表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
45/70

ゲオルグの槍

 バルガは槍を真上に振り上げると、叩きつけるように打ち込んで来た。ゲオルグは咄嗟に盾で受ける。

「ぐっ!」

 盾は皿のように軽く割られ、体勢も崩して帽子を落としてしまった。

 左手に走る鈍痛をこらえつつ、槍でバルガを腹からなぎ払う。

「喰らえっ!」

 しかし、槍は鎧に当たると真っ二つに折られてしまった。審判がバルガに旗を揚げる。

「貴様をこのまま殺したのではつまらん。もう少し遊んでやろう」

 剣だけとなったゲオルグをバルガが槍で狙い始めた。必死に受け流すが、槍が触れると服はたちまち紙のように頼りなく破れ、裂けた皮膚から血が滲み出す。

「うぐっ! く、くそっ!」

 バルガは腹や腕を狙い、じっくりと時間をかけて浅い傷を付けていく。一方的な攻撃によって、見る見るうちに槍はゲオルグの血で赤く染まった。

「さて……そろそろ終いだっ! 死ねーっ!」

 血を払い、槍をゲオルグに向かって突き出した。ゲオルグは回避できない事を悟って目を閉じる。

「ま、まずいっ!」

 しかし、体に痛みはなかった。ゆっくりと目を開くと、審判が旗で槍を受け止めている。

「せ、制限時間一杯! 一時休憩とする!」

 審判の砂時計の砂が落ちきっていた。バルガは舌打ちを一つすると、自分の控え室へと戻っていく。ゲオルグが剣を落として倒れこむと、パリカールは背中の主人を控え室まで運び込んだ。

 そこでは多くの兵士がゲオルグを出迎える。パリカールから下ろして寝かせると、腹や腕の傷に水をかけ、包帯を巻いて処置を行う。

「ゲオルグ、もうやめろよ……」

「本当に殺されてしまうぞ!」

「お前の騎士道精神はよくわかった……だからもう棄権するんだ!」

 ゲオルグは兵士達に椅子を投げつけた。朦朧とする意識の中、天井を見上げて呟く。

「俺の槍さえ……一陣の槍さえあれば……」

 兵士の一人が尋ねた。

「な、なんだいそりゃ?」

「代々伝わる家宝の槍だ……ここで捕まってから行方が分からない……」

 兵士達がお互いの顔を見合わせる中、老兵パゴットがゲオルグの顔を覗き込んだ。

「もしやその槍は、この世界の創造神話に登場する槍か?」

「そうだ。良く知っているな、老公……」

「なんと! あれはそんなにすごい代物じゃったのか!」

 パゴットは控え室の奥に行くと、そこから鎖でぐるぐる巻きにされた細長い包みを持ってくる。それらをすべて取り払うと、緑の石が柄にはめ込まれた槍が姿を現した。

 ゲオルグが飛び起きてその槍を眺める。

「お、俺の槍だっ!」

「これはバルガから預けられていたんじゃが、お前に返そう」

「いいのか?」

「気にするな! 東ベルンは気に食わんが、卑怯なバルガはもっと気に食わんわい!」

 そっと槍に触れ、そして強く握るゲオルグ。体中に力がみなぎってくるのが感じられた。

「ありがとう老公。おかげで力が湧いてきた」

 パゴットは浮かない顔で話す。

「実はな、バルガの配下をやっとるわしとハンフリーは、お前を試合中に殺すように命令されていたんじゃ……すまん……」

「そうだったのか……」

「お前があの時ロッティーナの馬に乗っていなければ、バルガの配下ではないあやつもまた、ロバートのように後ろから毒矢で撃たれていたじゃろうて……」

「バルガめ……」

 ゲオルグは黙って立ち上がった。一陣の槍だけを持って闘技場へと足を向ける。

 パリカールを預かっていたのはハンフリーだった。

「ゲオルグ、すまなかった」

「いや、いいんだ。パリカールに乗せてくれ」

 ハンフリーがゲオルグをパリオカールに乗せ、一陣の槍を手渡す。

「か、勝てそうなのか?」

「俺の勝利は確定した」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