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第4話 誓うドマゾヒスト

タイトルがまたひどいですが、こんな主人公をよろしくお願いします。

ある朝のことである。

登校中にまやさんの後姿を見つけた。

晴れた気分になった俺はスキップをしながらそっと近づき、抱きつこうと…

いやいや待て待て!!!

もう俺は一方的に気持ちを押し付けることはしないと誓ったはずだ…!!

気持ちを抑えて話しかけようと、一度深呼吸をする。

「すぅ~~、はぁ~~~~」

よし、あとはただ話しかけるだけ。

ミッション、スタート!

「まーやさん♪」

「はい?」

「あれ?」

何かがおかしい。

俺は確かにまやさんに話しかけたはず。

だが、振り向いたまやさんはなんだかまやさんではない。

面影はある。でも何か違う。

「…まやさんではないな!? 貴様何者だ!?」

「初対面で中々失礼なことをいう人ですね、フフフ」

「!?」

このひと、口調は柔らかいけど目が笑っていない。

いや、何か背筋がぞくりとする。

これは関わってはいけないタイプな気がする。

「あーえーとそのー」

そもそも、佐久間智美が近くにいないことも変だ。

これはまさか…

「俺へのトラップか!?」

「…はぁ。間違えられるのはよくあることだけどあまりいい気分はしないわね」

俺の目の前でため息を吐いたその女の子はやれやれといったようなポーズをとる。

「あーーー!!! 柊和人!!」

「その声は…さくとも!?」

「そんなアイドルみたいなあだ名勝手につけないで!! この変態!!」

そのとき、佐久間智美のうるさい声が聞こえてきたので、振り向く。

しかし、そこにはまやさんもいて…

「あ! まやさんおはようございます!」

「ええおはよう」

まやさんはこっちに全く近づかずに挨拶をする。

警戒をしているのかな?

「大丈夫ですまやさん。私は心を入れ替えたのです、もう何も手は出しませんとも!」

「…」

ジト目でこちらを見るまやさん。

あれ、なんだかその目でもっと見られたいような…いや待て。

「俺は決して誘惑には乗りません」

「全く誘ってないのですけども」

まやさんと朝の貴重なひと時を過ごしているそんなとき。

「…柊和人?」

隣にいたまやさんに似た女の子が突然つぶやき出す。

「あなたが柊和人なのね」

「ん? え?」

なぜだかその女の子から黒いオーラが発生する。

「まや姉さんに不埒なマネを働く命知らずな先輩、柊和人ってあなたのことなのね…」

「あ、はい。さすがに命は大事ですが…ん? 姉さん?」

なぜか敬語になってしまう俺。

この人には逆らってはいけない、そんなオーラだ。

「まや姉さんに変なことをしてみなさい。私があなたを殺すわ」

「う…」

何だこのオーラは…

この俺が一歩も動けないだと…

いや、何も強い設定はないけれど、渚先輩のときはまだ動けたぞ。

渚先輩が発するオーラを闘気や覇気と形容するならば、この人のオーラは妖気や殺気の類だ。

「…まぁいいわ。私があなたに関わることなんて二度とないと思うしね」

そしてその邪悪なオーラを纏ったまま、まやさんに似ているかたは去っていった。

「…怖かった。彼女は一体…」

「まやの妹のさやちゃんよ。蓮見さやちゃん」

「蓮見さや…」

「ってアンタと話してる場合じゃないわ!! まや行きましょ!」

「ええ」

まやさんと佐久間智美は俺のほうを一回も見ず去っていった。

蓮見まやさんの妹、蓮見さやさんか…

将来の妹というわけだな?

