不思議な鳥獣店
「ちょっとくらいなら、見たっていいわよね」
ソフィーティアは色とりどりのひさしのある商店街を歩いていた。服や宝石を物色しながら進んでいくが、特に買う事はしない。見るだけに留める。
「それにしてもやかましいわね……買う気になれないわ」
騒々しい商店街を離れるように歩いていくと、いつの間にか人気の少ない通りの中にいた。痩せこけた犬がフラフラと歩き、酔っ払いが道端で腹を出して寝ている。朽ちて崩れた家屋がちらほら存在し、鼻を突くような異臭すら漂っていた。
「も、戻ろっと……」
踵を返そうとしたとき、小鳥のさえずる声が一軒の家屋から聞こえて来た。地味な色合いだったが、鳥獣店の看板が掲げられている。
「お店屋さんなのかしら?」
中を覗いてみると、たくさんの美しい鳥がカゴの中で跳ねていた。思い思いに鳴き、ソフィーティアを呼び寄せる。
「あら、かわいいじゃない」
一羽一羽を丁寧に見ていると、奥から男がやって来たので挨拶をする。
「こんにちは。あなたは店員さん?」
「……」
男は黙ってソフィーティアを見ていたが、
「奥にもっと綺麗な鳥がいるんだ。見ねーか? なあ、見ねーか?」
「うーん……なんとなく見たい気持ちだわ……」
不思議とその声に吸い寄せられるようにソフィーティアがついて行くと、薄暗い部屋に辿り着いた。
「こんな暗いところにいるの?」
「……」
男は黙って部屋から出ると、扉を閉めた。
がちゃん。
「あっ!? な、何!?」
ソフィーティアが扉を開けようとしたが手遅れだった。固く閉ざされた扉はびくともしなかった。
「出して! 出してよ!」
外から大きな笑い声が聞こえる。
「ガッハッハ! まんまと催眠に騙されやがった!」
「ひどいわ!」
「ひどいだと? フン、さっきはよくもやってくれたな、旅芸人め!」
ソフィーティアはその声で気が付いた。
「あ、あなたはさっきの強盗!?」
笑い声が大きくなった。
「今頃気付いたか! さっきのお返しだ、お前を売りさばいてやる!」
「ちょっと、それどういう事? 人が売れるっていうの?」
「おうよ、鳥なんかよりずっと高値でな! お前は東ベルンの闇市行きだ、げへへ」
笑い声は遠ざかっていった。
部屋には窓すらなく、暗闇だけが広がっている。
「ど、どうしたらいいのかしら……」
窓もない暗がりの中で、ソフィーティアは膝を抱えて座り込むだけだった。




