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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第1章:マスターとダンジョン

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7.ダンジョンとトラップ

「こんなところでいいかな。あとは拡張と侵入者の排除の仕方ぐらいか。」


 俺は本日分のDPと今まで溜めていたDPを全て使い切り、開通が明日に迫ったダンジョンの内部最終整備を終えた。階層は多くし過ぎて怪しまれると不利になるのでとりあえず第7階層を深くできるところまで深くし、残ったDPはモンスター召喚と強化に注ぎ込んだ。ところで、モンスターといえば、この前のキングモールの他にも多くのモンスターが進化した。ウルフはソイルウルフ、ファイアウルフ、ウォーターウルフに、ジャイアントモールはキングモールに、ビッグワームはジャイアントワームに。中でも一番驚いたのはレッドスワローで、何とこいつらは保有魔力が上限到達カンストした途端、レッドイーグルという名の赤い猛禽類に進化したのだ。空を飛ぶ速さも格段に上がり、今はダンジョンの中を目にも止まらぬ速さでビュンビュン飛び回っている。


「ご主人様、他に新種のモンスターを召喚しなくてよろしかったのですか?」

「いいんだよ。もっと増やすのは更に階層が増えてから。最初からモンスターの数が多かったり、強いモンスターがいたりしたら、ここを危険視した強い冒険者がパーティ組んでやってきて、あっという間に制圧されちまう。それに、今の段階でモンスターは200体いるんだし、十分だろ。」

「確かに、ソイルウルフ20体、ファイアウルフ20体、ウォーターウルフ20体、ウルフ40体、キングモール30体、ジャイアントモール10体、ジャイアントワーム30体、ビッグワーム25体、レッドイーグル5体で合計は200体ですが……それでもやはり心配です。」

「心配性だな、ティリは。大丈夫だって。もっと自信を持て。俺たちが協力して作ったダンジョンじゃないか。そう簡単に落とさせはしないよ。」


 俺はウィンドウに目を向ける。そこにはキングモールが掘った穴の壁を、土魔法を使えるソイルウルフが固めたり、ジャイアントワームがその体をローリングさせて滑らかにしたりと、協力して通路を作っている様子が映し出されていた。因みに、ダンジョンが広くなって魔力マナの量が増えた為か、それとも湧水があるからなのか、はたまたそのどちらでも無い他の理由があるのかは分からないが、食べるなという命令を与えなくてもモールはワームを食べなくなり、いつの間にやら協力関係が出来上がっていた。仲良しなのは良いことなのだが、モグラとミミズが協力している画像はなかなかシュールで、どことなく釈然としない。他にもいくつかウィンドウを開いて映像を見ると、ウォーターウルフが口から水を吹き出してウルフの毛を濡らして毛づくろいをし、ファイアウルフがその体から発する熱気で水を蒸発させてフワフワにしたり、ワームがその長い身体でウルフに巻き付いて冒険者を効率よく縛り上げる練習をしていたりと、皆仲良く遊んだり訓練したりしているようで見ていて飽きない。微笑みながらウィンドウを見ていると、ティリが声をあげた。


「あ、そういえばなんですが……」

「どうした、ティリ?」

「このダンジョン、罠が無いですよね? 何で購入されなかったんですか?」

「罠? ああ、トラップか。そう言えばショップで色々売ってたな。でもさ、落とし穴1個で5000DPとか確実にぼったくりだろ。そんなの買うくらいなら、うちのモンスターたちを強化する。けど、無いのも心許なかったから、今いくつか作って貰ってるよ。」


 俺は新たなウィンドウを開く。そこに映し出されているのは深さ40、即ち第4階層の最深部だ。ジャイアントワームとビッグワームが落とし穴を掘り、その中にウォーターウルフが水を入れている。あえて浅い階層にはトラップを仕掛けず、簡単なダンジョンだと思わせておいて深くまで誘い込み、そこにこの水入り落とし穴だ。斥候などでない限り、このトラップに即座に対応できる冒険者はそう多くはないだろう。


「成程、水入り落とし穴ですか。しかも冒険者を油断させて深層まで誘い込み、簡単に逃げられない状況且つ歩き続けて疲弊した状態でのトラップ……よく考えられていますね。流石はご主人様です!」

