68.深さ40② 死の槍と死の一撃
『貴様、なぜ笑っている? 恐怖で気が狂ったか?』
『命乞いするなら今のうちだ。泣いて懺悔すると言うのならば苦しむ暇を与えず一撃で殺してやるぞ。』
そう言うデスランサーとネガダークネス。そいつらに対して俺は、堂々とこう言い放った。
「雑魚ほどよく喋るってのはこのことだな、バカどもが。怖さなど微塵も感じないぜ。あとそこの黒いライオン、そういうの良いから巻きで頼む。こっちは生憎それ程暇じゃないんだよ。お前らみたいな雑魚に必要以上に時間は割けねえからな。」
俺のこの言葉を聞いた奴らの纏う雰囲気が変わった。絶対に殺す、という殺気が感じられる。
「ほら、かかってこいよ。腰抜けども。来ないならこっちから行くぜ。」
俺はそう言うと、ドラゴンスレイヤーに光の魔力を込め、横薙ぎに振るう。すると、込められた魔力が三日月状になって飛び出し、奴らに襲いかかった。しかし……
『フン、そんなものが効くか!』
と言いながら飛び出してきたネガダークネスが、光の刃を受け止めた。本来は少なからずダメージが通るのだが、こいつは光属性無効の効果でダメージを受けないようだ。
『我らを愚弄した貴様には、後悔してもしきれぬほどの絶望を与えてやろう。』
そう言うや否や、デスランサーが槍を構えて突っ込んできた。もの凄い速さだ。だが、見切れない程ではない。奴の俊敏より俺の俊敏の方が高いからな。
「よっと。」
俺はそう言いながら横に避ける。すると、デスランサーは槍に魔力を纏わせ、
『槍術武技Lv25スキル、【アブソーブ】!』
と叫びながら槍でこちらを何度も突いてきた。素早い方向転換と連撃。虚を突かれた俺は咄嗟にマジックシールドを張ったが間に合わず、一撃受けてしまう。するとその瞬間、デスランサーは口元を歪め、
『かかったな! 【アディッション・ボーヴァイン】!』
と叫んだ。その途端、俺の体が倦怠感に襲われる。【鈍重】のバッドステータスを喰らわされたらしい。
『【アブソーブ】で貴様の体力と魔力を吸収し、魔術で【鈍重】を付与。更に【呪滅撃】で貴様の体力を徐々に削れるのだ。』
そう偉そうに言うデスランサー。イラつくが、俺は槍の突き傷を治すだけで、バッドステータスを解除したりはしない。できない訳ではないが、その魔術を使うとその後に0.3秒程の術後硬直が入る。その隙をあっちが見逃すはずがないからな。
『デスランサー、後は我に任せよ。一撃でトドメをさしてやる。』
ネガダークネスがそう言うと、途端に奴の身体は膨張し、6m程の体躯になった。【巨大化】スキルを使ったらしい。
『次の一撃が貴様の命の終幕……我らを敵に回したことを後悔しながら死にゆくがいい!』
そう言って漆黒に染まった前足を上げるネガダークネス。
「リチャードさんっ!」
ユリアが悲鳴のような声をあげ、
「剣術武技Lv3スキル、【ソードブーメラン】!」
と叫びながら長剣を投げる。しかしそれはユリアとネガダークネスの間に割って入ったデスランサーの槍によってあえなく弾かれてしまった。
『邪魔をするな! 貴様はこやつを殺ってから相手をしてやる! 【命刈一撃】!』
そう叫び、ネガダークネスはその巨大な前足を振り下ろした。
――ズガアアアアアアアアン!
