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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第4章:マスターと冒険者①

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77/200

side ??? 結果報告と少女の感謝

 龍族の住むモータント大陸。【ドラゴンの巣窟】というダンジョンの近くの平原で、一人の少女が空を見上げていた。その視線の先には、グルグルと旋回する大きな影。先日、リチャードと戦闘したレッドワイヴァーンのレッディルだ。それは次第に高度を下げ、少女の前にゆっくりと着地する。


「お疲れ様でした、レッディル。」


 そう言って、着地したレッディルに近付く少女。名前はリーン・クレイティブ・カールという。【ドラゴンの巣窟】のダンジョンマスターだ。


「あのダンジョン、及びダンジョンマスターについて何か情報を得られましたか?」

『うむ。それほど多くはないが、情報は得てきたぞ。』

「さすがですね。では、報告をお願いします。」

『命令を了解した。』


 そう言うと、レッディルは報告を始めた。


『ゴーンドワナ大陸のフェリアイルステップにあるダンジョンの名は【友好獣のダンジョン】。ダンジョンランクはCで、ベースモンスターは魔狼族基本モンスターのウルフだ。』

「ふむ……ウルフですか。あれは確か1体10DPですから、大量に配置が可能ですね。すると、やはりあそこのダンジョンマスターは知力に長けた人間の可能性が大きいと考えられます。他には?」

『ダンジョンマスターとの接触に成功した。』

「なっ? そ、それは本当ですか?」

『我が主に嘘を吐いたことがあるか?』

「沢山ありますよ。それより、接触したというのは本当なのですか?」

『ああ。あちらのダンジョンマスターが偶然にもダンジョン外にいてな。』

「し、種族は? 種族はなんだったのですか?」

『正真正銘の人間だ。年齢は20~24程、性別は男。非常に膨大な魔力を所持し、我が灰燼に帰した部分の草を復活させたらしい。』

「に、人間なのですね?」

『うむ。間違いはない。』


 レッディルはそう言って頷く。するとリーンは顔を綻ばせた。


「さすがです、レッディル! やはり私が見込んだだけのことはあります! あなたのような部下を持てて、私は幸せですよ!」


 そうレッディルを褒めるリーン。しかし、レッディルはそれに対してはさほど反応せず、不意に真剣な顔になって、


『そう言って貰えるのは嬉しいのだが、我はミスを犯してしまっているのだ。』


 と呟いた。


「ミス、ですか?」

『うむ。ミスだ。』

「また野生動物のつまみ食いでもしてきたのですか? レーザーホースなら数が多いですから大丈夫ですよ?」

『あー、まあ、確かにレーザーホースは食べた。だが、それよりもっと重大なミスだ。』

「それよりも? また草を燃やしたのですか?」

『いや、草を燃やしてはいない。今回は細心の注意を払ったからな。』

「ならば何をミスしたというのです?」


 キョトンとした顔で聞いてくるリーン。それに対し、レッディルは溜息を吐くと、


『主は我の今の姿を見て、何かおかしいと思わぬのか?』


 と聞いた。


「今のあなたの姿ですか? 別に変わったところはないように思いますが……」


 そう言いながらリーンは数秒考えるような仕草をする。そして、


「あっ!」


 と叫んだ。


『分かったか?』

「ええ! あなた、鱗が全て新しくなっているじゃありませんか! まさか、向こうの大陸で脱皮をしたんですか?」

『近いがハズレだ。我は、そのダンジョンマスターと戦い、敗北し、鱗を譲り渡さなければならなくなったのだ。』


 レッディルのこの言葉に、リーンは驚愕した。


「あ、あなたが人間如きに敗北したのですか?」

『うむ、その通りだ。油断していた訳ではないが、奴はスターライトを倒し、我をも倒したのだ。』

「スターライトはミニスタードラゴンですから、やられるのは分からなくもないですが、まさか常勝無敗のあなたが負けるとは……」

『すまないことをした、主よ。』


 レッディルはそう言うと、深く頭を下げた。


「レッディル、謝る必要はありませんよ。あなたは立派に責務を果たしてきたんですから。」

『しかし、我は負けた! 主は、部下に役立たずは要らぬのだろう?』

「ええ。私の部下に役立たずは要りません。しかし、今回に限ったことで言えば、あなたの敗北はむしろ賞賛すべきものです。」

『ん? それは、どういうことであるか?』

「あのダンジョンのダンジョンマスターは全力を出したあなたが勝てない程の魔力を持つダンジョンマスターだ、ということが分かったのです。もしそれが無かったら、私は今すぐダンジョン侵略を開始していますからね。」

『成程。我が敗北したおかげで、無謀な挑戦をせずに済んだ、ということか。』

「ええ。それに、あなたが勝てないダンジョンマスターに私が勝てるとは思えません。私自身の鍛錬やダンジョンモンスターの強化など、新たな課題も見つかりました。それだけでも、あなたがやったことは素晴らしいと言えます。」

『主……』

「お疲れ様でした、レッディル。今日はあなたの好きなモンスターを召喚してあげますから、好きなだけ食べてください。そしてゆっくり休んで、明日からまた頑張ってくださいね。」

『うむ。命令を了解した。』

「それと、もう1つ。明日から、私の訓練にも付き合って貰いますよ。あそこのダンジョンとの戦いに勝つ為には、私自身も力をつけなければいけないようですからね。」


 そう言うと、リーンはダンジョンの中に戻り、レーザーホースをはじめとするレッディルの好きなモンスターを大量に召喚。すると、レッディルはそれを見て目の色を変え、嬉々として食らい始めた。リーンはそれをウィンドウで確認すると、セントグリフの墓へと向かった。



「兄上……もうすぐ兄上の仇を取ることができるかと思います……」


 リーンは最愛の兄、セントグリフの墓に花を手向けると、手を合わせながらそう呟いた。


「きっとあの人間のダンジョンマスターに罠を作らせれば、兄上を殺したあの憎き人間を殺すことが出来るでしょう。もう少し待っていてくださいね、兄上。」


 そう言うと、リーンは微笑みを浮かべながらコントロールルームへと戻るのだった。

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