表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
36/70

勝利

 真っ暗な通路の中を進んでいくと、光の差し込む先から観衆の声が聞こえて来た。段々と声は大きくなり、出口に辿り着く頃には割れんばかりの大きさになっていた。眩しさに目を細めながら闘技場に入ると、その声が笑い声に変わる。観衆は指を差してゲオルグをあざ笑った。

「東ベルンの兵は、鎧もなしにロバに乗って戦うようだな!」

 誰かの野次がさらに笑い声を膨らませる。

 ゲオルグはただ冷静に、向かう先にいる対戦相手の事だけをその目に捉えていた。

 旗を持ち、巨大な砂時計を背負った審判が二人を向かい合うように整列させる。

「これより試合を始める! 双方、名乗りを!」

 相手は白いひげを生やした老兵だった。顔中のしわを震わせながら、低い声で名乗った。

「東ベルンを憎み憎んで六十年! 先祖も合わせりゃ三百二十年! この老樹の騎士パゴットが相手じゃ!」

 老兵パゴットは槍でゲオルグを指した。

「さあ、存分に名乗れ! 若き東ベルンの城主とやら!」

 ゲオルグはパゴットに負けじと叫ぶ。

「ピンと立つ耳、ふくらむ尻尾! 銀ギツネの騎士ゲオルグだ!」

「ま、真面目にやらんかーっ!」

 ゲオルグはあかんべをした。

「真面目にやらない騎士は、相手に出来ないと?」

「うぐぐ……ふざけおって! 勝負じゃーっ!」

 パゴットは馬の腹を蹴って真っ直ぐに突撃を掛ける。ゲオルグもそれに応じてパリカールを走らせると、二人の槍は闘技場の中央で交わった。パゴットの槍はゲオルグの頭をかすめ、銀ギツネの帽子を宙に浮かせる。舞い上がり、ゆっくり闘技場の砂地の上に落ちた。

 審判が旗を振り上げる。

「パゴット、一点獲得!」

「どうじゃ若造め!」

 槍を得意げに振り回し、そして構えなおす。

「我が槍の背負う三百二十年の重みを思い知ったか! 軽薄な若造の人生と違って、背負っとるものが違うんじゃい! ワハハハ!」

「ハーッハッハ!」

 急に笑い出したゲオルグにパゴットは苛立った。

「何がおかしいんじゃ!」

「いや、あまりに遅い攻撃だったんでな。その老体にその槍ではさぞ重いだろう!」

「なんじゃと!?」

 ゲオルグは高々と槍を頭上に掲げる。

「俺の槍はたった十六年の重みしか背負っていない! つまり、老公より二十倍も軽くて速い攻撃ができるのだ! だから勝ーつ!」

 槍を構えなおし、パリカールの腹を蹴る。パゴットも攻撃に備えた。

「屁理屈を言いおってからにっ! 減らず口もそこまでじゃ!」

 再び両者は闘技場の中央へ向かって走り出す。先に仕掛けたのはパゴットだった。盾を構えながら槍を突き出し、ゲオルグの顔を狙う。

「ちぇいっ!」

 対するゲオルグは身を屈めてその一撃を回避すると、

「老樹の騎士、敗れたり!」

 素早く槍の柄でパゴットの腹を払い抜けた。

「ぐわーっ!」

 手綱から手が放れ、パゴットはそのまま落馬した。

 審判がそれを確認すると、旗でゲオルグを指す。

「パゴット、落馬! よってこの勝負、ゲオルグの勝利!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