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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
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真意と涙

 テレーズは視線をカップに落としたまま話す。

「ぎ、逆です! 白いバラを植えてくれた事にお礼を言いたくて呼んだのですが……私の怒りっぽい性格のせいで誤解を生んでしまったようですね……」

「な、なぁんだ! そうだっのか! 俺はてっきり処罰でもされるのかと思っていたんだ」

 安堵のため息をつくゲオルグに対し、テレーズは肩をすくめた。

「怖がらせて……すみません……」

「あっ、いや、いい。もういいんだ。謝らないでくれ」

 小さい声でテレーズが続ける。

「私、臆病なのです。本当は城内の人々とも仲良くしたいのですが、つい……あなたと初めて会った時も、実は怖くてどうしようもなくて……それで……私は……」

「わ、わかった。もう十分わかった。だからもうこの話は止めよう、うん」

 段々と沈み込んで小声になっていくテレーズの様子から、ゲオルグは敏感にテレーズの心境を察知した。しかし彼女の肩は小刻みに震え始める。

「……私はあなたに処刑という恐ろしい宣言をしたのです……混乱に陥っている東ベルンの人間だというだけで怖くて、自分の都合で、なんてひどいことを……」

 一瞬だった。しかしテレーズの赤い瞳が潤んでいるのをゲオルグは見逃さなかった。全身から冷や汗が噴き出る。

「お、俺は敵国の城主だから処刑しても間違いではなかったぞ! あ、いや、えっと、処刑は本気で嫌だが、とにかく間違いではないと思う! だから、気にするな!」

「本当にすみませんでした……うう……ひっく……」

 ついにぽろぽろと大粒の涙を流し始めたテレーズに、ゲオルグの頭は真っ白になった。

「ああっ!? テ、テレーズ! テレーーーーズっ! それ以上は何も言うな! ほ、ほら、涙を拭け! ええと……この柔らかそうな布で!」

 ゲオルグは、自分の首に掛かったままだったナプキンを外して手渡す。

「うう……ぐすっ……ありがとうゲオルグ……」

「誤解してすまなかった。君は相当に悩んでいたんだな」

 テレーズは涙を拭いてやや落ち着きを取り戻したが、顔はうつむいたままだった。

「いえ、私が悪いのです。城の者達からも怖がられていますから……」

「やめるんだテレーズ、自分を責めるな。俺まで辛くなってくるから泣かないでくれ」

「そうですか……わかりました」

 言葉では了解したが、テレーズは泣くのをとめることはできなかった。

 ゲオルグは必死に話題の変更するきっかけを探す。

「そ、そうだ、紅茶をいただこうかな!」

 バラの花びらが浮いた紅茶をすする。完全に冷え切っていたが、ゲオルグは精一杯の笑顔を作った。

「美味いっ! こんなに美味い紅茶は初めて飲んだぞ! 俺は幸せだな! アハアハ!」

 ゲオルグの下手糞な笑いに、テレーズがようやく顔を上げた。

「ありがとう……うう……ゲオルグは本当に優しいのですね……ぐすっ」

「な、泣くなーっ! 泣かないでくれテレーーーーズ! 俺は女に泣かれると、どうしたらいいかわからなくなるんだぁーっ!」

「す、すみません……つい……」

「畜生……俺まで泣けてきたぞ……すまないがその布を貸してくれ……」

「えっ!? こ、これは使わないほうが……」

 言う間もなく、ゲオルグはナプキンをテレーズの手から取って使い始めた。

「なあに、濡れていようが何でも良い……なぜか物凄く豚臭いのが気になるが」

 鼻をかんで窓から投げ捨てる。


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