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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5章:マスターと依頼

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58.初クエスト 死霊のダンジョン

「ユリアさん、準備はいいですか?」

「はい。攻略のクエストは初めてですが、精一杯頑張ります。」


 俺の問いにユリアは頷いた。ここはウェーバーギルドから10km程東に進んだ所にある砂漠、ブラッディデザートの中央に位置する【死霊のダンジョン】の入り口前だ。このダンジョンはダンジョンランクがCで、Bランク以上の冒険者ならソロでも挑戦が許可されている。なぜ俺たちがこんなところにいるのか。その理由は2時間前に遡らなければ分からない。



「おはようございます!」


 今朝、俺がいつものようにダンジョン整備をしていると、コントロールルームとダンジョンの間を隔てているドアの向こうから女性の声が聞こえた。侵入者とは出ていなかったので俺に敵意を抱いたものでは無いのだろうが、一応ヒールフレイムの杖を持ってドアを開けると、そこにいたのはウェーバーギルド職員のレナさんだった。


「あ、レナさん。何か御用ですか?」

「本日は、リチャードさんに折り入ってお願いがあるんです。」


 レナさんはそう言うと、1枚の丸めた羊皮紙を取り出す。広げて見てみると、そこには、


【緊急クエスト:死霊のダンジョン攻略】

攻略地:ブラッディデザートの【死霊のダンジョン】

挑戦権:Cランク以上のパーティ、Bランク以上の冒険者

報酬:最低1000万ゴルド(持ち帰ったモンスター素材量に比例し上昇)

成功条件:死霊のダンジョンを完全攻略し、ダンジョンコアを持ち帰る

アイテム所有権:獲得冒険者に帰属


 と書いてあった。


「クエスト依頼書ですか。で、これが何か?」

「えっとですね、この【死霊のダンジョン】は色んな冒険者が攻略しようと頑張っているんですけど、中々攻略ができないんです。大体の人が深さ30、即ち第3階層踏破直前までは行けるんですけど、そこでとっても強力なモンスターが出てきたり、罠にかかったり。結局、撤退せざるを得なくなるらしいんです。それで、緊急クエストの扱いになりまして……」

「つまり、ここを攻略して来いってことですか?」

「まあ、語弊はありますが大体そんな感じです。」


 そう言うと、レナさんは少し声を潜めて、


「実は、このダンジョンに行ってお亡くなりになられた方が何人かいるんですが、ここで死んだ人間はグールとかゾンビとかになってしまうらしいんですよ。」


 と言ってきた。


「それって普通じゃないですか? うちのダンジョンはやってませんけど、他のダンジョンマスターどもは死んだ冒険者をスケルトンとかグールとかゾンビとかの死者兵士に改造するらしいですし。」

「うわあ……性格悪いですね……」

「やっぱりそう思いますか。」

「はい。白翼のダンジョンは死者いなかったから私はそういうことしてないですし、仮に死者がいたとしてもそんな死者を冒涜するような非道な行為しませんから。」


 レナさんはそう言って少し身震い。


「あ、でも、死霊のダンジョンにダンジョンマスターがいるかどうかは分かっていないんです。あそこは瘴気がもの凄く濃いので、死体が勝手にスケルトンとかになる可能性も否めませんから。他に、素早く逃げる為に脱ぎ捨ててきた鎧がリビングメイルになっていた、なんていう報告もありますけど、これも意図的なのか自然なのか分かりませんし……」

「鎧とか脱ぎ捨てて行った場合、俺ならコアに吸収してDPの足しにしますけど、それが無いってことはやっぱり自然発生系ですかね?」

「その可能性の方が高いですが、分かっていませんから……まあ、それは兎も角、死霊のダンジョン攻略クエストはそのダンジョン名の通りモンスターも死霊系や呪系ばかりで、気味悪がって受注してくださる方がいないんです……」

