騎士道精神
パリカールの頭を撫で回しながら控え室に戻ると、兵士達が整列して並んでいた。不思議に思ってパリカールから降りると、唐突に真横から平手打ちをされる。
「うあっ!?」
涙をこらえながら振り向くと、そこにはいきり立つソフィーティアが立っていた。
「何で勝手に試合に出てるのよ!」
「べ、別に出たっていいだろう……」
「ダメよーーっ! 馬鹿なんじゃないの!?」
ソフィーティアがゲオルグの頭をぽかぽかと殴り付けながら言う。
「ゲオルグを憎んでいたり、殺す気でいる相手がうじゃうじゃいるのよ!?」
「か、勝てば問題ないだろう……」
「鎧も着てないし! 訳分かんないおもちゃの帽子しか被ってないし!」
「これしかなかったんだ。それに、試合のルール上は問題ない」
「もう! ああ言えばこう言う!」
ソフィーティアはゲオルグから剣を奪い取った。
「私がどれだけ心配しているか、全然わかっていないようね! もう参加は禁止!」
「あっ、剣を返せ! 騎士としての誇りを傷付けたバルガを倒すまで、俺は戦うんだ!」
「死ぬかもしれないっていうのに、何が誇りよ!」
ソフィーティアは剣を床に叩きつけたが、ゲオルグは続けた。
「騎士が誇りを失ったら、それは騎士として死んだも同然だ! 命を懸けてでも誇りは取り戻さなければならないんだ! それが俺の騎士道精神なんだ!」
剣を踏みつけるソフィーティア。
「そんなの理解できないわ! 騎士なんて大嫌いよ!」
「その大嫌いな騎士に守られているのがこの国、この城、そしてお前自身だろうが!」
周りで見ていた兵士達が頷いたが、ソフィーティアはその全員を鋭く睨みつける。
「だから嫌いなのよ! まるで、力のない私が悪いみたいじゃない!」
「今はそういう世の中なんだ! だがそれも――」
「やめてよ! それ以上聞きたくないわ!」
「子供じみた事を言うなっ! もういい、俺はもう行く!」
ゲオルグはソフィーティアの足を払い退けて剣を手にし、新しい槍と盾を携えると闘技場へ続く通朗へ入っていった。尻餅を付いたソフィーティアが叫ぶ。
「ゲオルグの馬鹿ぁーーーっ!」
ソフィーティアが叫んで部屋から飛び出そうとすると、扉が外から開かれた。開けたのは大きなトロフィーを持ったカールだった。
「ねえ皆、ほら見て見て! 僕のチームがね、弓の競技で優勝したんだよ! このトロフィーだってすごいでしょ! 金ピカだよ! うわぁー、かっこいい!」
ひとしきり自慢した後、カールは目の前で自分を睨むソフィーティアの存在に気が付く。
「あっ、ソフィーティア様! カールが優勝しましたよ! 立派な騎士として――」
トロフィーを手渡そうとすると、ソフィーティアは問答無用でカールを突き飛ばして出て行った。壁に顔面から叩きつけられたカールの手から、トロフィーが落ちて壊れる。
「ああーーっ!? 僕のトロフィーが! って、あれ? どうしてソフィーティア様は僕を突き飛ばしたんだ? うーん……?」
周りの視線を察し、カールは理解した。
「あ、ゲオルグが怒らせたんでしょ? ダメだなぁ……彼はどこに?」




