武器と鎧と馬と
カールが紙を差し出す。そこに書かれている試合の行程をゲオルグが覗き込んだ。
「お、おい! 俺の名前が書かれているぞ!? こんな話は聞いていない!」
「バルガが参加を急遽ねじ込んだらしいよ。だから早く準備しないとダメだよ?」
「断る! 武器なし馬なし鎧なしの俺がどうやったら戦えるんだ!」
「普通に考えてそうだよね。優勝賞金なんて、どうせ手が届かないだろうし」
カールが紙をしまおうとしたとき、ゲオルグが瞬時に奪い取った。
「……優勝賞金だと? 一体いくら出るんだ?」
「その場で一千万ミールがポンと出るよ」
「一千万ミール!? 出る! 俺は出るぞーっ!」
紙を握りしめて宣言するゲオルグだったが、それを見る兵士達の視線は冷め切っていた。
カールがぼやく。
「悪いけど、優勝は無理だよ……」
「何故だ。俺が弱いと思っているのか? こう見えて意外と強いんだぞ?」
周りの兵士達もぼやく。
「そうじゃねぇよぉ。トーナメントの優勝者はよぉ」
「優勝者は絶対バルガと戦うんだぜ! でも刃向かったらひどい目に遭うんだぜ!」
「勝った人間はいない……後にも先にもいない……いつも賞金はバルガの物……」
落ち込む兵士達。ゲオルグは彼らの頭をグシャグシャとかき回した。
「考えてみろ。バルガが俺を参加させたんだぞ? 刃向かってもいいってことだろう」
兵士達はお互いに顔を見合わせ、そして頷いた。
「確かにそうかもな。お前は東ベルンの人間だし、気にする事ないもんな」
「そうだとも。バルガを正当な理由で倒せて賞金まで貰える……まさに一石二鳥だ」
そこまで言うと、拍手が起こった。
「実は俺達は皆、バルガが嫌いなんだ! 俺達に代わってやっつけてくれよ!」
「任せろ。こてんぱんに叩きのめしてやる」
盛り上がる中、カールがぽつりと言う。
「ところでゲオルグって、どれくらい強いの?」
「試してみるか?」
「や、やめてよ……」
兵士達はゲオルグから少し距離を取って離れた。
ゲオルグは腕組をして考える。
「一番の問題は武器だな……カール、どうすればいい?」
「それなら大丈夫。試合専用の武器が全員に支給されるんだ」
「そうか! よし、俺は残りの馬と鎧を探してくる!」
わきめもふらずに部屋を飛び出し、館の外へと走り抜ける。普段からあちこちを見ていた記憶を頼りに馬屋を探していくと、館の裏手に辿り着いた。
「あったあった、ここだ」
しかし、すでに中には馬はいなかった。敷かれたわらと馬糞、抜け毛が残っているだけである。




