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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5章:マスターと依頼

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71.第7階層 頑強なる防壁と秀麗なる剣技

『主君、この階層は実戦経験が無ければ難しいかと存じます。』


 第7階層を1km程進んだところで、ローディアスがそう言った。


「実戦経験? 相手が強いのか?」

『強いのは勿論ですが、動き方が……』

「どんな奴だ?」

『メイルソルジャーとメイルガーダーでございます。』

「聞いたことがないな。何となく名前で想像は付くが、一応説明を頼む。」

『お任せください。メイルソルジャーは革鎧タイプのリビングメイルと剣タイプのソードブレイカーが合体したもので、剣術武技を使用してきます。動きが素早く、Cランクの剣士とほぼ同じ動きができるかと思われます。対して、メイルガーダーは金属鎧タイプのリビングメイルと盾タイプのソードブレイカーが合体したもので、盾術武技を使用してきます。こちらは鈍重ですがその分頑強であり、討伐が困難を極めるモンスターとして名が売れております。』

「成程、それで実戦経験が要ると。」


 俺はそう言うと、溜息を吐く。メイルソルジャーの方はヤスパースでヨーゼフさんに斬りかかったグレイスとかいうバカ剣士と同じレベルだからまだいけるとは思うが、メイルガーダーのように盾を使う重戦士と戦った経験は無い。そっちの実力は未知数だ。


「ユリアさんはそういう人間と戦ったこと、ありますか?」

「たまにジャックさんたちに模擬戦をして貰うことがあったので、一応経験はあります。でも、あくまで模擬戦ですから……」

「戦ったことがない俺よりはマシでしょう。じゃあ、ソルジャーとガーダー、どっちの方が得意ですか?」

「リチャードさんが戦いにくい方を私がやります。」

「あ、じゃあ、ガーダーの方をお願いします。」


 俺はそう言うと、ローディアスをチラッと見る。ローディアスは頷くと、


『話はまとまったようですので、案内を続けさせて頂きます。』


 と言って、俺たちの先導を続けた。



「【ウィンドスラッシャー】!」


 深さ62。俺の呪文に呼応し、半月状の風の刃がヒールフレイムの杖から飛び出す。それは受け止めようとしたメイルソルジャーの長剣をあっさりと砕き、そのまま革鎧の方までぶった斬った。


「短剣術武技Lv3スキル、【高速斬撃】!」


 ユリアはそう叫ぶと、短剣でメイルガーダーの腕を斬りつける。そして少し怯んだところで、


「剣術武技Lv2スキル、【ブリングダウン】!」


 と叫んでシルバーソードに持ち替え、両腕を叩き斬った。そして、地面に落ちた盾と腕を失った金属鎧をそれぞれ1度ずつ突き刺して始末する。


「この調子ならもうちょっといけるかな。」


 俺はそう言うと、ダンジョンの奥に向けて神秘の破砕銃を撃つ。そして、何もいないことを確認し、ローディアスに案内を続けさせるのだった。



「んー、何か釈然としないんだよな……」


 俺はドラゴンスレイヤーとヒールフレイムの杖で、迫ってくるメイルソルジャー2体の長剣と短剣を受け止めながらそう呟く。今いるのは深さ66であり、少し強くなっていてもいいような気がするのだが、そこまで強くなっているようには思えない。それに、1つの深さにいるのはせいぜいソルジャーとガーダーが2、3体程度で、ほとんどただの通路と変わらないのだ。


「多分また最深部にボスパターンだろうな。第3階層もローディアスが移動しなければそういう状態だった訳だし。」


 俺はそう言いながら、長剣を持っている方のメイルソルジャーに蹴りを入れて距離を取ると、もう1体が持っている短剣を杖で弾き飛ばし、革鎧を斬る。そして、長剣を持っていた方には神秘の破砕銃で聖の弾丸を打ち込み、跡形もなく消し飛ばした。そして、ユリアはと見ると、


「キャアアアアアアー!」


 盾を構えた2体の金属鎧に追いかけ回されていた。


「リチャードさん、助けてください!」

「防御特化型モンスターに、何をどうやったら追い回されるという結果になるんですか?」

「盾が硬くて斬撃が通らなかったんです! それで、挟み込まれて……」

「本当に説明するんですね。求めてなかったんですけど。」

「だったら疑問形にしないでください! あと、早く助けてください!」

「分かりました。」


 俺はそう言うと、異次元倉庫から黒迅の魔槍を引っ張り出し、壁走スキルを使用。壁を走って横からユリアとメイルガーダーの間に割り込み、盾ごと2体の金属鎧を貫いた。そして、


