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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第二章 ひとときの脱出
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不思議な鳥獣店

「ちょっとくらいなら、見たっていいわよね」

 ソフィーティアは色とりどりのひさしのある商店街を歩いていた。服や宝石を物色しながら進んでいくが、特に買う事はしない。見るだけに留める。

「それにしてもやかましいわね……買う気になれないわ」

 騒々しい商店街を離れるように歩いていくと、いつの間にか人気の少ない通りの中にいた。痩せこけた犬がフラフラと歩き、酔っ払いが道端で腹を出して寝ている。朽ちて崩れた家屋がちらほら存在し、鼻を突くような異臭すら漂っていた。

「も、戻ろっと……」

 踵を返そうとしたとき、小鳥のさえずる声が一軒の家屋から聞こえて来た。地味な色合いだったが、鳥獣店の看板が掲げられている。

「お店屋さんなのかしら?」

 中を覗いてみると、たくさんの美しい鳥がカゴの中で跳ねていた。思い思いに鳴き、ソフィーティアを呼び寄せる。

「あら、かわいいじゃない」

 一羽一羽を丁寧に見ていると、奥から男がやって来たので挨拶をする。

「こんにちは。あなたは店員さん?」

「……」

 男は黙ってソフィーティアを見ていたが、

「奥にもっと綺麗な鳥がいるんだ。見ねーか? なあ、見ねーか?」

「うーん……なんとなく見たい気持ちだわ……」

 不思議とその声に吸い寄せられるようにソフィーティアがついて行くと、薄暗い部屋に辿り着いた。

「こんな暗いところにいるの?」

「……」

 男は黙って部屋から出ると、扉を閉めた。

 がちゃん。

「あっ!? な、何!?」

 ソフィーティアが扉を開けようとしたが手遅れだった。固く閉ざされた扉はびくともしなかった。

「出して! 出してよ!」

 外から大きな笑い声が聞こえる。

「ガッハッハ! まんまと催眠に騙されやがった!」

「ひどいわ!」

「ひどいだと? フン、さっきはよくもやってくれたな、旅芸人め!」

 ソフィーティアはその声で気が付いた。

「あ、あなたはさっきの強盗!?」

 笑い声が大きくなった。

「今頃気付いたか! さっきのお返しだ、お前を売りさばいてやる!」

「ちょっと、それどういう事? 人が売れるっていうの?」

「おうよ、鳥なんかよりずっと高値でな! お前は東ベルンの闇市行きだ、げへへ」

 笑い声は遠ざかっていった。

 部屋には窓すらなく、暗闇だけが広がっている。

「ど、どうしたらいいのかしら……」

 窓もない暗がりの中で、ソフィーティアは膝を抱えて座り込むだけだった。


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