2日目 ~ひとまず酒飲もう~
「ほら、これでも飲んどけ」
「ありがと・・・」
預り所消滅という衝撃の事実発覚から数分後、ルドの町中央にある一番大きな酒場で浩平と奈々美は酒を煽っていた。
なぜ酒場で酒を飲んでいるのかと言うと、現実逃避と言う意味合いもあるがひとまず話をしようと言うことになったのが大きな理由だ。
「で、だ。俺たちがゲームの世界に来てしまった、ここまではいいな?」
「いいわ」
「体もステータスも装備もゲームキャラのままだから冒険をすることに問題はない。これもいいよな?」
「まぁ、比較的Lv高いものね、あたし達」
「ただ、戦闘に置いて1つだけ不安な事がある」
そう言いながら、浩平はさっき頼んでおいたイーゼルピッグの干し肉をつまみつつ、人差し指を奈々美の前で立てて見せる。
「俺たちは果たして“攻撃”・・・すなわち、“モンスターを殺す”と言う行為を、あっうまいなこれ・・・行うことが出来るのだろうか」
「あぁ、ここはゲームじゃないものね」
「そう。モンスターならまだしも、この世界には戦争もあり得るし悪党だっている。そんな奴らに、少し固めだな、この肉・・・襲われた時、俺たちは本当にそいつらを斬ることが出来るんだろうか・・・」
「確かに・・・人型を斬るのは抵抗があるわね・・・」
「そうだよな・・・それに恐らく死んだら人生ゲームオーバーだろ?さすがに無茶な戦いは出来ないよな・・・あ、ビールおかわりで!」
「店員さん、あたしももう一杯!・・・そうよね。蘇生なんて無いもんね・・・」
「おい」
「何よ」
「何さらっと2杯目頼んでるんだ?一文無しの女冒険者さん?」
「いいじゃない、別に。浩平が払うんだし」
「誰が全額俺払いだといった!?」
「あたしが言った」
「横暴な!」
浩平の悲痛な叫び声と共に届いた2杯目のビールを飲みながら、2人は話を戻す。
「とりあえず、当面の課題はななみんの金銭面な?あとは生活を慣らすことかな」
「異論はないわ。ならまだ外も明るいし、狩りでも行く?」
「そうだな。雑魚モンスター狩りで感覚を掴もうか」
「ついでに宿代くらいは確保したいわね」
浩平がお代を机に置くと、店員に一言だけ声をかけて2人は酒場を後にした。
そして、町の南門に向けて歩き出す。
ルドの町の周辺は方角によって大まかなモンスターの強さが分かれている。
北門の外は強いモンスターが多く地形も険しい。
それに比べ南門は比較的穏やかで気性の荒いモンスターは少ない傾向にある。
2人の好みで言えば完全に北門なのだが、今回は万が一も考慮し南門に行くことにしたという訳だ。
「本当にモンスターと戦えるかな・・・」
「確かにね。武器を持つのも違和感があるし」
「遭遇したらどうすればいいんだっけ?走って近寄ればいいのか?それともゆっくり近づくのか?」
「んー、ゆっくり近づけばいいんじゃない?」
「コマンドとかないんだよな・・・」
「そもそもターン性じゃないだろうしね」
不安を口にしながらどう戦おうか意見を交わす。
そして、南門の門兵に挨拶を返し門の外へと足を踏み出した。
戦闘に不安しかない現状、2人は今回の標的をこの辺りで一番弱いイーゼルピッグに狙いを定めていた。
イーゼルピッグであれば攻撃も突進が中心で単調だし、外殻もないので攻撃も入りやすい。
腕試しにはもってこいな相手だろう。
街道を歩きながら左右の林の中に獲物がいないか確認していく。
5分ほど歩いたところで、、浩平が何かに気付いて立ち止まった。
背中に背負った大剣に手をかける。
奈々美も少し遅れてそれに気付き、腰に下げた剣の柄に手を置いた。
「おい、アレ・・・」
「えぇ、あたしも見えたわ。ヤガルファング、ね」
「ヤガルファングの討伐難易度はB+だったな」
「討伐報酬もそこそこ良いけど、皮の値段が確か良かったわよね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人が目線を合わせる。
それはつまり、2人の考えがまとまったという事で・・・。
「「金蔓だ(ね)!」」
直後、ヤガルファングに2人の鬼が襲い掛かった。
皆さんお気づきかもしれませんが、この話ちょくちょく
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