騎馬試合
「……」
黙りこむオリンの様子を見て、ジョアンナはゲオルグの胸ぐらから手を放した。
「悪ぃ、どうやらあたいがドジっちまったようだな」
「いいんだ。それより、バルガが何をしたのかを教えて欲しい」
「オリン、話していいか?」
小さく頷いたので、ジョアンナはゲオルグを座らせた。
ついでに出されたミルクをゲオルグが飲む。
「バルガはここの騎士団長だろう?」
「そうだ。テメェは西ベルンの人間じゃねぇから教えてやるけどよ……」
ジョアンナがゲオルグの耳元で呟く。
「以前、酔っ払ったバルガの野郎がオリンにふざけかかったせいでよ、高価な壺が割れちまったんだ。それを全部オリンののせいにしていじめやがるんだよ。ムカつくだろ」
ゲオルグは深く唸った。
「うーん……で、その壺の値段は?」
「一千万ミール。あたいらメイドがどんなに働いたって払いきれなねぇ額だ」
オリンが涙ながらに訴える。
「いいんです……あれは仕方なかったんです……」
「仕方なくねぇよ! そのカップだって、割れるくらいの力で投げつけられたんだろ!?」
「そうですけど……」
「くそっ! 金さえありゃあ、すぐに弁償してオリンのケツを拭いてやれんのによ!」
重苦しい雰囲気の中、ゲオルグがミルクを一気に飲み干した。
「オリン……悔しいが、俺にもどうする事もできない」
「いえ、ゲオルグ様、ありがとうございました。話まで聞いてくださって……」
「頑張ってくれ。強く生きるんだ」
メイド達にオリンを任せて部屋を後にした。晴れない気分で廊下を歩くていくと、別の部屋から大勢の男達が話し合う声が聞こえてくる。扉が開いていたので中を覗けば、鎧を身に着けた兵士達がいた。
その中に、カールの姿もあったので声を掛ける。
「カール、おい、カール」
「やあゲオルグ。この物見のカールの事を覚えてくれていたんだね、ありがとう」
ゲオルグを中に招き入れる。
「こっちに来てよ。なあに、僕らは襲い掛かったりしないから」
カールが周りの兵士にゲオルグを城主だと説明すると、兵士達が集まってきた。
「ところで、この部屋の集まりは何だ?」
「あれ、知らないの? 今日は西ベルン城の騎馬試合があるんだよ」




