城主謀殺計画
月明かりが降り注ぐ夜の城内、その裏庭。すべてが静まり返り、木々のざわめきだけが響く闇の中で、ひっそりとうごめく影が二つあった。
一つは黒いローブを纏った男。フードを被って頭まで覆い隠し、気配を殺して城壁の側に立っていた。その男が言う。
「バルガ、約束の報酬を持って来ました……」
唸るような低い声を発すると、もう一つの影もまたうごめいた。
「遅かったな、クロード。何をぼやぼやしていたのだ」
「許してください。物見のカールに見つからないよう侵入するのは難しいのですよ」
「まあよいわ。それより金だ。金をよこせ」
黒いローブを着た男、クロードが黒いローブの間から大きな袋をにゅっと出した。バルガはそれを掴んだが、それは握られたまま放さなれない。
「待ってください」
「なんだ。早くその手を離せ」
「これを渡す前に、契約が守られたことを確認しなければ……」
「む、むう……」
バルガは袋から手を離した。
「……あの小僧はまだ生きている」
「なんと! それでは話が違いますね」
フードの奥に隠れた瞳が厳しい視線になる。
「私はゲオルグ・オートマイヤーの殺害を依頼したのですよ」
「し、しかし奴は捕らえたぞ! 死ぬのは時間の問題だ!」
「では、その時が来たらこれを渡しますよ……」
男が袖の中に袋をしまいこむのを見ると、バルガは舌打ちをした。
「チッ! 用が済んだのならさっさと立ち去れ!」
「実は、今日はもう一つお願いがあって来ました」
背中を見せて城へ戻ろうとしたバルガの足が止まる。
「……言ってみろ」
「ゲオルグの持っていた装備品一式を、そっくりいただきたいのです」
「つべこべ注文を付けるな! まずは殺してやるから待っていろ!」
バルガは大股で館の中へと戻っていった。
深くフードを被りなおすクロード。
「やれやれ……本当にできるんですかね……」
言い残し、闇の中へと姿を消し去った。




