決着
金具を取ると鎧の後ろ半分だけが外れ、ロッティーナの背中がぱっくりと現れた。
「や、やめてくれーっ!」
ロッティーナは胸当てだけになった鎧を必死に抑えながらも手綱を取る。ゲオルグは鎧を適当に投げ捨てた。
「ややこしい鎧だな。内側に服が縫い付けられて……これ外すとお前は裸になるのか」
「そ、そうだ! だから頼む! やめてくれっ!」
「じゃあ降参を宣言しろ」
「何っ!? ふ、ふざけるな、誰がするかーっ!」
「それなら、もうこれ以上意地を張るな。俺だって外したくはない」
ゲオルグはロッティーナの首に掛かった紐をつかんだ。鎧を止める最後の支えである。
「おい、これを引っ張ってもいいのか? 降参しないのか? 本当に引くぞ?」
ロッティーナは少し黙った後、首だけで振り向いて答える。
「引けーっ! 貴様に降参を宣言するくらいなら、裸にされたほうがましだーっ!」
ゲオルグは目を閉じ、深く深く唸った。
「……よくぞ言った。お前は本物の騎士だ。女を捨てたその気概、その心意気は賞賛に値するぞ。お前と戦えた事を、俺は強く誇りに思う。」
紐に手を掛け、力を入れる。
「さらば、バラの騎士ロッティーナ!」
ゲオルグが叫ぶと観客は黙り、闘技場を静寂が包み込んだ。
その時、ロッティーナの手がゲオルグの手に掛かる。ゲオルグは手を止めた。
「……ロッティーナ、どうした?」
ロッティーナは小声で呟いた。
「や、止めてくれないだろうか……?」
「今更何を言うんだ!」
「やはり……は、裸は恥ずかしい……」
ゲオルグは歯ぎしりをする。
「お前の名誉と誇りのためにこの紐を引いてやると言ったんだぞ! 俺にまで恥をかかせるつもりかっ!」
「それでもだ! す、すまないが、止めて欲しい……」
紐から手を離し、客席を指差した。二人を大勢の客が食い入るように見ている。
「見ろっ! 皆がお前の最後を見届けたくて、あんなに身を乗り出しているんだぞ!」
「ち、違う! あいつらはただ、わ、私の裸が見たいだけにすぎない!」
「仲間を信じろ!」
「できるかッ!」
ロッティーナは客席に向かって怒鳴り散らした。
「貴様らは西ベルンの恥さらしだっ! 姉上に言いつけて全員処罰してやるぞ!」
いつまでも待たされるゲオルグは腹が立って来た。
「ゴチャゴチャ言うな! さっさと負けてしまえ!」
ゲオルグが紐に手を掛けると、ロッティーナが叫んだ。
「うわーっ! わ、私の負けだーっ! ロッティーナは降参だぁーっ!」
審判が残念そうに旗を揚げると、ロッティーナは馬から下りて走り去っっていく。ゲオルグも馬から下り、横に寝てくつろいでいたパリカールに乗り換えて控え室に戻った。
そこには再びゲオルグを睨みつけるソフィーティアがいた。腕の中には疲れ切ったロッティーナを抱いている。
「女の子の服を脱がすのが騎士のする事なの?」
ゲオルグが嫌そうに顔を歪めた。
「騎士としての勝負に男も女もないんだ」




