61.深さ16 冒険者の成れの果て
『ん? この気配は……』
深さ16に入った瞬間、ローディアスがそう声をあげた。
「どうした、ローディアス?」
『この奥から普段はこの深さにいるはずの無いモンスターの気配がいたします。』
「どんな奴だ?」
『ここで死んだ冒険者どもの成れの果てにございます。』
「それは本来この深さにはいないんだよな? じゃあ何で?」
『申し訳ありません。恐らく某が動いたことが原因かと……』
「お前何してくれてんだよ……余計なもん引っ張ってきやがって……エリートの癖に……」
『し、仕方ないではありませんか! 某は元々このダンジョンのモンスターなのですから! それに、エリートゴーストのエリートは戦闘面においてのエリートであって、頭脳面においてのエリートではないのです!』
「ただの鎌の横薙ぎでぶった切られたお前が戦闘のエリートだとはとても思えないんだが。」
『それは主君が規格外だからでございます!』
そんな感じで俺たちがギャーギャー言い合っていると、通路の奥から何かが近付いてきた。姿はよく見えないが、フラフラとよろめくような歩き方で、少し頼りなさげな印象を受ける。
「ユリアさん、なんか来ましたね。」
「はい。フラフラしてますね。何でしょう?」
「おい、ローディアス。アレが何か分かるか?」
『アレですか? 少々お待ちください。』
そう言ってローディアスは目を凝らすような仕草をし、
『アレはグールでございます。ここに来た冒険者の亡骸に瘴気が憑いてモンスター化したもので、戦闘力は個体差がありますが、我と同じかそれ以下です。』
と答えた。
「グールか。分類上は瘴気系に入るモンスターだったな。強さもお前と同じかそれ以下ってことは、雑魚か。」
『……確かに、主君の強さから見れば、某など部屋の隅の埃も同然ではございますが、それはあくまで主君を基準として考えた場合。グールはCランク冒険者と互角程の力を持つ者もいますから、油断は禁物かと存じます。』
「Cランクか。なら大丈夫だ。ユリアさんでも勝てるんじゃないですか?」
「え? 私ですか?」
「ええ。」
「うーん……多分大丈夫だと思います。」
「じゃあ、お願いします。」
「はい。」
ユリアはそう言うと、シルバーソードを抜いて前に出た。
『主君、あの少女はグールと戦うのが初めてなのでは?』
「初めてだろうな。俺も戦った事は無いけど。」
『でしたら、主君は万一の為、いつでも魔術を放てる準備をしておかれた方がよろしいかと。』
「何でだ?」
俺はそう言いながら前を指差す。そこでは、丁度ユリアがグールの首を刎ねたところだった。
「ほら、勝ったぞ。」
『やはり、グール討伐初心者がやりがちなミスを……』
「ミス?」
『グールというのは仲間の体液に引き寄せられる習性があるのです。故に、うっかり体液を撒き散らしてしまうと……』
ローディアスが言い終える前に、大量の足音が聞こえてきた。奥からグールが湧くように出てくる。
『こういうことになります。』
「お前、そういうことは先に言えよ。ほんと使えないな。」
『主君、某の悪口を言っている場合ではありません! 仲間の体液を感知したグールは凶暴性が増しているのです! あの少女の実力では抑えきれません!』
「はあ……仕方ない、やるか。」
俺はそう言うと、ドラゴンスレイヤーを構え、
「ローディアス、このダンジョンにいるグールは全部で何体だ?」
と聞いた。
『300体でございます。ほぼ全てがここへ向かってきているかと。』
「300体か……問題になるほどの数じゃないけど、思ってたより多いな。」
そう呟いてユリアの方を見ると、彼女はシルバーソードを構えてグールの群れに斬りかかろうとしていた。
「ユリアさん、足止めしようとしないでください! その群れは危険です!」
「でも、こんなに多いんじゃ、少しでも数を減らさないと……」
「いいから! こっちに来てください! ローディアス、ユリアさんをグールから守れ。俺があいつらを全滅させるまで。」
『お任せください、主君。』
「ユリアさん、早く!」
「で、でも!」
「あーもう! 【カムバック・ヒア】!」
俺は魔法で強制的にユリアをこっちに引き寄せた。ユリアは困惑している。
「ユリアさん、ここは俺に任せて下がっていてください。」
「そ、そんな! 私だって戦えます!」
