騎士団長バルガ
「それ以上無茶をすれば、私の配下としての務めを果たせなくなるわ。棄権しなさい」
「…………わかりました」
ロバートが小さく返事をすると、カールとロッティーナが肩を貸して体を支えた。
「この矢、ロバートを負けさせるために撃ったんだと思う」
「そうだろう。バルガは自分に都合の良い試合運びをするためだけに、ロバートを……」
ゲオルグは拳で壁を殴りつけた。
「くそっ! なんて奴だ!」
先導してロバートを外へ連れ出すソフィーティアに、ゲオルグが叫ぶ。
「ソフィーティア! 俺をバルガと戦わせてくれ! もう引き下がれないんだ!」
「いいわ。でも、決して無茶はダメよ? 約束してね?」
ゲオルグが頷くと、ソフィーティア達は部屋を後にした。それを見届けると、血の滲んだ拳を握り締めて闘技場へと入場した。
観客は沸いていたが、その姿も声援も頭には入って来なかった。大きな馬に跨り、派手な金色の鎧を着た男だけを目に映す。その男、バルガはゲオルグを見ると鼻で笑った。
「小僧、戦わずして優勝するとは運がいいな?」
「よくもロバートを……いや、まさか俺と戦うためにロバートを……?」
「棄権するような軟弱者など用無しだっ! 金塊の騎士バルガが貴様の相手だっ!」
バルガが槍を構えて馬を走らせて来た。ゲオルグも手綱を握り締める。
「卑怯で汚い貴様が一番軟弱だ! 一陣の騎士ゲオルグが倒してやる! 覚悟しろ!」
怒りに任せてゲオルグが槍を叩きつける。
「でやぁーっ!」
バルガの槍とぶつかると、乾いた金属音と共にあっさりと弾き返された。
「な、何だっ!?」
不敵に笑うバルガを睨みつつ、ゲオルグは手を振って痺れを取る。
「試合用の槍がまるで通用しない……それに今の硬い感触は……?」
「ヌハハ、勇ましいな小僧! もっと撃って来るがいい、すべてこの槍で受けてやろう!」
「奴の槍だけ試合用じゃないな!? くそっ! どこまで卑怯な奴なんだ!」
渾身の力を込めて槍を振るうが、バルガはそのすべて軽々と受け止めた。
「物足りぬわ!」
「くっ、見ていろ!」
ゲオルグはパリカールを走らせ、真正面から突っ込む。バルガが攻撃に備えて槍を構えたところで、
「パリカール、すまん!」
思い切り手綱を引いた。驚いたパリカールは大きく仰け反り、後ろ足だけで立ち上がった。ゲオルグは槍を構えなおし、バルガの頭に狙いをつける。
「上からの攻撃ならどうだっ!」
不意を突かれたバルガが左手の盾でそれを防ぐと、そのままゲオルグを殴りつけた。それぞれが馬体を離して体勢を整えなおす。
「どうした、すべて槍で受けるのではなかったのか!」
「ぬうう、小僧め、調子に乗りおって……今度はこちらの番だ!」




