第2話 逃げ回るド変態
早速2話からタイトルひどいw
まあそんな主人公のお話なのでお許しを。
とうとう共学校に入学することになった。
念願の女子との共同生活が待っているかと思ったら、初日から女子たちには嫌われ、針の筵のような毎日を送ってしまっていた。
しかも、一番仲が良くなった集団は、学校でも問題児集団として認識されている、モテない3傑だった。
そのため、俺の学園生活が薔薇色になる可能性は限りなく低いみたいだ…
あぁ…まやさん…
最近はまやさんにも近寄ることが出来ない毎日が続く。
特に佐久間智美という女子が俺を蹴ったり蹴ったり蹴ったりで、邪魔ばかりしてくる。
「ぐぐぐ…」
「あのぉ」
「ん?」
そんなとき、俺に話しかけてきた一人の可愛らしい女の子。
俺に話しかけてくるなんて、とっても優しい女の子なんだな。
「お兄さんと仲が良いと聞いたので、頼みがあるのですが」
「え、何?」
すると、女の子はお弁当を俺に渡してきた。
「お、お弁当!? こ、これを俺に!?」
「いえ、兄が忘れていったので、届けてほしいんです」
「兄…? つうかこの弁当でかいな」
普通の弁当の3倍の大きさもする弁当。
俺でも多分食べきることはできない。
「私、魚住晴子って言います。入学したての高校1年生なんです。だからまだこの学校詳しくなくて…兄の知り合いに会ったらお願いしようと思ったんです」
「へぇ…兄はまさか魚住剛憲? ハハハそんなわけ…」
「そうですよ」
いやぁ晴子さんって冗談きついな。あんなゴリラ兄貴の妹がこんな可愛らしいわけ…
「ってええええええええええ!?」
俺の絶叫が廊下で響き渡った。
「まぁみんなそんな反応ですけど…」
晴子さんはその反応に慣れているのか、フフっと苦笑する。
それにしても、あのゴリからこんな妹が出来るとは…
「それで、お願い出来ますか?」
「ああいいよ。任せてくれ」
「すいません。お願いします」
晴子さんはペコリとお辞儀をして去っていった。
礼儀正しいし、良い子だと思った。
…ところで何で俺のこと知ってるのだろう?
「まーやーさん!」
「きゃっ!」
俺は休み時間になって、隙を狙ってまやさんに抱きつく。
「お肌すべすべだね。シャンプーとか何使ってふぐわっ!!」
「懲りずによくもそんな行為を…!」
まやさんの拳が俺の顔面にめり込んだ。
「あ、愛ゆえに…」
「そんな愛は要らないわよ!!」
「俺の愛情表現駄目!?」
「駄目も何も、社会的ルール違反よ!!」
「でもまやさんを見ると…」
「親衛隊!! こっちに変態がいるわよ!!」
せっかくまやさんとトークをしていたのに、佐久間智美が親衛隊を俺のところまで呼ぶ。
「うわあまたか!!」
親衛隊が俺のことを追いかけ、それを佐久間智美はニヤッと笑ってみていた。
くそう…あの性悪女め…
俺は同好会室へと退散する。
そう、この部屋には異様な負の黒いオーラが漂っているからか、親衛隊も近づかないのだ。
「ふう…」
「やぁ今日も災難だったね」
「おうオタとゴリ」
部室にはオタとゴリがいて、オタは大画面でエロアニメを見て、ゴリは男がモテる秘訣って雑誌を読んでいた。
「そういやゴリ、弁当忘れてたんだよな」
「お、そういやそうだな」
「お前の妹さんが持ってきてくれたぞ」
「晴子がか。助かったぞ」
ゴリは俺が差し出した弁当を受け取り、早弁し始めた。
「お前の妹、全然似てないな」
「ふん、可愛いだろう」
「まぁな」
「いや、妹は義理の妹に限るね」
オタは熱弁し始める。
「リアル妹なんて僕は嫌だよ。二次元か、義理じゃないと僕は認めない!」
「俺の妹ディスってんのか?」
ゴリが怖い目をしてオタを睨みつける。
「い、いやそうじゃなくて、一般的な妹の話を…」
「真の漢たる者、家族に優しく、だ」
オタはチキンなのか、ゴリに睨まれて言い訳をし始める。
そんな光景を見て俺ははぁと溜息をつく。
「…何だかな」
俺はアテもなく廊下に出ることにする。
「あ」
そこでバッタリとクラス委員長の青島裕子と出くわしてしまった。
「えーっと」
「し、失礼しました~~~!!」
何故か逃げるようにその場を去っていく。
