表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5章:マスターと依頼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/200

60.深さ11~15 エリートなゴースト

「せいっ!」


 俺は気合いと共にソウル・ウォーサイズを振るう。その鎌の刃は俺の前にいたゴースト10体をあっさりと斬り裂いた。


「フオオオオー!」


 聞くに耐えない悲鳴を上げながら、魔石を残してゴーストは消滅。奴らの悲鳴は何度聞いても慣れないな。


「リチャードさん、大丈夫ですか?」

「ええ。ユリアさんが先に6体始末してくれたおかげで楽に片づけられました。まあ、1つ気になることが残っていますが。」

「それって……」

「多分ユリアさんが考えてることであってます。未だに雑魚しか出てこないってことですよ。」


 そう、既に深さ11の中間あたりまで来ているというのに、ゴースト以外のモンスターが一向に出てこないのだ。


「確実に罠だと思うんですけど……」

「立ち止まっていても何も分かりませんしね……」


 俺たちは顔を見合わせ、溜息を吐いた。


「はあ……もういちいちゴースト倒すの面倒ですし、ちょっと大きめのを一発やっときます。」


 俺はヒールフレイムの杖を取り出して掲げ、


「【ディストラクション・ゴースト】!」


 と呪属性魔法の呪文を唱えた。すると、俺の身体から禍々しいオーラが噴出し、それが杖に収束。そして、それは黒色の弾丸となって次々と発射され、ダンジョンの奥へと消えて行った。


「あの、リチャードさん、今のは?」

「ああ、指定範囲内にいる特定のモンスターを、魔力を7割消費するのと引き換えに滅ぼす魔術です。」


 ダンジョンマスターとしての立場から言うとこんな手段は好ましくないのだが、そうも言っていられないしな。


「えぇ? 魔力7割消費って、大変じゃないですか! これを飲んでください!」


 ユリアはマジックポーチから上級MP回復ポーションを取り出した。確か、1本1000ゴルド以上はする高価なポーションだ。


「そんな高価なものは頂けません。それに、称号の効果で回復力が上昇してますから。」

「回復力が上昇する称号? そんなのありましたっけ?」

「【龍を討伐せし者】です。」


 俺のこの言葉に、ユリアは目を見開いた。


「り、龍を討伐せし者って、ドラゴンに単身で勝利しないと得られない激レア称号の?」

「激レアかどうかは知りませんけど、多分そうです。」

「そ、そんなすごい称号、いつどこで……あっ……」


 ユリアの言葉が途中で止まる。パーティを組むときに約束した【俺の事を詮索しない】という条件を思い出したらしい。


「り、リチャードさん、今のはですね、その……」

「別に誤魔化さないでいいですよ。あのくらいなら許容範囲内ですし。」

「よ、良かった……」


 ユリアはホッとしたような顔になった。どうやら、かなりビビっていたらしい。


「俺がどうやってこの称号を手に入れたか、気になりますか?」

「はい。でも我慢します。約束ですから。」

「そうは言っても気になるんですよね?」

「はい。」

「じゃあ、このダンジョンが攻略できたら、帰りがけにお教えしましょう。」

「え? 本当ですか?」


 ユリアの目が輝いた。余程気になっていたらしい。


「本当ですよ。」

「じゃあ、一刻も早くこのダンジョンを攻略しないと!」

「そんなに急がなくても、俺の秘密は逃げませんよ。まあ、俺もこんな辛気臭い場所にいつまでもいたくはないですけどね。」


 俺はゆっくりと歩を進めるのだった。


              ☆ ☆ ☆


「しかし、あれから全くモンスターがいないですね。マジでゴーストしかいなかったんでしょうか?」

「恐らくそうだと思います。」


 俺たちは深さ14の深部で、休憩しながらそう話していた。なんと、深さ11でディストラクションを使用してからここに至るまで、俺たちは全くモンスターとエンカウントしていないのだ。これはさすがに異常すぎるだろう。


「ちょいちょいゴーストの魔石が落ちてはいますけど、あんまり多くはないですよね?」

「もしかしたら、ゴースト以外のモンスターは脅威を感じて奥に逃げたのかもしれません。」

「あー、それならもっと警戒を強めた方が良いですね。」


 俺は魔力探知を強めて歩き始めるのだった。



 そして辿り着いた深さ15。ここは今までとは明らかに違った。濃い瘴気と闇のオーラが漂っており、空気もどこかねちっこいような感じがする。


「何か奥にいるっぽいですね。」


 俺はそう呟く。魔力探知に生体反応が引っかかったのだ。


「何かは分かりますか?」

「そこまでは……ただ、確実に言えるのは、奥での戦闘は精神が削られるってことです。」

「なぜですか?」

「ここの通路、明るいからイートシャドウに気を配る必要があるんですよ。」

「い、イートシャドウって、あの夜リチャードさんが言ってた……?」

「ええ、そうです。奴らは影から急襲してきたり、影を喰って動きを封じたり、いやらしい攻撃ばかりしてくるんです。しかも、魔力を帯びた武器でしかダメージを与えられず、バッドステータス魔術も効果が薄い。にも関わらず、向こうはこっちに【恐怖フィア】や【混乱コンフュ】を与えることができる。兎に角面倒臭いモンスターなんですよ。」