轟音が響き渡り、土煙が立ち込める。しかし、奴の前足の下に俺の姿はない。
『何だと? どこに消えた!』
そう叫ぶネガダークネス。俺はその答えを攻撃で教えてやった。
「俺はここだぜ、ライオン野郎!」
『グフッ!』
俺はそう言って、ネガダークネスの腹に炎属性を付与したドラゴンスレイヤーを突き刺す。そう、俺がいるのは奴の下。あの瞬間、咄嗟に俺は地龍の革靴によって得た【疾走】を発動させ、奴の下に滑り込んだのだ。
『な、なぜだ! 貴様には確実に【鈍重】を付与したはず! そんなに速く移動できるはずが……』
驚愕したような声で言うデスランサー。
「ん? お前、俺に鈍重付与してたのか。気付かなかったぜ。吸血鬼に血を吸われるのに比べたら、こんなの倦怠感の内に入らないからな。」
俺は余裕の笑みを浮かべ、再び【疾走】を発動させてネガダークネスと距離を取りながらそう言う。キャトルに血を吸われる時に襲ってくる倦怠感に比べたら、本当に奴が付与した鈍重による倦怠感は微々たるものだ。
『ぬうっ……貴様……デスランサーの鈍重をその程度しか感じぬとは……ガハッ!』
『大丈夫か、ネガダークネス?』
『巨大化を解除すればこの程度、問題ない! 我に構うな! お主は奴を殺せ!』
ネガダークネスは忌々しそうにそう言う。
『了解だ。』
そう言うと、デスランサーは槍を縦に構えた。妙な構えだ。
『我にも即死技はある。貴様の命、今度こそ奪ってくれるわ!』
そう言うや否や、デスランサーは地を蹴ってこちらに向かって飛ぶように突進してきた。速い。
『槍術武技Lv18スキル、【神速めった刺し】!』
そう叫び、デスランサーは槍の連撃を繰り出してきた。回避に専念したが、全てを避け切ることはできない。何発か受けてしまう。
『槍術武技Lv28スキル、【全力突き】!』
デスランサーは、今度は槍に緑の燐光を纏わせて突いてきた。何とかドラゴンスレイヤーで逸らしたが、肩に当たってしまい、そこから血が噴き出す。何とかバックステップで距離を取ったが、ダメージは大きかった。上手く腕に力が入らない。
『次で貴様も終わりだ! 槍術武技Lv45スキル、【心臓を狙う】!』
大きく叫ぶデスランサー。確かこれは自分の体力の50%を消費して放つ大技だ。技の動きは四肢を一度ずつ突き、最後に心臓を貫く、だったな。
『死にさらせ!』
そう言ってデスランサーは槍を突き出してきた。目にも止まらぬ速さで俺の四肢を突き、円錐のランスの先端が俺の血で赤く染まる。そして、それが俺の左胸に到達した。
「リチャードさん!」
ユリアは俺の左胸がランスに貫かれたのを見ると、絶望的な表情で膝をついた。俺はまだ生きてるんだが、ユリアには死んだように見えたらしい。
「ユリアさん、大丈夫ですよ。」
俺は若干呆れたような声でそう言う。
「え? り、リチャードさん?」
「俺はそう簡単には死にません。」
『なっ? この槍は確実に貴様の心臓を貫いているというのに……なぜ生きている?』
「答える義理はない。」
俺はそう言うと、
「【フレイムウォールコーティング】!」
と叫んで自らの身体を炎で包み、筋力を強化。そして、俺に刺さったままの槍を掴むと、
「自分の能力を過信しすぎなんだよ、雑兵が。自意識過剰な骸骨は邪魔なだけだ。」
と言って、槍を引き抜いた。本来は血が噴き出すはずだが、俺の左胸は無傷だ。
『無傷だと? なぜ、なぜだ!』
「心臓を穿たれる前から治癒しまくってたんだよ。残念だったな。」
俺はそう言うと、
「お前はお前の武器の技を喰らって消滅するのが本望だろ?」
と言ってランスを奪い取る。
『フッ、我の体内核を砕けるとでも思っているのか?』
「誰が体内核を狙ってるっつったんだよ。見えない移動物を狙うより、全部壊した方がずっと手っ取り早い。」
俺はそう言うと、槍の先端をデスランサーの肋骨に突き刺した。
『グハッ……』
「さあ、砕け散れ! 【インサイドクラッシュ】!」
俺はそう叫び、槍に破壊の魔術を注ぎ込む。すると、デスランサーの動きが止まった。そして数秒後、骨がバラバラになって地面に落ちる。
「……最後が地味すぎる。」
俺はそう言いつつ、ネガダークネスの方を向く。奴は怒りで目を赤くしていた。
『貴様、よくもデスランサーを!』
「命をかけた戦いで勝ったと思って油断する方が悪い。」
俺はそれだけ言うと、異次元倉庫からウィンドナックルを取り出して素早く装備。そして、奴に接近すると、思い切り顎を打ち上げた。
『グウッ……』
そう呻きながらもこちらに向けて炎を吐いてくるネガダークネス。しかし俺は無詠唱でアクアウォールコーティングを発動させていたので、熱さなど微塵も感じない。
『なぜだ! なぜ我の炎が通用せん!』
「お前が弱いからじゃないか? 少なくとも邪に囚われているお前は、真の強さを引き出せるコンディションじゃないだろ。」
『クッ……』
「さあ、お前も終わりだ! 清き光よ、邪を祓え! 【クリーナップストライク】! 併せて、体術武技Lv4スキル【発頸】!」
俺はそう叫びながら手の平を突き出した。それはネガダークネスにクリーンヒットして、軽く5m程吹っ飛ばす。吹き飛んだネガダークネスは地面に体をしたたかに打ち付け、呻くと意識を失った。と、その時。奴の身体の色が徐々に変わり始めているのに俺は気付いた。漆黒だった奴が、純白になっていく。そして、完全に純白に変わると、奴は目を覚まし、起き上がった。そして、
『人よ、我の暴走を止めてくれたこと、感謝する。』
と俺に言ってきた。
