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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第四章 風来の騎士
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決行

 ゲオルグの話をジョアンナはあぐらの姿勢で聞いた。

「なるほどねぇ……親を助けて悪を討つってか?」

「そんなところだな。ここの人達には作戦の協力を頼んでいたんだ」

「あたいは義理堅いんだ。手助けが欲しい事はないのかい? 言ってみな」

「それがだな、ソフィーティア達に作戦がばれないようにしたいんだが、これがとても難しい。何か良い考えはないか?」

 すると、ジョアンナは照れながら笑う。

「ひょっとしたら、それはもうあたいが解決しちまったかもしれねえ……」

「どういうことだ?」

 全員の視線もジョアンナに集まる。彼女は照れくさそうに顔を背け、頬をかいた。

「さっき、あたいが城主達に紅茶を出したんだけどよ」

「ふむふむ」

「その時、砂糖と睡眠薬を間違えちまってな……」

「なるほど」

「明日の朝まで目を覚まさないと思うぜ。死ぬ一歩手前くらいの量だったからよ……」

 ゲオルグはジョアンナの両肩に手を置き、強く頷いた。

「ありがとう。君の急転直下式のドジが俺を救ってくれたようだ」

「そ、そうかい。役に立ててよかったぜ、ハハハ!」

 ジョアンナも円の中に加えると、ゲオルグは全員に向かって言った。

「準備はすべて揃った。作戦は夜明け前に実行する。それまで休もう」

 オリンが胸の前で手を組みながら言う。

「ゲオルグ様には本当にお世話になりました。私、食事を運んできます!」

 ジョアンナがオリンの肩を抱き寄せる。

「よっしゃ、料理ならあたいらに任せな! 豪華にやってやろうぜ!」

「はい! ゲオルグ様の優勝パーティを開きましょう!」

 狭い部屋の中で、慎ましく優勝パーティが開催された。全員で同じ物を食べ、肩を組んで歌い、踊る。日が沈むまで行われた後、静かに幕を閉じた。ゲオルグとニドが早めに眠りにつくと、それを兵士達が交代で見張りをする。

 そして、夜明けが近付いた。

 ゲオルグが目を覚まして起き上がる。メリッサとオリンが包帯を取り替え、その上から服と鎧を着込む。すべての装備を整え終えて部屋から出ると、廊下には全員が待機していた。

「皆、色々と世話になったな。ここでお別れだ」

 それぞれに簡単な挨拶を交わすと、ゲオルグとニドはカールに連れられて城門へと向かう。見張りの兵士達は黙って道を開けた。

 館の出口にはシェルバとパリカールの二頭がすでに待機していた。ゲオルグがそれぞれの顔を撫でる。

「ニドはどっちに乗るんだ?」

「オイラはロバでいい」

「気性が荒いらしいんだが、乗れるだろうか」

「心配すんな。基本的にオイラはどんな動物とも友達だぜ」

 ニドがパリカールに跨ると、ゆっくり歩き始めた。ゲオルグもシェルバに跨る。南の城門に差し掛かると、カールと少し話をした後、門番が可能な限り静かに開門した。城門をくぐり抜け、軽く振り返る。城門の明かりが左右に揺れた。ニドが手を振る。

「へっへっ、オイラ達に手を振っていらぁ」

「応援してくれているんだ。よし、行こう」

 松明に火を点けると、二人は城を背にして駆け出した。ゲオルグはもと来た道を戻るように馬を走らせる。月明かりすら入らない暗い森を抜け、曲がりくねった山道を進んでいくと、見晴らしの良い丘陵に差し掛かった。遠くには東ベルン城が見える。

 やや警戒しつつ城へ向かっていくと、流れの緩やかな広く浅い川に辿り着いた。西ベルンと東ベルンの領土の境目、ベルン川である。

 そこでニドがゲオルグを止める。

「このベルン川を越えた先からは、もう東ベルンの領土だぜ」

「向こう側のことは、城主の俺よりニドの方が詳しそうだ」

「それも変な話だな。ま、オイラは一度あの城に忍び込んでるけどな」

 ゲオルグはシェルバに川の水を飲ませつつ、自分でも軽く飲んだ。

「この橋で別れよう。ニドは北側の森にでも隠れるといい」

 そう言って指差す方向をニドが確認する。

「なあゲオルグ、一つ聞いていいか?」

「なんだ」

「あの牢屋の時もそうだ。どうしてお前は暗闇でも、方角や人の動きが分かるんだ?」

「風の向きだ」

 ゲオルグは揺れる松明の火を眺めた。

「声の出る向きや木々のざわめきが、風の動きを変えるんだ。それを察知すれば分かる」

「へぇ。じゃあこの暗闇の中でも、お前は風があれば戦えるのか?」

「戦える。俺は風を味方に付ける術を、父上から徹底的に教え込まれたんだ」

「なるほどな。ま、頑張って囮をやってくれよな。頼んだぜ」

 ニドは暗い北の森へとパリカールを走らせて行った。


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