「じゃあ、1対1はきついですか?」

「ああ、戦闘能力自体はそこまで高くないので、30体ぐらいなら余裕ですよ。進化系だったらそうはいきませんけど。」

「それはリチャードさんが基準ですよね? 私に換算したらどのくらいになりますか?」

「ユリアさんだっていけると思いますよ。5体くらいなら。」


 俺は話しながら地面にゴーストの魔石を置く。そして、神秘の聖銃を取り出すと、銃口をそれに向け、照準を絞った。


「あの、リチャードさん、何を?」

「ああ、瘴気を生み出そうと思いまして。」

「なぜですか?」

「討伐しやすくする為です。非実体型モンスターは高確率で【透明化】スキル……所謂ステルス能力を持ってますから。」

「それと瘴気を生み出すのに関係があるんですか?」

「死霊系モンスターは瘴気を取り込むと体が一時的に黒く染まるので、居場所が判断しやすくなるんです。」


 俺は神秘の聖銃の引き金を引いた。金色の弾丸が発射され、魔石が砕け散る。ゴーストの身体を維持していた魔石には、予想通り多くの瘴気が籠もっていたらしく、あっという間に瘴気が充満する。


「よし、予定通り。あとは……【ウィンド】!」


 俺が唱えた風魔法の呪文により、瘴気がダンジョンの奥へと流れていく。


「よし、ユリアさん、一気に行きますよ!」


 俺は間髪入れずに走り出した。



「ユリアさん、お願いします!」

「はい! 【ライトニングアロー】!」

「フオオ?」

「よし、こっちも! 狙撃武技Lv1スキル、【乱射】!」

「フオオオオオオオオー!」


 ユリアの魔法と神秘の聖銃の弾丸乱射により、あっという間に黒く染まっているモンスターは片付いた。因みに、こいつらも撃破すると消滅前に黒い石を落としたので、取り敢えず鑑定してみる。


【ハイゴーストの魔石】 アイテムレアランク:ノーマル

ゴーストの進化系モンスター、ハイゴーストの身体を維持している魔力の籠もった石。ゴーストの魔石より多量の魔力と瘴気を含んでいる。


「さっきのはハイゴーストっていうのか……」


 俺はそう呟きながらハイゴーストの魔石を拾い、異次元倉庫に放り込んでいく。そして、最後の魔石を放り込んだとき、突然ユリアが声をあげた。


「リチャードさん、後ろ!」


 ユリアの切羽詰まったような声に慌てて後ろを振り返った瞬間、何かに俺は突き飛ばされた。空中で体勢を立て直して着地できたので怪我はない。しかし、なかなかのパワーだった。改めて確認すると、そこにはゴーストよりずっと大きな半透明のモンスターがいた。


『ククッ、油断は禁物だぞ、小僧。』


 口元を歪める半透明のモンスター。俺は即座に鑑定。


エリートゴースト ランクD

名前:ローディアス

保有魔力:354000/400000

称号:なし

スキル:成長促進(任意のものの成長速度を上げられるスキル)

    瘴気変換(瘴気を吸収して魔力に変換できるスキル)

状態:浮遊


「こんな浅いところでもうネームモンスターかよ……」


 俺は吐き捨てる。


『ククッ、我は本来第3階層にいるのだが、面白い魔力の波動を感じたので、ここまで来させて貰った。小僧、貴様が放ったのだろう? あのゴーストを一掃した殲滅の魔術は。』

