ラスボスとの闘い
うちの主人はマザコンである。
若い頃はマザコンの意味をよく理解していなかった。
マザコン=親を大切にする。と言うんじゃない。
その事に気が付いたのは結婚して、数年経ってからの事だった。
いや、本当は結婚当初から気付いていたのだが気付かない振りをしていただけだ。
教訓として親離れ子離れのできない人とは結婚するなと言う事を学んだ。
しかし、経験した事のないうら若き乙女がこれを見極めるのはかなり難しい事である。
そう言えば私の実家の親があんな男と付き合うな、とよく言っていた。
その忠告を聞かなかった私が悪いと言ってしまえばそれまでだが。
だいたい、若い頃の恋愛と言うのは想い人の事しか見えなくなる。
正に恋は盲目とはよく言ったものである。
愛する人の小さな欠点も愛しく思えてしまうもの。
親より恋人を選んでしまう乙女には何を言っても耳に入らないって事。
その結果間違った道を進んでしまうのだ。
言う間でも無く、私もその一人だ。
子離れのできない義親と言うのは、嫁から見たら、鬼若しくはラスボスにしか見えない。
結婚して、妊娠すると、少しづつラスボスの頭角が見えてくるようになる。
つわりのひどかった私のため、主人は夕食を作ってくれたり、お風呂掃除などの雑用をしてくれていた。
ここだけ聞くと、いい旦那じゃないか、と思われるだろう。
うん、いい旦那だ。
旦那はだ。
ある日、実家の母親から電話がかかってきて、おぞましい話しを聞きました。
ラスボスが私の実家に抗議の電話をしてきたらしいです。
『うちのゆうちゃん(旦那の名前は佑哉です)は仕事して疲れて帰ってきてるので、家の事なんてやらせないでください。つわり?そんなの知りません。怠けるための口実ではないのですか?うちの娘はつわりなど無く子供が産まれる直前まで働いていましたよ』
そんな内容だと聞きました。
さすが、ラスボスです。
それから、私とラスボスとの闘いが幕を開けたのです。
子供達が産まれた後もラスボスとの闘いは続きます。
子供達が産まれてからの方が、白熱した闘いになってきました。
ラスボスにとって私の子供達は内孫になるはずなのに、自分の娘の孫を猫可愛がりします。
まぁ、それは人間なので仕方の無い事なのでしょう。
ですが、子供達の心を傷つける方法だけはしてほしくありません。
例えば、ラスボスはサーカスや舞台を家族全員で見に行こうとよく誘ってきます。
その際、ラスボスの娘一家はS席で、私達家族はB席です。
その時たまたまじゃないかと思われるかもしれませんが、毎回の事です。
ラスボスの娘一家は隣の県に住んでいるのですが、その外孫達の誕生日には数万円もする果物とプレゼントを持っていくのですが、うちの子供達の誕生日は毎回忘れてます。
ラスボスは数年前に舅と他界したので、今は一人で気楽な生活を送っています。
料理も上手、話も上手なラスボスはスナックを経営していて、これが大繁盛。
私には不思議としか思えないのですが、ラスボスは男の人にモテモテです。
ラスボスは私の家のすぐ側に住んでいるので、余計に私の主人はラスボスから離れる事はできません。