「別にお前の為にやったわけじゃない。俺は進む為に障害だったお前をぶっ飛ばしただけだ。いや、正確にはお前に憑いていた邪素を、だがな。」
『それであっても我は助けられたと思っている。ところで、これはほんの好奇心なのだが……人よ、名は何と言う?』
「俺はリチャード・ルドルフ・イクスティンクだ。」
『リチャード、か。我が名はレオライトニング。種族はグリフォンだ。』
「お前、元から名持ちだったのか。」
『うむ。それはそうとリチャードよ、あの少女をなぜ我らとの戦いに参戦させなかった?』
「ユリアさんのことか。彼女は俺が参戦させなかったんじゃない。自らができることを考えて、参戦しなかったんだ。ですよね?」
そう聞くと、ユリアは頷いた。
「はい。私も援護しようとは思ったんですけど、今回みたいな人外レベルの戦闘の場合、私みたいな弱者は足手纏いになるだけです。」
ユリアのこの答えにレオライトニングは大笑いした。
『ハハハハハ! リチャードよ、汝は人間ではないと言われておるぞ! 滑稽なことだ! ハハハハハ!』
「え? そ、そんなこと言ってませんよ!」
『ハハハハハ! ユリア、だったか? お主が言ったではないか! 『人外レベルの戦闘』と! ならばお主はリチャードが人間ではなく、人外の者だと言っていることになる!』
「あっ……り、リチャードさん、今のは……」
「大丈夫ですよ、ユリアさん。俺はどうせ人外ですから。ハハハ!」
俺は笑いながらユリアにそう言った。
『まあ、それはそうとリチャードよ。我は汝に救われた。礼をさせて貰う。』
そう言って、レオライトニングは爪で自らの指先を切り、そこから滴る血を俺に寄越した。
「これをどうしろ、と?」
『飲め。』
「何でだ?」
『我が血液を飲んだ者は、我と繋がりを持つようになる。その繋がりは決して切れぬものなのだ。』
「つまりどういうことだ?」
『汝の危機などを感じた場合、若しくは汝が我を呼びたい場合はすぐ我に伝わる、ということだ。』
「成程。俺に協力してくれるってことか。」
『然様。この程度の礼しかできぬのが辛いところだが……』
「いや、これでも十分すぎる程だ。」
『そう言ってくれるならば幸いだ。さあ、ユリアよ、お主も飲め。』
そう言ってレオライトニングはユリアにも血を差し出す。
「え? 私もいいんですか?」
『無論。リチャードの仲間なのだろう? ならばお主も我を救おうとしてくれた者であるからな。』
そう言ってレオライトニングは俺たちに血を飲ませた。そして、飲みきったのを見ると、
「では、リチャード、ユリア、また会おう!」
と言い、消え去った。俺はそれを見届けると、ソウル・ウォーサイズを取り出し、
「【サモン・エリートゴースト】!」
と唱えた。すると、ローディアスが飛び出してきた。
『主君、ご無事でしたか!』
「ああ。道案内の続きを頼む。」
『もういいのですか?』
「ああ。称号の効果でほぼ回復しきっているからな。」
『然様でございますか。』
そう言ってローディアスは進み始める。その後を追う俺の脳内では機械的な声が響いていた。
【ダンジョンマスターが槍を使用しました。槍術スキルを解放します。】
【ダンジョンマスターが槍でモンスターを撃破しました。槍術スキルを2レベルアップします。】
【ダンジョンマスターが武器を強奪しました。称号【強奪者の素質】を入手します。】
【ダンジョンマスターが邪気の浄化をしました。称号【邪を祓いし者】を入手します。】
【ダンジョンマスターが神獣と契約を交わしました。称号【神獣との契約者】を入手します。】
【死霊のダンジョン、第4階層を攻略しました。】
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:150
階層数:15
モンスター数:401
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 55体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
メディックウルフ 1体
ポイズンウルフ 1体
イルネスウルフ 1体
ハルキネーションウルフ 1体
フライングウルフ 1体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
プレデターラビット 2体
アシュラベアー 1体
キラーバット 10体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
ブルースパロー 25体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:63→85
スキル:鑑定眼(Lv5)
剣術(Lv5)
鎌術(Lv3)
槍術(Lv3)
杖術(Lv1)
体術(Lv4)
狙撃(Lv3)
疾走(Lv1)
武器造形(Lv1)
全属性魔法(上級)
念話
無詠唱
炎耐性
毒耐性
呪耐性
聖耐性
邪属性無効
地属性無効
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ヒールフレイムの杖(R、炎属性魔術と治癒属性魔術の威力上昇)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
著者コメント
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