「だったら何だ?」

『愚問。我が怨みによって屠るまでのことよ。』

「これは驚いた。モンスターにも冗談が言えるんだな。」

『何だと?』

「よくそこまで自分の実力を過信できるな。驚きを通り越した尊敬すら通り越して哀れみを覚えるぜ、この雑兵が。」

『ククッ、愉快な人間だ。まあ、戦闘後に分かるだろう。雑兵はどちらかがな!』


 そうローディアスが叫ぶや否や、奴の姿が消えた。


『これで我が姿を認めることはできまい! このまま安全に貴様らを始末させて貰おう!』


 ローディアスの声が響く。反響のせいでどこから聞こえてくるのか分からない。


『我のステルス能力は絶対なり!』


 再びローディアスの声が響く。と同時に、俺の右腕から血が噴き出した。その後は左足、そして左腕、更に右足。


『ククク、四肢を封じられればもう何もできぬだろう? これで我は貴様を好きなように始末できるが、冥土の土産として一つ余興を……』

「うるせえぞ、雑兵。この程度で俺を倒したつもりか? 甘い!」


 俺は無詠唱で【ハイパーヒール】を使用。効果は抜群で、傷があっという間に塞がった。


『なっ? き、貴様、今何を……』

「黙れ雑兵。説明してやるような義理はない。」


 俺は今度も無詠唱で【マジカルアイ】を発動し、魔力の流れを視認できるようにした。そして辺りを見回すと、最も魔力が濃いところに向けて神秘の聖銃を乱射。すると、


『ギャアアアアアー!』


 とおぞましい悲鳴が上がり、ローディアスの姿が再び目視できるようになった。


『な、なぜ我の居場所が分かった?』

「お前、ステルス能力とかほざいてたけど、結局は魔術じゃねえか。あれ、【スケルトン】だろ?」

『ち、違うぞ小僧! あれは我のスキル……』

「強がるな。お前のスキルは【成長促進】と【瘴気変換】だけだ。【透明化】なんてスキルは所持してねえだろ。」


 俺がこう指摘すると、ローディアスは分かりやすく慌て始めた。


『な、な、何を言っている? そ、そ、そんな簡単に……』

「うるさい。」


 俺はソウル・ウォーサイズを取り出し、


「おしゃべりは終わりだ。雑兵はそこで砕けてろ!」


 と横に薙ぐ。それはしっかりとローディアスの胴体を捕らえ、真っ二つに斬り裂いた。


『グアアアアアアアー!』


 絶叫しながらローディアスが消えていき、その場には漆黒の石が残った。それを拾おうと俺は身を屈める。するとその時、脳内に機械的な声が響いた。


【ダンジョンマスターが鎌でレア進化種のモンスターを撃破しました。鎌術スキルを2レベルアップします。】

【Dランクモンスター、エリートゴーストの魂を捕獲しました。】


「捕獲? たまたま急所でも斬ったのか? 【サモン・エリートゴースト】!」


 俺がそう唱えると、ソウル・ウォーサイズが金色に光り、ローディアスが現れた。


『クッ、この我が人間如きに捕らえられるとは……』

「相変わらずうるさいな。お前、何かできることあるのか? 無駄口を叩くこと以外で。」

『我を甘く見てもらっては困るな。我はこのダンジョン最古参のモンスターだ。ダンジョン内部の構造は知り尽くしている。』

「なら、案内をしてくれ。」

『断る。なぜ貴様に我が協力しなければならんのだ。』

「あ、そう。なら別にいいけど、その代わり……」


 俺は先程拾った漆黒の魔石をユリアに渡す。


「え? あの、リチャードさん、これは?」

「砕いてください。ウォーサイズのキャパをこんな非協力的な奴に使うのは勿体ないので。」

「分かりました。リチャードさんがそう仰るなら。」


 ユリアが魔石を長剣の柄で砕こうとすると、ローディアスはいきなり背筋をビシッと伸ばし、最敬礼をした。


『だ、ダンジョン内の案内でよろしければ謹んでお受けいたします!』

「別にやらなくてもいいんだぞ。」

『そ、そういう訳には参りません! 某にお任せください、主君!』

「そうか。そこまで言うなら頼む。」

「はい、こちらへどうぞ。」


 奥へと進み始めるローディアス。いくらかの紆余曲折はあったものの、有用な案内人を入手した俺たちは、歩みを進めるのだった。

【ダンジョンステータス】

ダンジョン名:友好獣のダンジョン

深さ:150

階層数:15

モンスター数:401

    内訳:ジャイアントモール   10体

       キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ウルフ         55体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       メディックウルフ     1体

       ポイズンウルフ      1体

       イルネスウルフ      1体

       ハルキネーションウルフ  1体

       フライングウルフ     1体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       プレデターラビット    2体

       アシュラベアー      1体

       キラーバット      10体

       ビッグワーム      25体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       レッドスワロー     12体

       フレイムイーグル     5体

       イートシャドウ     10体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ブルースパロー     25体

       ブルースワロー     10体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    3体

       ラングフィッシュ    10体


友好条約締結者

リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)

レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)

キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)

セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)



【リチャードのステータス】

リチャード・ルドルフ・イクスティンク

種族:人間

職業:ダンジョンマスター、魔術師

レベル:53→55

スキル:鑑定眼(Lv4)

    剣術(Lv2)

    鎌術(Lv1→Lv3)

    杖術(Lv1)

    体術(Lv4)

    狙撃(Lv1)

    全属性魔法(上級)

    念話

    無詠唱

    炎耐性

    毒耐性

    呪耐性

称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)

   大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)

   スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)

   龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)

   破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)

   称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)

   氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)

   霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)


所持武器:アイアンナイフ(ノーマル、鉄製のナイフ)

     ヒールフレイムの杖(レア、炎属性魔術と治癒属性魔術の威力上昇)

     神秘の聖銃(SRスーパーレア、邪属性に特効)

     ソウル・ウォーサイズ(SSRダブルスーパーレア、死霊系に特効)

     ドラゴンスレイヤー(SSRダブルスーパーレア、全属性対応)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