「…何かうまくやっていけるか不安だ」

「よう和人。どうしたんだ? すごい汗かいてるぞ」

「あ、エロか」

俺はエロから蓮見さやの話を聞いた。

蓮見さや。

蓮見財閥の家系で、まやさんの妹。

今年入学した生徒で、トップの成績である。

教師からの信頼もすでに厚く、まやさんと同じく生徒会所属である。

すでに一部で親衛隊が結成されているといううわさで、将来的にはまやさんと二人学園の二大アイドルになるのではないかと推測されている。

「ん? 生徒会? まやさんって生徒会所属だったのか?」

「お前そんなことも知らなかったのかよ!?」

「う、俺の勉強不足だ。素直に反省します」

俺は頭を垂れる。

「まぁ別に良いんだけどよ。俺たちはモテタイ所属の非モテだもんな。これから勉強していこうぜ」

「その不名誉な肩書きはもう取っ払うことにしない!?」

このまま所属していたら本気でモテなくなりそうだ。

まぁ全然俺はモテる気配ないけれど。

「よし、今日の放課後は4人でデラスバウスでも見て勉強しようぜ!!」

「くっ…それも悪くない」

俺とエロは肩を組みながらダラダラ登校した。

なお、遅刻した。

「お前というやつは…」

渚先輩に説教を食らったのは言うまでもない。






昼休み。

俺とエロ、オタ、ゴリの4人で食堂に来ていた。

「今日混んでるな…」

「4人で座るのは厳しそうだね」

オタの呟きに腹は決まった。

「今日はバラバラでいっか」

「だな」

そのまま散開して席を探し始めた。

俺も生姜焼き定食が冷めないうちに食べたかったので、席をひたすら探した。

そして、一つだけ空いていた席を見つけるとそこに着席をした…が。

「あ」

「…」

目の前に座っている女の子と目が合った。

「こ、こんにちわ~さやちゃん」

「…」

目の前の蓮見さやは俺から目線を外し、自分のお弁当を食べ始めた。

「ちょっとさや、無視することはないんじゃない?」

「ゆう、早く食べて出ましょ」

ゆうと呼ばれた女の子はニコリとこっちに微笑むと、さやちゃんに話しかけた。

しかし、肝心のさやちゃんはニコリともせず、黙々と食べている。

「すいません、さやはちょっとご機嫌斜めみたいでー。あ、私はさーやの同級生の瀬川せがわゆうっていいますー」

「あ、どもー、柊和人です…って知ってるか」

「まぁ有名ですからねー」

「ははは…」

ちらりとさやちゃんが睨んだ気配がして、俺は乾いた笑みを浮かべた。

この子、佐久間智美よりも怖い。

彼女はまだノリがいいというか、嫌われても無視ではなく対応をきちんとしてくれる。

反面、蓮見さやちゃんはもう完全にこっちと関わる気配がない。

嫌悪されてるっていうのはこのことだと思う。

「もう、さやってお堅いんだからー。あ、私はあなたのこと面白いなーって思ってるんですよ?」

「面白い?」

「そう!! 学園のアイドルであり、高嶺の花!! 蓮見まやに対し転校初日に大立ち回り!! しかもそれが不埒な行為ってもう勇気の塊ですよね!!」

「え? あ、うん、ありがとう」

この子、何だか普通じゃない気がするな…

俺が言うことじゃないけど。

「しかも、絶対にかなわない恋を抱くなんて…本当にみじめで、かわいそうで、もう最高ですよ!!」

「うん、それ完全にディスってるね!」

「分かってないですねーーー。男って挑戦している時が一番輝くんですよ!? しかもその難易度が高ければ高いほどたくさん痛い目に逢うじゃないですか!? もうそんなみじめな男子って萌えですよ!!」

「ちょっと待って。結局俺みじめってことじゃね!?」

「まぁ簡単に言うとそうですよねー」

「開き直った!?」

「ゆう、おしゃべりしてるなら私生徒会で食べるから」

いつの間にかお弁当を片付けていたさやちゃんが席を立ち始めた。

「え、待ってよ! 私を置いてくの?」

「楽しそうにおしゃべりしてたし、良いんじゃない?」

「さや、その台詞、まるで嫉妬しているときの言葉よ。まさか私に恋!?」

「じゃあね」

「スルーしないでよ!」

さやちゃんはさっさと席を立ち、去っていこうとする。

「待って」

俺は反射的にさやちゃんを呼び止めてしまった。

「本気だと思われないかもしれないけれど、俺はまやさんのこと全て知りたい。それくらい真剣なんだ」

「…きもっ。ストーカーじゃない」

「うぐっ! 確かにそう思われてもおかしくない…!!」

けれど…

「そう思われても構わないって思えるくらい、マジなんだと思う」

「…はぁ。しかもドMとか…」

さやちゃんはもう聞いてられないと言わんばかりに背中を向ける。

あ、あとどうしても言わないといけないことが…

これは絶対だ。

「待って!!」

「…」

さやちゃんは黙って立ち止まる。

何だかんだいい子だ。

「ハンカチ、忘れてるよ」

「っ!!」

さやちゃんは少し恥ずかしそうにしながら急いで机の上にあるハンカチを取る。

そしてこれ以上ここにいられないとばかりに、踵を返す。

「あと――――」

俺はポケットの中にあるプログラム表を取り出す。

「2週間後にある球技大会、まやさんのために俺たちは優勝する、誓うよ」

「…は?」

突然の俺の宣誓にさすがのさやちゃんも呆気に取られる。

「俺がどれだけ本気か、見せるよ」

「…はぁ。クラス対抗の大会であなたがどれだけ貢献できるの? 個人で戦うものじゃないのよ」

「確かに…いや、たとえそうだとしても俺は…」

「はいはい、精々頑張ってください」

さやちゃんは相手にしないような口調だ。

「柊先輩」

「ゆうちゃん?」

今まで黙ってたゆうちゃんが突然口を開く。

「優勝は難しいと思いますよ。うちのクラス、強いですから」

今までの茶化した口調でないゆうちゃんの真剣な言葉にものすごい圧を感じた。

「まぁそれに3年生の方々も年の功で強いですしねー」

ゆうちゃんも食べ終わり、席を立つ。

「ま、楽しみです、2週間後が」

「…ははっ」

俺の恋路は茨道みたいだな、やっぱり。

だがどうしよう。

実は俺、球技なんて昔サッカーと野球を少しやっただけなんだよね。







「思わぬ展開だけど、これはある意味チャンスだったな」


「そうだったのか?」


「望みをかなえる、な」



あとがき劇場

美空「あ・と・が・き・劇場ーーー!!」

パフパフ

美空「今回来ていただくのはこの方でーす! もうお分かりだと思いますが、1年生ながらスーパーアイドル! 蓮見さやさんでーす!」

さや「…何かしらこれ」

美空「あとがき劇場ですよ! 登場人物にインタビューするやーつ!」

さや「あなた誰かしら。どうしてため口?」

美空「同学年の初島美空ですよ!! 新聞部期待のエースの!」

さや「いや、同学年かもしれないけど、私にため口とかずいぶん偉いのね」

美空「え…? (何だろう。すごく不機嫌だわ…)」

さや「はぁ。もう帰っていいかしら? 波野良子さん」

美空「初島美空ですっ!! 一つも合ってない!?」

さや「さよなら、安田瑠璃さん」

美空「誰!?」

さや「小学校の友達」

美空「わざと間違えてるじゃないですか~~~~~!!」

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