相談
「カールだよ! 鍵は開いてる? 入れてよゲオルグ」
ゲオルグが扉を思い切り開け、カールの胸ぐらをつかむと部屋の中へ引きずり込んだ。
「こほん……カ、カール君、我々は仲間だ。固い友情で結ばれている。そうだろう?」
「そ、そうだね」
「よし、だったらもう帰ろう。そして寝よう。そう、我々の友情のために」
ゲオルグが早々に追い出そうとするが、カールは部屋の中を物色し始める。
「ところでさっきの兵士達はどこ? オリンは?」
「うおっ!? な、何故それを知っているんだ!?」
「僕は物見が仕事だよ? そりゃ知ってるさ。大丈夫、内緒にしてあげるから……」
「おお、カール君! それでこそカール君だ!」
大げさに叫んだところで、隠れていた全員が出て来た。カールを座らせてすべての事情を話すと、合点が行ったのか大きく頷いた。
「……なるほどね。僕にも何か協力させてよ」
「それなら、何か鳴り物のような物は持っていないか?」
「ああ、それならこれが良いよ」
カールは腰に下げている角笛を差し出した。
「これは敵が来た時や羊を誘導する時なんかに使われるんだ。山で吹いたら響くよ」
そう言って実演しようとしたカールを、ゲオルグが取り押さえた。
「バ、バカッ! 吹いたら騒ぎになるだろう!」
「あ、そっか。とにかく響くから使いなよ」
カールも円の中に加わって座る。中央にはこれまで集めた物が置かれた。一陣の槍、鉄の仮面、派手な鎧、羽飾りの付いた兜に煌びやかな盾。そしてカールが角笛を並べた。
「ゲオルグ、これだけあれば装備は十分でしょ? まだ何か必要?」
「これと馬だ……馬が欲しい」
「それなら大丈夫だよ。窓の外を見てごらん」
「本当か!?」
驚きながらも窓の外へ身を乗り出すと、部屋の真下に豪華な馬具を身に付けた馬とロバがいた。
「おお、俺の愛馬だ! それにパリカールも!」
「馬屋の爺さんに言って、優勝パレード用にって頼んでおいたんだ」
「ありがとう! 本当に助かったぞカール!」
ゲオルグが固い握手を交わすと、カールも嬉しそうに笑った。
ニドがピートの頭を指でなでながら尋ねる。
「これでもう準備は完璧だよな?」
「ああ! あとはソフィーティア達にばれなければ完璧だ!」
「そうだな! もしばれたらさすがに今度は処刑されるぜ!」
「……さて、どうしたものか」
ニドの指が止まった。
「ひょっとしてお前、考えてなかったのか? 東ベルンで起こす盛大な騒ぎを、どうやって東ベルンに敏感なソフィーティア達に隠すんだよ」
「……何か作戦を考えよう」
全員が座り直した。うつむき、一様に頭を悩ませるも発言する者はいなかった。ひたすらに沈黙が続く。
痺れを切らせてニドが言った。
「ゲオルグ、もうどうしようもねぇよ」
「くそっ! 誰かが俺の騒ぎを誤魔化してくれれば……!」
頭を抱えて悩んでいると、廊下からガラガラと何かを引きずる音が聞こえて来た。真っ直ぐに部屋へと接近してくる。
ゲオルグが冷や汗を流しながらメリッサに命じた。
「メ、メリッサ! 何とかして来い!」
「どど、どうすれば何とかなるのか、全然分かんないんですけど!」
「あれだ! お前が得意なマダライボイボガエルの物真似で追い払うんだ!」
「ええーーーーっ!? じ、自信ないんですけど!」
扉が開かれ、急場で覚悟を決めたメリッサが飛び跳ねた。
「ゲロゲーロ! ゲロゲーロ!」
「わっ!? な、何だ!?」
扉の向こうにいたのは、掃除用具を引きずって運ぶジョアンナだった。
若干動揺するも、メリッサを押し退けて部屋に入る。
「は、入っちゃダメなんですけど!」
ジョアンナの背中にしがみ付き、両手で目を覆い隠すメリッサ。
「見たらダメなんですけど! 秘密の会議中なんですけど!」
「カエルのくせにゴチャゴチャとうるさいんだよ」
「困るんですけど! ゲロゲーロ!」
「邪魔だ。あたいはゲオルグに用事なんだ」
メリッサを振り払ってほうきを押し付ける。ゲオルグの姿を見つけると抱き締めた。
「ゲオルグっ! バルガに焼きを入れたそうじゃないか! 大した奴だよ!」
「まあ、成り行きでな」
「おまけにオリンのケツまで拭いてやるなんざ、なかなか出来た出来た男だね!」
「それもまあ、成り行きだった……それより離れてくれ……く、苦しい……」
「ああ、悪かった」
ジョアンナは襟元を正し、周りで座っている人々を一見する。
「この集まりはなんだい? オリンまで……」
「実はだな……聞いてくれるか?」




