毒の矢
ロッティーナもソフィーティアに向けて口を開く。
「ゲオルグの言う通りです……」
「ロッティーナまでそんな事を言うの? ダメよ」
パリカールから降り、適当な兵士に預けた。
「そんな小さな女の手でも騎士として立派に剣を扱えていたぞ。ソフィーティアも見習ったらどうだ」
「うるさいわね! とにかくロッティーナに謝ってよ!」
しかし、ロッティーナは首を横に振った。
「私は騎士である事よりも、女である事を優先させてしまったのです……お許しください」
「何も悪い事なんてないわ? 気にする事ないのよ?」
ロッティーナの態度にゲオルグが腹を立てる。
「ふん、騎士なんか辞めて花屋でもやったらどうだ!」
「くや……悔しいっ! うえええーん!」
せき止められていた堤防が決壊したかのように、ロッティーナの目から涙が溢れ出した。
ソフィーティアが抱き締める。
「あーっ! 泣かせた! 泣かせた! 騎士以前に人間として最低だわ!」
「うおっ!? わ、悪かった!」
「今の行為は騎士の位を剥奪しても良いくらいかもしれないわね……」
しどろもどろになっているゲオルグの背後から、一人の男が現れた。
「その処罰、このロバートとの一戦を終えてから考えてもらえませんかな?」
「おお、ロバート! お前も勝ち残っていたのか!」
「私と少年が戦い、勝ったほうがバルガに挑む。いわゆる決勝戦ですな」
「盛り上がってきたな! とりあえず、こっちに来て休んだらどうだ」
ゲオルグがロバートの手を引いたが、それは拒まれた。
「いや、すぐにでも試合を……」
「遠慮するな! ほら!」
強く引く。すると、ロバートの巨体は床へとそのまま倒れてしまった。
「ど、どうした!?」
背中を見ると、一本の矢が撃ち込まれていた。
それを見たカールが叫ぶ。
「あっ!? その矢はバルガ軍の毒矢だよ!」
「なんだと!?」
「熊すら麻痺する毒薬が塗ってあって、決して人に使ってはいけないはず……」
ゲオルグが引き抜こうとすると、ロバートがその手をつかんで止めた。
「抜いてくれるな少年……それは試合中に撃たれたのだ……」
「どうしてだ! こんな卑怯な仕打ちに耐える必要なんてなかっただろう!」
「それより試合を……うう……」
立ち上がろうとするロバートを、ゲオルグが抱き起こす。
「む、無茶だ! どうして戦おうとするんだ!」
「卑怯な行いにも決して屈しない! それが騎士道精神ではないのか、少年よ!」
「そ……そ……その通りだぁーーーっ!」
ゲオルグは感動でむせび泣いた。
しかし、ロバートは膝を着いて再び倒れる。その足は震え、やがて痙攣まで始まった。
ソフィーティアがゲオルグを退け、ロバートに刺さった矢を引き抜く。