「それは分かってますよ。でも、あの群れは危険です。近接戦闘でもし更に体液を飛び散らせたら、ジ・エンドですよ。」
「リチャードさんに付与して頂いた光属性魔法なら……」
「瘴気に光はあまり効果がありません。それに、ユリアさんに適性がある炎属性でも、大きいのを撃ったらしばらく休まないと次のを撃てませんよね?」
「そ、それはそうですけど……」
「分かっているなら、ここは俺に任せてください。」
俺はそう言うと前に出て、ドラゴンスレイヤーに炎の魔力を込めた。そして、
「燃え尽きろ! 【フレイム】!」
と呪文を唱えると同時に横に振るう。すると、ドラゴンスレイヤーから炎を纏った衝撃波が飛び出した。それはグールの下半身と上半身をあっさりとお別れさせる。そして、上下に分断されたグールはあっという間も無く灰と化した。体液もフレイムの熱量で蒸発している。
「1発じゃ足りないよな。【フレイム】! 【フレイム】! 【フレイム】!」
続けざまにいくつかぶち込んだ。グールの燃え上がる速度が上がる。3分とかからずグールの群れは完全に灰になった。
【ダンジョンマスターが剣で200体以上のモンスターを撃破しました。剣術スキルを2レベルアップします。】
【ダンジョンマスターが瘴気系モンスターを100体以上撃破しました。称号【瘴気喰らう者】を入手します。】
脳内で機械的な声がなんか言っているが、今は無視する。
「ふう、殲滅完了。」
俺がそう言って振り返ると、ユリアがいきなり抱き付いてきた。
「リチャードさん! とっても格好良かったです! 素敵でした!」
「あ、ありがとうございます……」
『主君、もう少し嬉しそうな顔はできないのですか?』
「ローディアス、お前は黙れ。あとユリアさん、離れてください。」
「もうちょっとだけお願いします!」
「不許可です。そのままだとユリアさんに命の危険が迫る可能性がありますから。」
「リチャードさんに殺されるなら構いません! 寧ろ本望です!」
「ユリアさんを殺そうとするのは俺じゃなくてティリです。ティリは俺の事になると異様に勘が鋭くなりますから。俺に抱き付いたことがバレたら、ユリアさんは一撃で灰燼に帰される可能性があります。」
俺がこう言うと、ユリアはビクッと体を震わせて身を引いた。
「じ、冗談ですよね?」
「マジです。この間もティリの勘違いによってキャトルが半殺しにされました。」
「…………」
「ですから、勘違いを誘発するようなことはやめておいた方が良いですよ。じゃあローディアス、案内の続きを頼む。」
『お任せください、主君。』
そう言ってローディアスは進み始める。俺はまだブルブル震えているユリアをコンフォートで落ち着かせると、ローディアスの後を追うのだった。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:150
階層数:15
モンスター数:401
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 55体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
メディックウルフ 1体
ポイズンウルフ 1体
イルネスウルフ 1体
ハルキネーションウルフ 1体
フライングウルフ 1体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
プレデターラビット 2体
アシュラベアー 1体
キラーバット 10体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
ブルースパロー 25体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:55→56
スキル:鑑定眼(Lv4)
剣術(Lv2→Lv4)
鎌術(Lv3)
杖術(Lv1)
体術(Lv4)
狙撃(Lv1)
全属性魔法(上級)
念話
無詠唱
炎耐性
毒耐性
呪耐性
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ヒールフレイムの杖(R、炎属性魔術と治癒属性魔術の威力上昇)
神秘の聖銃(SR、邪属性に特効)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)