「ありがとう、ティリ。でもこれだけじゃない。ファイアウルフが作った炎の渦が巻いている落とし穴や、ソイルウルフが作った土の棘が刺さっている落とし穴もある。それと、第4階層の深さ39の部分はソイルウルフとウォーターウルフに一面歩きにくい沼地にしてもらった。その下にジャイアントワームを5体潜ませてあるから、ここで奇襲ができる。」

「よくそんなトラップを次々に思いつきますね、ご主人様は。」


 ティリに褒められると、やっぱり素直に嬉しいと思える。そう思った時、ダンジョンコアが紫に光った。そして、ウィンドウに文字が表示される。


【ダンジョン開通まで残り2時間です。】


「もうそれしかないのか……ジャイアントモール、キングモール、急ピッチで穴を掘ってくれ!」


 ダンジョンコアを通じて命令を出すと、モールたちは土煙をもうもうとあげ、発進する前の飛行機のように猛然と穴を掘り進め始めた。スピードが先ほどまで掘っていた時とは比べものにならないほど速い。


「この調子なら開通前には通路が完成しそうだな。内部整備とトラップの配置はほぼ終わってるし、万全の状態でダンジョン開通ってことになりそうだ。ところでティリ。」


 俺はダンジョンの状態について呟くと、ティリに声をかけた。


「はい、何でしょう。」

「甘い物は好きか?」


 この俺の唐突な質問に、ティリは一瞬戸惑ったような顔をしたが、


「大好きですけど……」


 と答えた。


「そうか。じゃあこれは、1年間俺を引っ張ってきてくれたティリにプレゼントだ。」


 俺はそう言って、1つの壺を取り出した。今日、ティリにあげようと思って召喚した新鮮ハチミツだ。金色でトロリとしていて、絡める棒もついている。


「はい。」

「え? あの、これは、まさか、ハチミツですか?」


 ティリの目がめっちゃキラキラしてる。


「ああ。そうだけど。」

「ありがとうございます! ハチミツを食べるのは7年ぶりです! ああ、今日はなんて素晴らしい日なのでしょう!」


 ティリは満面の笑みを浮かべると、嬉々としてハチミツを食べ始めた。そんなに好きならもっと早く出してやるべきだったかもな。


「たくさんあるからゆっくり食べろよ。また欲しかったら出してあげるから。」


 俺はそう言うと、充実機能で召喚した温泉(中)のある部屋へと向かった。



 温泉から上がり、天然の湧水を飲んでからコントロールルームに戻ると、ティリはハチミツの壺の横で寝ていた。俺はティリを起こさないようにそっと抱き上げると、ドールハウスの中のベッドに入れる。


「むにゃ……ごしゅじんしゃま……お慕い申し上げておりましゅぅ……」


 寝言でティリがこう言った。その言葉に俺は素直に喜ぶ。そして、しっかり者のティリでも居眠りするんだな、と少し安心する。ティリは毎日俺と同時か少し遅い時に寝て、翌朝は必ず俺より早く起きる。そして俺に声をかけるか、初めて会った時のようにアクアトピアをぶちかますかして起こしてくれる。疲れているのだろう。ティリは隠そうとしていたみたいだが、俺には分かっていた。


「お休み。明日からもっと厳しくなるんだから、今日はゆっくり休め、ティリ。」


 俺はドールハウスの窓から寝ているティリの顔を見つめ、そう呟くと、自分もスプリングベッドに潜った。


【ダンジョン開通まで残り1時間です。】







ダンジョン名:‐‐‐‐‐‐

深さ:70

階層数:7

DP:0P

所持金:0ゴルド

モンスター数:200

    内訳:ジャイアントモール  10体

       キングモール     30体

       ウルフ        40体

       ソイルウルフ     20体

       ファイアウルフ    20体

       ウォーターウルフ   20体

       ビッグワーム     25体

       ジャイアントワーム  30体  

       レッドイーグル     5体

侵入者数:0

撃退侵入者数:0


ダンジョン開通まで残り1時間


住人

ダンジョンマスター(人間)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

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