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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第三章 信用
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最後の晩餐

第三章 信用


 ロバートはいつも通りの食事を取っていた。特別に豪華というわけではないが、彼としては満足な食事である。塩漬けの豚肉をパンに挟んで食べると、香り付けのハーブの風味が口の中に広がった。城の南で育ったブドウのワインを口にし、そしてまたパンをかじる。

 ソフィーティアの、西ベルン城主直属の配下だからといって特別扱いを受けたことはない。少なくとも、この城では皆が同じような食事内容なのである。

「少年よ、今日はどうしたのだ?」

 正面で食事を取る少年に声を掛ける。食事中にベラベラと喋るのは趣味ではなかったが、ゲオルグが敵国の城主であれなんであれ、同じ主君を持つ配下として相部屋となった以上は信頼関係を築きたかった。

 話すきっかけは何でも良かったが、状況のほうが本題の話をせざるを得ない場面にさせる。

 ガラガラと配膳台で部屋に運ばれてきたのは、大きな豚の丸焼きだった。

「どうやらこれは俺の最後の晩餐らしいな」

 その豚はとてつもなく大きかった。テーブルを二台並べた上でも両足は外へとはみ出し、

胴体の重さでテーブルは中央へしなっている。

「食うか?」

 切り取られた頭部を差し出されたが、首を振って断った。

「ソフィーティア様の配下となった少年が、処刑されてしまうのか?」

「さあな。ただ、城から出たのがテレーズに見つかったんだ。そして部屋に来るように呼ばれたんだ」

「そ、そうか……それは大変だな……」

 ロバートはスープをすするが、横たわる豚の印象が強すぎてもはや味は分からない。

「少年よ、信用を落とすような行動は慎むべきだったな」

「信用……信用か」

 言葉の意味を噛み締めるように、ゲオルグは口にした。

「俺が信用を得るには、どうしたら良かったんだろうか」

「実力を示すか、あるいは期待に答えるか……どうするにしても機会がなければ……」

「一つ聞きたい。ロバートは敵国の城主の俺を信用しているのか?」

 問われて、ロバートはスプーンを置いた。

「今は同じ主君を持つ仲間として、私は少年を信用したい」

「そうか……ありがとう」

「信用は敵味方の関係を越えて存在する。テレーズとも心が通じ合えば、希望はある」

 ゲオルグは立ち上がって手を差し出した。ロバートはその手を固く握る。豚の頭上で固い握手が交わされた。

「今のは俺にとって素晴らしい意見だ……行ってくる」

「テレーズの部屋は北西の一番奥の部屋だ。気をつけるんだぞ」

 ゲオルグは部屋を後にした。

 太陽は山陰に隠れ、夜が近付いてくる。明かり取りの油はこの山では高価で貴重であるため、ランプはあるが灯される事はなかった。なるべくなら暗くなってしまう前にテレーズの部屋へ向かう必要があると考え、ゲオルグは急ぐ。

 最後の角を曲がると、柱の影からソフィーティアがひょっこり現れた。

「ゲオルグ……行くのね?」

「呼ばれたからな……なんだ、心配してくれるのか?」

 ソフィーティアは胸の前で手を組みながら頷いた。

「ものすごく心配だわ。相手はテレーズなのよ? あのバラはただのきっかけ。何をしてくるか……」

「ま、なんとかしてくる。するしかない」

 ゲオルグが横を通り抜けようとすると、ソフィーティアが両腕を広げて止めた。

「もし完全に日が落ちても戻れなかったら、私の夜間警護があるって言って逃げてね」

「わかった。必ずそうする」

「……その時で良いから、テレーズに部屋でされた事を全部報告してね。場合によってはテレーズを処罰してやるわ」

 ソフィーティアはテレーズの部屋の方向を鋭く睨みつける。

 ゲオルグはそれを不思議がった。

「どうして自分の仲間にそこまでするんだ?」

「ゲオルグだって私の配下なんだから仲間よ。仲間が傷つけられたら怒るわよ」

「俺の主君は頼もしいな。よし、通してくれ」

「じゃあね、部屋で待ってるからね」

 ソフィーティアは自分の部屋へと戻っていった。


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