「槍術武技Lv2スキル、【フォール】!」


 と叫んで槍を持ち上げ、地面に叩きつける。その衝撃に耐えきれなかったらしく、メイルガーダーはバラバラになった。


「ユリアさん、怪我はありませんか?」

「大丈夫です。助けてくださってありがとうございます。」

「いえ、この位は。」


 俺はそう言うと、黒迅の魔槍を異次元倉庫にしまう。そして、


「ユリアさん、このパターンだとこの階層最深部にも強いモンスターが控えているはずです。2体いた場合、どっちを相手にしたいですか?」


 と聞いた。


「リチャードさんはどっちが良いですか?」

「俺はどっちでもいいですよ。ユリアさんが好きな方を選んでください。」

「えっと、じゃあメイルソルジャーの方で。」

「メイルソルジャーですね。分かりました。じゃあ、この下からはユリアさんがソルジャーの相手をしてください。ただ、怪我しないようにしてくださいね。腕1本ぐらいなら治癒は可能ですけど、魔力消耗が激しくなるので。」

「はい。」

「じゃあローディアス、続き。」

「はい。どうぞこちらへ。」


 ローディアスの案内に従い、俺たちはまた進み始めるのだった。



 そして辿り着いた深さ70。これまでと特に瘴気の濃度は変わりない。だが、空気が違う。どこか粘つくような、肌に纏わりついてくるような、嫌な感じだ。


「この空気、瘴気とも邪素とも違うな。それでいて暗黒の気配か……」

「り、リチャードさん、怖いこと言わないでください……」


 身震いするユリア。恐怖耐性があるならこの位には耐えて欲しいのだが、それは無理らしい。


『主君、これは盾術技能の【暗黒防御】でございます。』

「盾術技能? 武技とは違うのか?」

『名前からして違うではありませんか……』

「無知ですまんな。教えてくれ。」

『お任せください。武技は武器使用スキルの術技レベルに応じて使用できる技。それに対し、技能は独自に身に着けるものでございます。』

「成程。レベルとは関係ないのか。」

『はい。』

「よし、よく分かった。」


 俺はそう言うと、


「ところで、この深さのモンスターはどんな奴か分かるか?」


 と聞く。


『この階層はメイルソルジャーとメイルガーダーが1体ずつです。強さは桁違いかと思われますが。』

「このダンジョン、第3階層からずっとそうだよな。なんでそうなってるんだ?」

『途中までに多くモンスターを配置し、それらの相手をして疲弊している所を襲わせる、という戦法なのです。まあ、主君のように回復力の高い者に対しては自滅としか思えませんが。』

「第3階層で待ってりゃいいのにノコノコ出てきて自滅したお前みたいだな。」

『そ、それは不可抗力でございます!』

「どこが不可抗力なんだよ。まあいいけどさ。」


 俺はそう言うと、ローディアスに案内を続けさせた。



「お、いたいた。」


 案内に従ってしばらく進むと、前に金属鎧が立っているのが見えてきた。右手には盾、左手には剣を持っている。そして、その隣には革鎧が倒れていた。俺は鑑定してみる。


メイルガーダー ランクC-

名前:ボウヘキ

保有魔力:24389/100000

称号:頑強なる守護者(防御行動の防御率中上昇)

スキル:盾術(盾術武技を使用可能とするスキル)

    暗黒防御(暗黒の空気を魔力と引き換えに噴出させるスキル)

状態:剣装備

体力:8000

魔力:5000

筋力:4000

耐久:9000

俊敏:980

抵抗:4500



 なかなかの能力値だ。だが、気になるのは隣に倒れている革鎧。仲間割れでもしたのだろうか。まあ、敵が減ってラッキーと思うべきなのかもしれないが。


『ガシャガシャ!』


 そんなことを考えているうちに、ボウヘキが動き出した。こちらに向けて盾を突き出してくる。その瞬間、盾から衝撃波が出た。防御する暇はないので、咄嗟に腕をクロスさせ、バックステップをしてダメージを少なくする。あの技は【シールドバッシュ】だな。


『ガシャガシャ!』


 次に奴は剣を構えた。そしてそれに虹色の燐光を纏わせ、切っ先をユリアに向けた。恐怖からか、ユリアは動けずにいる。恐らくあの構えはマッキンリースライスだ。避けなければバラバラにされる。