その際に、キーホルダーを一つ落としてしまっていたのに、彼女は気が付かない。
「おーい!」
俺は叫んだが、彼女にはもう届かなかった。
「あーとりあえず渡しに行くか」
俺はキーホルダーを拾い上げ、教室へと向かった。
教室に入ると、男子からはまた奇異な目で見られ、女子からは敵意丸出しの眼で見られる。
…このクラスで1年間とか地獄だな。
だが、そんな目なんて気にしてはいられないので、俺は委員長に近づいた。
「委員長」
「ひっ!」
びくっとして俺から5メートル以上の距離を取る。
「いや、そんな怯えなくても…」
「ひいっ!」
俺が一歩近づくと、三歩ほど遠くへ逃げる委員長。
「あの用事が…」
「すいませ~~~~~~ん!!」
委員長は耐えきれなくなったのか、とうとう教室の外まで逃げていった。
こうなったら追うしかない。
「待ってくれ委員長!!」
俺は大急ぎで廊下に出て委員長を追う。
「俺の話を聞いてくれ~~~~~!!」
「怖いです! 怖いぃ~~~~!!」
委員長は完全に怯えていて、言葉が耳に入っていないようだ。
「俺は怖くないよ! 怖くないから!」
「信用できないです~~~!!」
委員長は意外に足が早く、俺との差は縮まらない。
「俺を信用してくれよ~~~!!」
「無理です~~~~!!」
「お前は柊和人!?」
「げっ」
そんなとき、親衛隊に俺の姿が見つかってしまったらしい。
「まやさんだけでなく、別の女にもセクハラしてるとは!!」
「ち、違…」
「問答無用!!」
「うわ~~~~!」
俺は逆方向に走る羽目になった。
親衛隊め…まさかまた佐久間智美が…くっ!
なお、彼女は全く関係無かったりする。
「おおっ!!」
俺は何かに躓いて転んでしまう。
「いてて…」
「追い詰めたぞ柊和人」
「げげっ!」
そして親衛隊が俺を囲む。
「ぼ、暴力は反対…ぐはっ!」
俺はこうして親衛隊にボコボコにされる。
だ、だが俺はあきらめないぞ…まやさんも! キーホルダー渡すことも!!
昼休みは終わったが、まだ放課後がある。
放課後、真っ先に俺は委員長の元へと向かう。
「委員長!」
「ひいっ!!」
「今度は一発アウトぉ!?」
委員長は俺に話しかけられるだけで縮こまって逃げてしまった。
「ま、待ってくれよ!! あ、まやさんさよーならっ!」
しっかりとすれ違ったまやさんにも挨拶をして、俺は委員長を追う。
「あなた、何を!?」
「ゴメンまやさん! 今はそれどころじゃないんだ!」
「今度は委員長にセクハラしてんの!?」
佐久間智美にも何か言われたが、釈明している場合じゃない。
俺は全力で委員長を追う。
今回はきちんと計画を立てた。オタと共に。
オタはどうしようもない変態なオタクだが、頭はすこぶる良い。
「いいんちょ~~~~~!!」
「こ、来ないで~~~!」
「ちょっと話聞くぐらいしてよ~~~~~!」
俺と委員長の追いかけっこは長く続いたが、オタのおかげで、委員長を追い詰めることに成功する。
なお、委員長は現在屋上にいる。
「へっへっへ…さぁて追い詰めたぜ委員長」
「ウウ…」
委員長は泣きそうな顔で俺を見る。
「だから俺は変なことはしな…ぐおっ!」
「また不埒な真似をしていると聞いて」
「あ、あなたは…」
屋上に来ていたのは、転校初日に、俺をボコボコにした渚佐和子風紀委員長だった。
「女の子の尻を追いかけ回すなど、紳士にあるまじき行為!」
「いや、これには訳が…」
「ほほう…」
「いや、その…」
「問答は無用か?」
「あ、一つだけお願いを…」
俺はこの人から逃げきれないと悟り、一つだけお願いをする。
「出来るだけ優しく…あと攻撃するなら左半身を!」
「二つじゃないか! 軟弱者めっ!」
とは言いつつ、俺の左半身に蹴りを入れてくる渚先輩。
「ぐうっ!」
俺はその場に蹲る。
「何か言うことは?」
「パンツは白…なんすね…」
「は、破廉恥な~~~~~!!」
俺はさらなる追加攻撃でボロ雑巾にされてしまった。
「はぁっ…い、痛ぇ…」
「貴様。一つ質問に答えてもらおう」
渚先輩は真剣な顔で問いかける。
何だろう、どういう死に方が良いか、かな?
