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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
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来訪者

 パリカールが鼻息を荒くして闘技場へと乗り込むと、バルガが自身の鎧を大事そうに磨いていた。

「フン、どこぞの軟弱者のようにてっきり棄権したのかと思ったぞ」

「俺は一陣の騎士だ。騎士の先駆けとして、決して逃げたりはしない」

「減らず口を……そんなに死にたいのならば、望み通り殺してくれるわーっ!」

 馬を駆るバルガに対し、ゲオルグは静かに目を閉じて槍を水平に構えた。

「……!?」

 その異様な雰囲気を察知し、バルガは馬を止める。

 程なくして、ゲオルグを中心に柔らかな風が吹き始めた。砂埃が円状に巻き起こる。その風の勢いは徐々に増していき、砂に混じって小石が宙に舞い始めた。

「な、なんだ!?」

 風はバルガを巻き込む。やがて観客にまで届く範囲に達すると、ピタリと止んだ。闘技場は静けさを取り戻す。

「み、見掛け倒しのはったりが!」

 ゲオルグは、メルメトの山々からここへと吹き込む風をすべて槍に集めていた。握り締めた槍の周囲だけに、高密度の猛烈な風が渦巻く。

 それを知らないバルガは馬を駆った。

「くたばれ小僧ーっ!」

 ゲオルグは目を見開く。

「吹っ飛べぇぇぇぇっ!」

 槍を横に振り抜くと、集められた空気が一直線に放たれた。

「ぐおおおおおっ!?」

 バルガの巨体が宙に舞い上がる。高々と浮かび上がり、放物線を描いて派手に地面へと叩きつけられた。兜は吹き飛び、鎧は割れ、武器や防具は一つとして残っていなかった。

 腰を抜かしていた審判がどうにか立つと、旗を振り上げる。

「に……西ベルン城騎馬試合、勝者は一陣の騎士ゲオルグ!」

「うおおーーーーっ!」

 雄叫びを上げると、興奮が頂点に達した観客達が一気に闘技場へとなだれ込んだ。ゲオルグをパリカールから引き摺り下ろすと、強引に胴上げを始める。

「わっ!? お、下ろせ! 傷が痛むだろうが!」

 槍を振って観客を蹴散らしていると、荷馬車に乗ったカールが現れた。

「ゲオルグ! 勝ったんだね!」

「ああ! それよりロバートはどうなんだ?」

「僕の解毒薬が効いたから心配ないよ。今はソフィーティア様とロッティーナが診てる」

「そうか! それは良かった!」

 カールは馬から下りる。

「おめでとう。この荷馬車に優勝賞金の一千万ミールが積んであるよ」

「やれやれ、ようやく優勝できたな……」

 感慨深げに頷くゲオルグにカールが握手をした。

「これだけあれば、君の身代金も払えるんじゃないかな」

「いや、それはオリンというメイドに全部やるつもりだ」

「えっ!?」

 驚いたカールだったが、彼女の境遇を知っていたのですぐに納得する。

「そうか、彼女が割った壺を弁償できるね……でも、本当にいいのかい?」

「その一千万で彼女が泣き止むのなら安いものだ」

「それじゃあ、僕が責任を持って彼女に渡しておくよ」

「ああ、頼む」

 パリカールも預け、立ち去ろうとするゲオルグにカールが叫んだ。

「ねえ、特上ワイン一年分も積んであるんだけどどうする?」

「自由に分けて飲んでくれ」

「わかっ……うわあーっ!?」

 観客の兵士達がカールをどかし、我先にと入り乱れてワインを飲み始める。

 ゲオルグは騒々しい闘技場を後にした。

 槍をくるくると回しながら上機嫌で歩いていると、誰かが館から走ってくる。

 それはロッティーナだった。

「ゲオルグ! ちょっと来てくれ」

「何だ? 俺とデートでもしたいのか? 断る!」

「馬鹿も休み休み言え! お前を知っているという東ベルン側の人間を捕らえたのだ」

「な、何だと!?」

 ゲオルグが驚きの余りに槍を落としかけたが、ロッティーナがそれを受け止めて返す。

「とにかく来てくれ。お前がいないと話をしないと言って聞かない」

「わかった! このまますぐに向かう」

 二人は熱気冷めやらぬ闘技場を背に、静かな館の中へと向かっていった。


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