潜入
「ロバちゃんは、ここで静かに待っていろよな」
東ベルン城の北に位置する森の中。パリカールの手綱を手頃な木に結びつけると、ニドは城壁に一番近く、そして細長い木に登った。適当な高さまで来ると、体重をかけて思い切り木の幹をしならせる。ぐんぐんと幹が城壁に近付いていき、最も近付いたところで飛び跳ねた。
「そりゃっ!」
板囲いに上手くしがみ付くと、よじ登って中へと入った。
「へっへー、成功成功」
ニドは周囲に目配りしつつ、城内の中庭へと進む。そこはもぬけの殻だった。
「二回目とはいえ、ゲオルグのおかげでだいぶ楽になったな」
城壁の上にいる見張りに気をつけながら、中央の館内へと足音を殺して忍び込む。ここで、懐の中にいるリスに声を掛けた。
「頼むぜピート」
ピートは宙返りをして地面に降り立つと、通路を先行して走る。曲がり角の度に尻尾を立て、兵士がいれば左右に、いなければ前後に振ってニドに合図した。ニドは以前に侵入した記憶を頼りに館内を調べていき、手早く一階部分を調べ終える。
「この階には何もなさそうだな。幽閉されてるってんだから、地下にでもいんのか?」
地下へ向かう唯一の階段を見つけ出し、ピートに様子を伺わせる。しかし、ピートは尻尾を左右に振った。ニドも恐る恐る階段を覗き込むと、武装した見張りが三人いた。
「こりゃ難しそうだな……ピート、どうする?」
ふくらんだ尻尾と小さな前足でジェスチャーするピート。ニドは頷きながら聞いた。
「他を当たれってか。そうだな、もう処刑されちまってるかもしれねぇし、処刑室だな」
ニドはピートを肩に乗せ、再び館内を探索し始めた。




