長槍の騎士
審判が名乗りの宣言をすると、男は長い槍を両手で持ち、空に向かって掲げる。
「私は長槍の騎士ハンフリーだ! 初めに言っておこう! 私はソフィーティア様を愛している!」
「……変わった名乗りだな、というか物好きな奴だな」
ゲオルグの小言は無視してハンフリーは語り始めた。
「だが私の愛は伝わらなかった! 昼夜問わず休みなしに片時も離れなかったというのに、配下を首になったのだ!」
「真面目だが……なぜだ?」
「水浴びや入浴の時も監視を行っていたら、バルガの配下に転属させられたのだ!」
「それはのぞき見だろう。お前が悪い」
「何を言う!」
ハンフリーは長い槍を頭上で一回転させた。風を切る鈍い音が鳴る。
「丸裸の時が一番無防備で危険なのだぞ! ま、役得ではあったがな」
にやつくハンフリーに呆れるゲオルグ。
「まるで説得力がないぞ……」
「黙れ! 私を再び配下として取り立ててもらうため、悪いが貴様には死んでもらうぞ。そしてまた、私は毎日毎日ソフィーティア様を監視するのだーっ!」
「し、下心丸出しじゃないか! この変態め!」
ゲオルグは槍を低く構えて走り出した。
「変態に長々と付き合うのは御免だ! えーと、あれだ、一撃の騎士ゲオルグ、いざ参る!」
ハンフリーもゲオルグのように槍を低く構えたが、彼の場合は地面に引きずりながら突撃して来た。砂埃を巻き起こしながら突き進んでくる。
「ぬおおおおっ!」
その長い槍を地面から浮かせ、ゲオルグ目掛けてなぎ払った。槍は大きくしなりながら顔面に向かって伸びる。
「長槍の一撃、味わうがいいっ!」
「来たなっ!」
ゲオルグは槍を投げ捨てて盾を構えると、それを両手で支えた。
「うぐっ!」
槍の攻撃を受けた瞬間、両手に衝撃が走った。木製の盾がバラバラに砕けて地面に落ちていく。
ハンフリーがゲオルグの横を通過しながら叫ぶ。
「どうだ、この威力!」
ゲオルグは痺れたままの右手で剣を引き抜き、左手で手綱を思い切り引いた。
「行くぞパリカール!」
パリカールは素早く首を振り向かせて小回りし、手綱の指示に従って走る向きを見事に反転させた。一方のハンフリーの馬は長大な槍のせいでフラフラと左右に体を揺らせている。ゲオルグはそのまま直進し、距離を詰める。
そして完全に背後を取ったゲオルグが剣を構えた。
「宣言どおり、一撃だっ!」
「うぐあーっ!?」
ハンフリーの背中に思い切り剣を叩き込むと、長い槍を手から落として馬上で気絶した。審判がそれを確認すると、ゲオルグに向かって旗を揚げる。
「ハンフリー、戦闘不能! よってこの勝負、ゲオルグの勝利!」
「ふう……試合よりも名乗りの方が長いとはな」




