人間は皆、そういう気質があるらしいぞ、フフ……」

「うらやましいわね……」

 ゲオルグは台に寝そべって星空を眺めた。

「星が綺麗だな……故郷の海で見るよりもずっと綺麗だ」

 ソフィーティアも空を見上げる。

「山の澄んだ空気のおかげ、かしら?」

「さあな……とにかく綺麗だ」


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