メイド達
日中の通路はメイドたちが独占するように行き交っていた。黒と白のモノトーンカラーの服装を身に纏い、洗濯物や花瓶などを抱えて右往左往している。お互いにぶつかることなく器用に避けながら職務をこなしていた。
その間を職務のないゲオルグがぶらぶらと歩いていると、一人のメイドが廊下に倒れ込んで泣いていた。ゲオルグが駆け寄る。
「おい! ど、どうしたんだ!?」
メイドは何も答えず、両手で顔を覆ってさめざめと泣くだけである。
困ったゲオルグだったが、側に割れたカップが落ちていることに気付いた。
「このカップが原因か?」
「そ、そうですけど……」
涙交じりの声でどうにか返答した。その顔は下がり目に下がり眉、両目の下には泣きぼくろまで持っている。泣いていたせいで目の周りが赤くなっていた。
メイドはゆっくりと立ち上がる。ゲオルグがカップを拾って手渡すと、それを見つめながらまた静かに泣き出した。まるで無関係なゲオルグだったが、つられて泣きそうになる。
「こ、ここで泣くな! メイドの詰め所のような場所はないのか?」
「廊下の突き当たりの部屋が休憩室です……」
「俺も一緒に行ってやる。歩けるか?」
「すいません……」
ゲオルグは顔を振って涙を払うと、泣くメイドの肩を支えながら部屋へと連れた。扉を開ける。数人のメイドが椅子に座って話をしていたが、こちらに気付いて駆け寄ってきた。皆、このメイドと近いくらいの若い顔つきである。
「オリン! どうしたの!?」
メイド達は泣くメイド――オリンという名前らしいが――とゲオルグを囲んだ。オリンへの視線は優しいものだったが、ゲオルグへの視線はまるで厳しく、敵を見る目である。
何やら只ならぬ雰囲気が包む中、どすの利いた女性の声が部屋の奥から聞こえる。
「待ちなっ!」
メイド達がゲオルグから離れると、その声の主が奥の席に見えた。服装から判断するにメイドには違いないようだったが、ブーツを脱いで組んだ脚をテーブルに乗せ、椅子にふんぞり返って座っていた。長い金髪を腰まで垂らし、目つきの悪い顔でゲオルグを睨む。
何かを言うわけでもなく、指の動作だけでゲオルグを自分のところまで呼んだ。
「あたいは第十七代西ベルン特攻メイド隊の総長、ジョアンナ・アーツだ」
「そ、そうか……、俺の名前はゲオルグだ……」
「黙んな! よくもオリンを泣かせやがったな!」
「ち、違う! 俺じゃない!」
問答無用でゲオルグの胸ぐらをつかむジョアンナに、オリンが仲裁に入る。
「総長、ゲオルグ様は悪くないんです……」
「あ? じゃあ何が原因なんだ?」
「それは、その……」
「さてはまたバルガの野郎かい?」




