馬上の戦い
慌てふためくロッティーナの腕を、ゲオルグが上からつかむ。
「仕方ない、手伝ってやろう」
ゲオルグが手綱を引くと、馬はピタリと走るのを止めた。
どうにもできない状況に、ロッティーナは審判に向かって叫ぶ。
「審判っ! ゲオルグは落馬ではないのかーっ!?」
すると、審判は笑いながら試合続行の合図を旗で振って示した。気が付けば観客も笑っている。ロッティーナは顔を真っ赤に染めて叫んだ。
「お、おのれーっ!」
「二人乗りもなかなか楽しいものだな。お前とは仲良くなれそうだ」
「ふざけるな! ええい、離れろ! くっついてくるな!」
ゲオルグはわざとロッティーナとの距離を詰める。
「落馬したら大変だ。いやあ、危ない危ない」
「さっさと落ちて負けろ! この試合は私が勝つのだ!」
「そういえば、まだ試合中だったな。では反撃に移ろうか」
ゲオルグは手綱から手を外し、ロッティーナの小手を外し始めた。するする紐を引くと、バラの飾りが付いた小手が外された。
「なかなか手の込んだ装飾じゃないか。良い小手だ」
「か、勝手に外すな馬鹿者!」
「試合なんだ、悪く思うな……それっ!」
ゲオルグは客席に向かって放り投げる。審判が旗を揚げた。
「次は……そうだな、兜だな」
ロッティーナの兜を持ち上げると、リボンで縛られた長い黒髪が現れる。
「武器の手入れよりも、髪の手入れに手間がかかっていそうだな」
「兜を返せっ!」
「よし、俺の帽子と交換してやろう」
ゲオルグが兜を被り、ロッティーナに狐の帽子を被せて尻尾を高速で何度も引いた。その度に前後へピコピコと動く耳を見て、観客が盛大に笑う。ロッティーナがさらに激怒した。
「や、やめろーっ!」
「じゃあ返してくれ」
兜を客席に投げ込むと、帽子を被りなおした。
「これでお前は武器に盾、小手と兜がなくなった。後はその鎧を取れば、俺の勝ちか?」
ゲオルグは鎧を外しに掛かると、ロッティーナが大きく動揺し出す。
「ま、待て! 鎧だけはやめてくれ!」
「そう言われても、もう鎧しかないぞ」
「ダメだ、頼む!」




