才能ある動物たち
メルメトの山に向かって日が段々と傾いていく。これといった収穫もなかったので、ゲオルグは十字路へと引き返すと、オレンジ頭のニドが声を掛けてきた。
「おーい! こっちだこっち。何か情報はあったか?」
「いや、何もない。それよりそろそろ戻らないと、城の連中に見つかってしまう」
「でもよ、あのお嬢様が戻ってこないとどうにもならねえんだな、これが」
二人は十字路の周辺で時間を潰したが、ソフィーティアは一向に現れない。それどころか人間すら通りかからなかった。
時間だけが過ぎていく。痺れを切らしたニドが、肩の上に乗ったピートを地面に下ろす。
「しょうがねえ……ピートに探してもらうか」
「そのリスにそんな真似ができるのか?」
「天下のニド様の相棒だぜ? まあ見ててくれよ」
ピートはしっぽを振りながら、その場でくるくると回り始めた。やがて動きを止めると、しっぽの指す方角に向かって走り始める。
すかさずニドが追いかけた。
「ゲオルグ、あっちだ」
「よし、行こう」
二人と一匹はあっという間に商店街を抜け、人通りの少ない路地裏へ出た。ピートは跳ねるように突き進んでいくと、一軒の店の前で止まった。鼻をひくつかせて匂いを確認し、ゆっくりと中へ入る。
ニドは外から中の様子を伺い見た。
「ここにいるみてぇだぞ? へへ、珍しい鳥が鳴いてら」
ゲオルグは、この鳥達の正体を知っていた。
「ニド、気をつけろ。こいつらは人を惑わせる催眠鳥だ」
ゲオルグは店の中へと入っていく。樽に腰かけていた男がゲオルグに気が付いて立ち上がる。
「へへ、兄ちゃん、わ、悪いが今日はもう閉店だぜ……?」
ゲオルグは間髪入れずその顔に拳を叩き込んだ。
「うぎゃあっ!?」
「宿屋で殴ってやったのに、まだ殴られたりないようだな」
「く、くそ! 気付いていやがったのか!」
男はカウンターを飛び越えて逃げる。出口に差し掛かったとき、商品棚の陰に隠れていたニドが足を払って転倒させた。そのまま手近にあった縄で縛り上げる。
「どこにオイラ達の連れを捕まえてんだ? 早いとこ言いな」
「し、知らねぇなあ!」
しらを切る男に、ゲオルグは催眠鳥をかごから出して鳴かせた。
「どーこに隠した? どーこに隠した?」
抵抗していた男だが、催眠にかけられ口を開く。
「うーん、店の奥の棚の裏だ……鍵はこれだ……」
ゲオルグが薄暗い店の奥へ目を凝らしながら入っていくと、棚の裏からカリカリと木を引っかくような音が聞こえた。棚をどかすと、ピートが裏に隠された扉の取っ手にかじりついている。
程なくして扉が開く。中にはしゃがみこんでうつむく人影があった。
「おい、ソフィーティアか?」
呼びかけると、人影は外へと飛び出して来た。
「私の配下なんだから、もっと早く助けに来なさいよね! んもう、こ、怖かったんだから!」
「す、すまなかった……」
勢いに気おされてとりあえず謝る。店の中に戻ると、ニドが男を椅子に縛り付けているところだった。
「とっ捕まえたけど、どうするよ?」
ゲオルグが考えているうちに、ソフィーティアがペンペンと男の顔に平手打ちを始めた。
「こいつはねえ、私を東ベルンに売り飛ばすとか言ってたのよ!」
「た、助けてくれぇ!」
ゲオルグが彼女の手を止めさせて質問する。
「東ベルンで起こっている異変について、知っていることはないか?」
「あ、あるある! 話すから助けてくれぇ!」




