67.深さ40 恐怖の番人
「強敵がいるって分かっているのに飛び込むのはバカのすることだと思っていたけど、まさか自分がすることになるとは……」
深さ40に入ったところで俺はそう呟いた。この深さにはゲートキーパーとグリフォンが宝の番人として配置されているらしい。ヘタすりゃ一撃でジ・エンドだ。
『主君にとっては奴ら如き、路傍の石ころでございましょう。』
「さっきまで楽天的だなんだかんだと言っておいて今更そういうこと言うな。それと、ランクDのお前が言えるのかよ、それ。」
『某は主君を激励しようと……』
「それはありがたいが、今激励してもあんまり意味無いだろ。相手の弱点とかを教えてくれた方が100倍ありがたい。そのくらい分かるよな? エリートなんだから。」
『某は頭脳面でのエリートではないと何度言ったら分かるのですか!』
「もうとっくに分かってるよ。だけど敢えて言ってるんだ。それより、弱点を早く教えてくれ。それとも、知らないのか?」
『知っております。ゲートキーパーの弱点は体内核。ですが、奴の核は直径わずか3cmで骨の中にあり、常に移動しているため、それを狙うのは至極困難かと思われます。』
「成程、弱点が変わる系なのか。グリフォンは?」
『グリフォンは個体数が少ないモンスター故、弱点は不明でございます。しかも、奴は邪素の影響を受けておりますので、通常のグリフォンが苦手とする邪属性も効かない可能性がございます。』
「うわ……マジかよ……面倒臭い……」
「リチャードさん、そこを面倒臭いですませるのはどうかと思うんですけど……」
「じゃあユリアさんはどうやって表現するんですか?」
「怖いとか……」
「怖いんですか?」
「怖くないんですか?」
「別にそれ程怖くないですけど。」
「リチャードさんって怖いものはないんですか?」
「いや、俺だって無敵って訳じゃないですし、怖いものはありますよ。」
「何が怖いんですか?」
「ティリに嫌われることです。それに比べたらグリフォンくらい、どうってことないですよ。」
俺はそう言うと、ニコリと微笑んだ。
「良いなぁ……」
「ん? 良いって何がですか?」
俺がこう聞くと、ユリアは両手をバタバタと振って慌て始めた。
「な、な、な、な、な、何でもありません! 気にしないでください!」
『ククッ、ユリア殿、そこまで挙動不審になっておいて誤魔化すのは無理がありますな。そして……』
「ローディアス、お前は黙れ。あとユリアさん、落ち着いてください。気にするなっていうなら気にしませんから。」
「本当ですか?」
「俺は嘘はほとんど吐きませんから。信用して頂いて大丈夫ですよ。」
俺はそう言うと、ローディアスに道案内を続けさせた。
そして、3km程進んだところでダンジョンの奥から何かの足音が聞こえてきた。それと共に、金属がこすれるような音と、猛獣の唸り声のようなものも聞こえてくる。
『主君、奴らです!』
「分かってるよ。」
俺はそう言うと、鑑定を発動。そして、出た結果に驚愕した。
ゲートキーパー ランクB
名前:デスランサー
保有魔力:966824/3000000
称号:殺戮上級者(相手の殺害率中上昇)
スキル:槍術(槍術武技を使用可能にするスキル)
闇魔法(闇属性魔法を使用可能にするスキル)
呪滅撃(自らが傷を与えた相手の体力を徐々に削るスキル)
スキル封印(相手のスキルをランダムで1つ1時間封じるスキル)
闇属性無効(闇属性の悪影響を無効化するスキル)
状態:正常
体力:30000
魔力:300000
筋力:5300
耐久:1380
俊敏:14000
抵抗:5000
ダークネスグリフォン ランクS
名前:ネガダークネス
保有魔力:???/???
称号:殺戮の天才(相手の殺害率大上昇)
闇に堕ちし者(闇属性の攻撃、魔術の威力大上昇)
邪に囚われし者(邪属性の攻撃、魔術の威力大上昇)
輝きを持つ者(聖属性の攻撃、魔術の威力大上昇)
呪術師(呪属性の攻撃、魔術の威力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
スキル:命刈一撃(一撃で相手の命を奪えるスキル)
全身硬化(全身を硬化させるスキル)
部分硬化(体の一部を硬化させるスキル)
睥睨拘束(相手に筋硬直を起こさせ動きを封じるスキル)
巨大化(自らの身体を大きくするスキル)
スキル封印(相手のスキルをランダムで1つ1時間封じるスキル)
邪属性無効(邪属性の悪影響を無効化するスキル)
闇属性無効(闇属性の悪影響を無効化するスキル)
呪属性無効(呪属性の悪影響を無効化するスキル)
聖属性無効(聖属性の悪影響を無効化するスキル)
光属性無効(光属性の悪影響を無効化するスキル)
状態:邪汚染
体力:???
魔力:???
筋力:???
耐久:???
俊敏:???
抵抗:???
「ネームモンスターの上にこのスキルと称号の数……これはヤバい!」
俺はそう言うと、
「ローディアス、戻れ!」
と叫んだ。ローディアスは頷くと、
『主君、ご武運を……』
と言いながらソウル・ウォーサイズに吸い込まれるように消えていった。
「ユリアさん、グリフォンの方はこちらを即死させる技を持っています。できる限り俺が守りますが、気を付けてください。」
「どっちを相手にしますか?」
「俺が前に出て、魔力を充填しつつ戦います。ユリアさんは援護を。それで、きつくなりそうだったらゲートキーパーの相手をお願いします。」
「分かりました。」
「じゃあ、仕掛けます。」
俺はそう言うと、神秘の破砕銃を取り出し、引き金を引きながら、
「狙撃武技Lv3スキル、【ローリングシリンダー】!」
と叫んだ。回転式弾倉が高速で回転し、次々に聖の弾丸が射出される。そして、炎や氷、地などの属性魔術が相手に当たった瞬間に炸裂。俺は手応えを感じたが、そんなものはすぐに消え去った。
『先に仕掛けるとは、珍しく気概のある人間のようだな……』
そう呟きながら奥から出てくるのは、巨大な円錐形のランスを持った漆黒の骸骨。今までのモンスターとは明らかに違うオーラを放っている。
『宝を奪う者は何人たりとも許さん。その罪、死を以て贖うがいい……』
続いて出てきたのは、漆黒の身体を持った有翼のライオンだ。グリフォンというから上半身はワシだと思っていたが、どうやら見当違いだったようだ。
『貴様らの命はここで尽きるのだ。』
『さあ、死にたい者からかかってくるがいい!』
恐ろしいセリフを発する2体のモンスター。これはちょっと本気を出さないとヤバそうだな。そう思った俺はドラゴンスレイヤーを取り出すと、それを構えて攻撃態勢を作る。そして、
「ユリアさん、これから敵を挑発して敵意を俺に集めます。奴らは俺にしかかかってこないでしょうから、援護をお願いします。」
と言い、奴らに向けて不敵な笑みを浮かべるのだった。