そ、それは勘弁して欲しい…
「そんなにボロボロな格好なのに、右腕の方は妙に綺麗だ。何でだ?」
「え?」
予想外の質問に俺は頭にハテナマークを浮かべる。
「右腕を庇っているかに見えたが、何か問題あるのか?」
「そ、そういうことは蹴る前に訊いて」
「うるさい」
「す、すいません」
俺は平謝りする。
「ん? 何か握ってるな? 何が入ってる?」
「えっ!? こ、これは…その…」
俺は無理やり右手をこじ開けさせられた。
「い、イタイっす! イタイイタイ!」
「軟弱者めっ。耐えろ」
「んな無茶な」
そうして俺の手から出てきた一つのキーホルダー。
「あ!」
それを見て委員長が小さく叫んだ。
「どうした青島。このキーホルダーがどうかしたのか?」
「そ、それは…」
委員長が言い淀む。
「ま、まぁ単に俺が委員長にキーホルダーを届けようとしただけで…その…」
俺は恥ずかしくなってそっぽを向く。
「そのキーホルダーを私に返しに来たってことですか?」
「え? ま、まぁな」
「…」
渚先輩がそれを見て黙りこむ。
「ご、ごめんなさい! 私てっきり…」
「ああいいよ謝んなくて。俺も勘違いさせる迫り方したしね!」
女の子に謝らせるのはいけないことだと俺は思っている。
「で、でも…柊君をこんなにボロボロにしちゃって…」
「それについては私も謝ろう。私も普段のお前の行いから誤解していた。悪かった」
渚先輩も俺に頭を下げる。
「い、いやそんな…」
「だがお前にもやり方はあると思うぞ。別の人間に渡してくれって言えばいい話じゃないか」
「おお! そんな手もあったのか!」
「…はぁ。何だかいろいろな意味でバカだな」
渚先輩に溜息までされる始末。だが、本当に思いつかなかったんだ。
どうやって追いかけるかだけを考えていた。
「ま、まぁとりあえず今回のことはこれで終わりってことで!」
「本当にごめんなさい!」
「だ、だから良いって! 俺も女の子追いかけるの楽しかったしね!」
「ひっ!」
青島さんが再び身を縮こませる。
「貴様…」
「うわっ! 退散退散!!」
俺は屋上から一目散に逃げていった。
「はぁ…でもあんなやつほとんどいないぞ。しかもキーホルダーだけは無事にすまそうと庇ってたんだ」
渚先輩は青島裕子に話しかける。
「はい。たかが他人のキーホルダーのために…」
「第一印象だけが全てじゃない、という訳だな」
「そうですね」
そんな会話が屋上で交わされていたような。
それにしても、オタの奴。別の渡し方ぐらい思いついても良かっただろうに。
「ふう…女の子が泣きそうになりながら逃げている動画、高く売れるぞ~」
オタはしっかりと動画を保存していたのだった。
―あとがき劇場―
美空「さあさあさあやってまいりました! よってらっしゃい見てらっしゃい! あとがき劇場の時間ですよー♪ 今日はまたインタビューしようと思います! 今日はこの方、2-Cのクラス委員長の青島裕子先輩です!!」
裕子「よ、よろしくお願いします…」
美空「ああ可愛いですねこの小動物な感じ!! 最高ですわー!!」
裕子「む、ムツゴロウさんみたいなことしないで」
美空「はっ、すみません。つい…今回ちょっとお聞きしたいのは、先輩の趣味ですね!」
裕子「しゅ、趣味?」
美空「ええ! 別にどんな趣味でも大丈夫ですよ! カバディとか裸踊りとか、燕返しとか!」
裕子「え、ええと…読書…です…」
美空「え? ふ、普通ですね…ジャンルはどんなのでしょうか!? 猟奇的な奴!? エロいやつ!?」
裕子「え、えっとえっと…」
美空「こんなこともあろうかと、事前にカバンの中の本を抜き取っておきました」
裕子「ええ!? か、返してー!!」
美空「さて御開帳です!」
裕子「ああああああああ!!!」
美空「裸の男と男がっ…がくっ」
裕子「きゃああああああああ!!!!」
強制終了