第9話 剣聖
慎也は早くも自分が小一時間ほど前に言った言葉を後悔していた。
普通の道を1時間歩くなら分けないのだが山を越えるとなると話はまた別だった。
「山越えるなんて聞いてないぞミーナ…」
息を切らしながら必死に登る慎也の隣をふわふわと浮いているミーナに問いかけた。
「いやー慎也さん知ってて言ったのかなーと思って」
「俺が別世界の住人だったこと知ってて言ってるのかよお前」
「はい!」
ミーナは笑いながらそう言うと飛ぶのを止めて歩き始めた。
「なんで飛ぶの止めたんだ?」
「もうすぐ頂上ですから」
「まじか!」
慎也はその言葉を聞くとさっきまではだらだらとだるそうに歩いていたのとは一変急にちゃんと歩き始めた。
「まだ元気残ってるじゃないですか」
「これはラストスパートだよ!」
ミーナは呆れたのか何も言わなくなった。
それから無言で5分程登っていると遂に山の頂上へと着いた。
「やったぁぁ!着いたぁぁ!」
慎也は山の頂上でそう叫ぶと地面に寝転がった。
上を見ると凄く青く澄んだ空が広がっていた。
「向こうの世界じゃ考えられないな…」
慎也はしばらくの間感傷に浸っていた。
「そう言えばファステリアスってどんなところなんだ?」
「そーですねー料理が美味しいのと絶対的防御力の壁で覆われている街ですかねー」
その時慎也はふとクレサス見たいな人が居ないか気になった。
「誰か強い奴とか居ないのか?」
ミーナはしばらく考えると1人の名前を出した。
「剣聖と呼ばれる人なら居ますよ確かスイスでしたっけ?名前は忘れちゃいました。」
慎也は心の中で国かよと思いつつもどれ程の実力なのかが気になった。
「剣聖ってどれ程の実力なんだ?」
ミーナは歩きながら話しますと言うと歩き出した。慎也はそれに応じミーナの後をついて行った。
「剣聖と言う称号はこの大陸では5人しか居ない凄い人達ですよ」
この広い大陸にたったの5人しか居ない事に衝撃を受けつつも慎也はますますその称号に興味が湧いた。
「クレサスさんもその1人なのか?」
「あの称号は貴族生まれの方しか貰えないのでクレサスさんは貰えないんですよ、実力はあるんですけどね…」
「身分か…」
慎也はこの世界でも差別がある事にそれほど驚きはしなかった。
「そう言えば彼はファステリアスの守護神とも呼ばれてるらしいですよ」
そう言うとミーナは歩くスピード上げた。上を見るとさっきまでの晴れ空は嘘のようにどんよりとした雲が空を覆い今にも雨が降りそうだった。
「とりあえず近くにあるカラリア村まで転移しますか」
「そうだな…悪いなミーナ」
ミーナはいいですよと言うと慎也の手を持ち呪文を唱えた。
気がつくと小さな村に転移していた。
「とりあえず宿を探しましょう慎也さん」
「そうだな」
そう言うと村の人々に宿の場所を聞いて言った。
すると1人の男性が宿まで案内してくれた。
「ありがとうございました!」
慎也とミーナは男性に礼を言うと宿へと入っていった。
続く