「クソッ、やるしかないか!」


 俺はそう言うと、疾走を発動させてユリアに接近。そして、スピードを落とさずにユリアを片手で抱き上げ、跳躍。その瞬間、奴が剣を振り、マッキンリースライスの効果が発動。しかし、虹色の光線は何もない空間を通り過ぎて行った。


「間一髪でしたが、間に合ってよかったです。」


 俺はボウヘキの後ろに着地すると、ユリアを降ろしてそう言い、返事を待たずにドラゴンスレイヤーで斬りかかった。しかしそれは、素早く振り返ったボウヘキの盾に阻まれる。そこで俺は【ブリングダウン】を使用してもう一度斬る。しかし、これも阻まれた。よく見ると、奴の盾が薄く光っている。


「【鉄壁】か……」


 俺は吐き捨てるように言う。鉄壁は相手の攻撃を1回だけ必ず防御できるという盾術武技だ。ブリングダウンを阻めたのは、この武技のおかげだろう。


「リチャードさん、どうにかしないと……」


 ユリアがシルバーソードで斬りかかりながらそう言う。因みに、シルバーソードも盾に阻まれ、鎧の方には届かない。


「しかし、盾で完全防御されるんじゃ……ん? そうか、盾で阻まれなければ問題ない!」


 俺はそう閃いた。盾で阻めない攻撃をすればいい。


「じゃあこれだ!」


 俺はそう叫ぶと、第6階層でモウシンから奪った技能、【炎剣】を発動させる。そして、更に炎属性を付与して斬りかかった。


『ガシャガシャ!』


 奴はどうせ盾で防御できると思っているのか、ユリアのシルバーソードを剣で受け止めながら緩慢な動作でこちらに盾を向ける。しかし、そんなものは障害にもならなかった。


「せいっ!」


 俺がそう叫んでドラゴンスレイヤーを振ると、その炎の刃はまるでバターを斬るかのようにあっさりと盾を両断。俺はそれでも油断をせずに連撃を加え、金属鎧をバラバラにした。


「よし!」


 俺は勝利を確信し、喜びの声をあげる。しかし、これで終わりではなかった。


「なっ?」


 奴が持っていた剣が突然フワリと浮かび上がり、革鎧の手元に行く。すると、革鎧の方がその剣を握りしめて立ち上がったのだ。


「そういうことか……この剣が本体で、革鎧の方はただの鎧……」


 俺は苦虫を噛み潰したような顔で呟く。恐らくメイルソルジャーやメイルガーダーというのは、合体したときに保有魔力がカンストしている方が本体となるタイプなのだろう。故に、革鎧は本体の剣が離れている間は動けなかった、と考えれば辻褄が合う。


『シュシュシュ!』


 立ち上がった革鎧は、衣擦れのような声をあげながらこちらにかかって来た。ヒールフレイムの杖で防御してドラゴンスレイヤーを振るうが、斬撃はバックステップで躱される。


「リチャードさん、ここは私に任せてください!」


 ユリアがそう言った。それを信じて俺が後ろに下がると、ユリアはもの凄い速さでメイルソルジャーに肉薄し、目で追うことができないほどの素早さで連撃を繰り出す。しかしメイルソルジャーも黙ってやられる気は無いようで、本体の剣で応戦。激しい剣戟音が響き渡る。そして、力が拮抗し、両方の剣の動きが止まった。


『シュシュシュ!』


 メイルソルジャーの方が力を込めたらしく、ユリアが少し顔をしかめる。それをチャンスと見たのか、メイルソルジャーはバックステップし、剣を大きく振りかぶった。しかし、


「そんなぬるい攻撃は当たりませんよ!」


 と言ってユリアは壁を少し駆け上がり、宙返りしながら攻撃が空振りして無防備な剣に攻撃を加える。攻撃が与えられた剣は砕け散り、甲高い音が響いた。


「念の為、こっちも!」


 ユリアはそう言って革鎧も斬り裂く。それは音も無く地面に倒れた。


「剣の扱い流石ですね。素晴らしかったですよ。」


 俺が褒めるとユリアは、


「えへへ……もっと褒めてください!」


 とはにかんだ。


「ダンジョン攻略したらもっと褒めます。だから、今は我慢してください。」


 俺はそう言うと、ユリアの頭を撫で、ローディアスに案内を続けさせるのだった。


【死霊のダンジョン、第7階層を攻略しました。】

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