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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
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強敵登場?

 兵士達が指差した先の通路へ向かうと、ゲオルグが闘技場を眺めて待機していた。

「ゲオルグ……どうしてソフィーティア様を怒らせたんだい?」

「俺の命を狙う奴がいるから、棄権しろと言って来たんだ」

「で、断って怒らせたんだね? まあ僕だって、ゲオルグには棄権してもらいたいけどね」

 カールはいつの間にか出ていた鼻血に気が付いて拭き取る。ゲオルグは真っ直ぐに闘技場を見つめていた。

「聞こえるか、カール。この観客の声が」

 行われていた試合に勝敗が付き、観客達は次々にゲオルグの名前を呼び始めた。

「あの観客は皆、俺が傷つき倒れて負けたら見向きもしなくなるんだろう。そう考えると虚しいな……」

「じゃあ、傷ついたら悲しむ人のために闘うのをやめる……訳がないよね、君は」

 ゲオルグが満面の笑みで振り返る。

「当然だっ! あのムカつくタコハゲ頭のバルガを倒せる唯一のチャンスなんだぞ? 誰が泣こうとわめこうと、絶対に優勝してやる! フフフ……」

 ニヤニヤと笑い出したゲオルグに、カールは大きなため息をついた。

「本当に子供っぽいね……そうやって無茶するからソフィーティア様が怒るんだよ」

「バルガのはらわたを引き裂いて、バラ園の肥料にしてやるぞ! フハハハハーっ!」

「なんだか魔王みたいな事まで言うし……」

 軽い頭痛を覚えながら、カールは通路の門を開いてゲオルグを闘技場に入場させた。

 ゲオルグが中央まで進んで武器の用意をしていると、正面の門が開いて対戦相手がゆっくりと登場した。その鎧には細やかで美しいバラの模様が掘り込まれ、馬具や羽織るマントには本物のバラが飾られている。兜には鳥の羽が飾り付けてあり、その間を揺れる長く垂れた黒髪。つんと立った鼻に先細った顔。そして鋭く睨みつけてくるその少女の視線に、ゲオルグはどこか見覚えがあった。

 審判がその少女をゲオルグの正面に誘導する。ゲオルグは挨拶がてらに声を掛けた。

「えーっと、勝った方が決勝戦に進出だな。よろしくお嬢さん」

 すると、少女は体格に似合わない大きな声で叫んだ。

「誰がお嬢さんだ、この無礼者っ!」

「怒る事ないだろう……狐の帽子がチャームポイント、おしゃれ騎士ゲオルグが相手だ」

「貴様が……貴様がゲオルグ・オートマイヤーか……」

 少女は槍を持つ手に力を込め、強く握り締める。

「お前がその帽子の化けギツネのように、姉上を騙してたぶらかす不届き者か!」

 ゲオルグは少女の正体に察しが付いた。

「そうか、お前はテレーズの妹だな? 誰かに似ていると思ったんだ」

「私の姉上に手を出すな! ふてぶてしい事極まりないぞ!」

「手を出したつもりはないんだが……」

 ゲオルグの弁明が言い訳に聞こえたのか、少女はますます腹を立てた。

「黙れ! 貴様の事を嬉しそうに話す姉上を見るのが、どれだけ腹立たしい事かっ!」

「ほう、怒った顔までテレーズにそっくりだが、お前の方がかわいいな」

「ええっ!? なっ!? あ……」

 一瞬動揺した少女は、手から槍を落とした。ゲオルグがそれを素早く指差す。

「おい審判! 相手は槍を落としたぞ!」

 審判は少し考えた後に旗を揚げた。

「ゲ、ゲオルグ一点獲得!」

「なんだかよくわからんが点をもらえた」

 まるで納得のいかない様子の少女は、慌てて鐙から足を外して槍を拾おうとする。

「ちょ、ちょっと待て審判! 今のはナシだ! 拾わせてくれ!」

 ゲオルグがその様子を槍で指す。

「馬から降りていいのか? その瞬間、落馬になって敗北してしまうぞ?」

「わっ!? そ、そうか! 危ない!」


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