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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
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長槍の騎士

 審判が名乗りの宣言をすると、男は長い槍を両手で持ち、空に向かって掲げる。

「私は長槍の騎士ハンフリーだ! 初めに言っておこう! 私はソフィーティア様を愛している!」

「……変わった名乗りだな、というか物好きな奴だな」

 ゲオルグの小言は無視してハンフリーは語り始めた。

「だが私の愛は伝わらなかった! 昼夜問わず休みなしに片時も離れなかったというのに、配下を首になったのだ!」

「真面目だが……なぜだ?」

「水浴びや入浴の時も監視を行っていたら、バルガの配下に転属させられたのだ!」

「それはのぞき見だろう。お前が悪い」

「何を言う!」

 ハンフリーは長い槍を頭上で一回転させた。風を切る鈍い音が鳴る。

「丸裸の時が一番無防備で危険なのだぞ! ま、役得ではあったがな」

 にやつくハンフリーに呆れるゲオルグ。

「まるで説得力がないぞ……」

「黙れ! 私を再び配下として取り立ててもらうため、悪いが貴様には死んでもらうぞ。そしてまた、私は毎日毎日ソフィーティア様を監視するのだーっ!」

「し、下心丸出しじゃないか! この変態め!」

 ゲオルグは槍を低く構えて走り出した。

「変態に長々と付き合うのは御免だ! えーと、あれだ、一撃の騎士ゲオルグ、いざ参る!」

 ハンフリーもゲオルグのように槍を低く構えたが、彼の場合は地面に引きずりながら突撃して来た。砂埃を巻き起こしながら突き進んでくる。

「ぬおおおおっ!」

 その長い槍を地面から浮かせ、ゲオルグ目掛けてなぎ払った。槍は大きくしなりながら顔面に向かって伸びる。

「長槍の一撃、味わうがいいっ!」

「来たなっ!」

 ゲオルグは槍を投げ捨てて盾を構えると、それを両手で支えた。

「うぐっ!」

 槍の攻撃を受けた瞬間、両手に衝撃が走った。木製の盾がバラバラに砕けて地面に落ちていく。

 ハンフリーがゲオルグの横を通過しながら叫ぶ。

「どうだ、この威力!」

 ゲオルグは痺れたままの右手で剣を引き抜き、左手で手綱を思い切り引いた。

「行くぞパリカール!」

 パリカールは素早く首を振り向かせて小回りし、手綱の指示に従って走る向きを見事に反転させた。一方のハンフリーの馬は長大な槍のせいでフラフラと左右に体を揺らせている。ゲオルグはそのまま直進し、距離を詰める。

 そして完全に背後を取ったゲオルグが剣を構えた。

「宣言どおり、一撃だっ!」

「うぐあーっ!?」

 ハンフリーの背中に思い切り剣を叩き込むと、長い槍を手から落として馬上で気絶した。審判がそれを確認すると、ゲオルグに向かって旗を揚げる。

「ハンフリー、戦闘不能! よってこの勝負、ゲオルグの勝利!」

「ふう……試合よりも名乗りの方が長いとはな」


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