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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第二章 ひとときの脱出
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情報集め

「カフェや食堂、酒場や宿屋なんかがあればいいんだが……」

「それなら、カフェテラスと食堂があって酒場も経営している宿屋があるわ」

「……完璧だ。そこに案内してくれ」

 人ごみの間を縫うようにして歩くと、その宿屋は町外れの通りに店を構えていた。小奇麗な二階建ての造りで道に面してカフェも設けている。入り口にはカフェと酒場と食堂の看板も並んでいた。

 しかし、人のいる気配がなかった。静かな町外れという事も相俟ってか、初めてここを見たゲオルグには空き家にすら思える。

「ここ、経営しているのか?」

「変ねえ、この辺りじゃ一番有名な宿屋さんなんだけれど……」

 とりあえずゲオルグは店の扉を押して入る。大きな吹き抜けが設けられた開放感のある店内だった。一階は食堂と酒場、二階は宿屋になっている造りのようだが、案の定、店内はしんと静まり返っている。テーブルと椅子だけが綺麗に並べられ、人の出入りがないせいか、やや空気がよどんでいた。無人のカウンターの棚にはワインやブランデーが置かれているが、肝心の店員の姿はない。

 ゲオルグが口をへの字に曲げたとき、カウンターの奥の部屋から一人の太った女性が現れた。

「もしかして、お客さんかい?」

「そうなんだが、ここは営業をしているのか?」

 その女性は軽いため息をついた。

「まあ、座んなよ」

 三人はテーブルへと腰掛けた。店員らしいその女性は水を運び、その席に同じように着席した。

「営業はしてるけど、最近は寄っていく客が少なくてね」

 ため息混じりにグラスの水を口に運ぶ。

 ゲオルグは店内を眺めて言った。

「宿泊客もいないのか?」

「ああ、それならたくさんいるよ。部屋から出ようとはしないけれど」

 二階に見える部屋の扉は、沈黙を守っていた。

「泊まっているのは皆、東ベルンからの人さ」

「本当か!? ぜひ話を聞きたいんだが……」

 女性はニッコリ笑うと、席から立ち上がった。

「皆ぁ、話し相手が来たよ! 暇なら出てきて相手してやんな!」

 すると、扉が開いてぞろぞろと人が出て来た。二階の手すりにもたれながら、こちらの様子を伺っている。

 一人の老人が口を開いた。

「あんたら何者だい? 旅の人かい?」

「まあ、そんなところだ」

「なるほど。ちょっと待っておくれな」

 老人を先頭に宿泊客がぞろぞろと降りてくる。三人のテーブルを囲むように腰掛けた。

「驚いた……こんな物騒な世の中で、なんで女の子が旅なんかしてるんだい?」

 心配そうな眼差しで老人に見つめられ、ソフィーティアは誤魔化すように言った。

「た、旅芸人をしてるのよ、三人で」

「へぇ……珍しいねぇ。頑張っておくれよ」

 話が進みそうにないので、ゲオルグが老人に尋ねた。

「あなた方は東ベルンから来たのですか?」

「そうだ……もう戻れそうにないけどなぁ」

「どういうことでしょう?」

 老人は水を飲み、グラスを眺めながら言った。

「私は村長なんだけどな、町に盗賊が増えてしまってまともに住めなくなったんだ」

「盗賊が増えた理由は?」

「さぁ……前の城主様が病死されてから急に治安が悪くなって、皆で逃げる他なかった」

 周りに座っている人々も、うつむいて頷くだけだった。

 ソフィーティアが肘でゲオルグを小突く。

「ゲオルグ、あんまり聞いたら可哀想よ」

「そ、そうだな。すみません」

「いや、いいんだよ……それより、あんたら芸人だったかな?」

 村長はソフィーティアの顔を見て言う。

「暗い事ばっかりで皆が暗い気持ちなんだ。何か芸を頼みたいんだが……」

「えっ!? そ、そうねえ、急に言われてもねぇ……」

 しどろもどろになるソフィーティアの代わりに、ゲオルグが立ち上がった。

「東ベルンの皆さんのために、私が芸を披露しましょう」

 驚いたソフィーティアが耳元で囁く。

「な、何か出来るの?」

「市民が暗い顔をしてるんだ。ここはひとつ、取って置きを披露しよう」


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