「死霊系ならうちのダンジョンにもいますけどね。」


 俺はそう言うと、【shop】を開き、


「こいつだって死霊系ですよ。」


 と言って、仮召喚したイートシャドウを指差す。


「確かにこれは黒いだけでそれ程気味悪くはないですね。でもこういうのは例外です。腐乱死体みたいなモンスターの方が多いらしいですし。まあ、イートシャドウもいるらしいですが。」

「へー、こいつも。ってことは、ダンジョン内はそれなりに明るい、と。」

「はい。死霊系が多い割に明るく、光を灯す魔法などが使えなくても大丈夫らしいです。」

「成程。」


 俺はそう言ってから、


「このクエスト、失敗した場合に何かペナルティはありますか?」


 と聞いてみた。するとレナさんは、


「ありません。完全攻略ができていなくても、素材をお持ち帰りいただけた場合は、それはギルドが買い取ります。」


 と即答。


「分かりました。じゃあ、受注しましょう。」


 俺はそう言うと、ドールハウスの方を向いて、ティリを呼んだ。


「おーい、ティリ!」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! お呼びですか、ご主人様?」

「うん。今日、これからダンジョン攻略しに行ってくるから、留守番を頼みたいんだけど。多分3日くらい空けることになる。」

「了解しました。ルキナスさんとルーアさん、セントグリフさんにも伝えておきます。侵入者がいた場合はどうしますか?」

「深さ15までの間に、イートシャドウに影を喰わせるか、シノビシャドウに影を縛らせるかして動きを止めた後、フレイムウルフで死なない程度の温度の炎を浴びせて追い返してくれ。殺すなよ?」

「はい。」

「で、もし深さ20を突破された場合は、これで俺に連絡して。」


 俺はそう言うと、【shop】のアイテム欄からトランシーバーを選択して購入。


「かしこまりました。留守番はお任せください。」


 そう言って、ティリはペコリと腰を折る。


「じゃあ、行ってくるよ。あ、レナさん、ウェーバーギルドまで送りましょうか?」

「い、いえ。結構です。これでも私は一応獣人ですので、1日100kmくらいは余裕ですから。では、よろしくお願いします。受注手続きはしておきますので。」


 そう言ってレナさんは出て行った。


「初めて他のダンジョンに潜るのか……」

「ご主人様、気を付けてくださいね。」

「分かってるって。あ、そう言えばダンジョン攻略って初めてだし、ユリアも誘ってみるかな。行きたいって言ったら連れていくか。」

「まるでカフェに誘ってるみたいなノリで仰いますね。」

「まあね。あんまりきつくなさそうだし。じゃ、行ってきます。」


 俺はそう言って、転移しようとしたのだが、ティリに呼び止められた。


「ちょっと待ってください、ご主人様!」

「ん? 何?」

「キャトルさんには何と言っておけばいいでしょうか?」

「ああ、ルキナスさんたちと同じでいいよ。」

「それだけですか?」

「んー、後は……ああ、俺がいないからってサボったりしないようにって。もしサボったら、懲戒免職処分で、二度と血に巡り合えないようにしてやるからって言っておいてくれ。じゃあ、よろしく頼むよ。」


 俺はそう言うと、ドーイバイクと一緒に転移陣でユリアの家の前に転移し、ユリアを誘った。ユリアは攻略クエスト挑戦は初めてだが、経験を積みたいと言っていたので一緒に……と、これが今現在に至るまでの経緯いきさつである。



「さて、じゃあ行きましょうか。ユリアさん、くれぐれも無理はしないでくださいね。ここにはグールやリビングメイルだけではなく、イートシャドウなどもいるらしいですから。」

「はい。気を付けておきます。」


 ユリアはしっかりとした目で頷く。俺はユリアの意思をもう一度確認すると、血のように赤い砂が埋め尽くす砂漠にぽっかりと空いた【死霊のダンジョン】の中に足を踏み入れたのだった。

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