53.対ミニスタードラゴン 空中戦
「先手必勝! 【ファイアレーザー】!」
俺はそう呪文を唱え、ヒールフレイムの杖を振るう。すると、杖の先端から真っ赤な光線が飛び出し、ミニスタードラゴンの翼に向かってもの凄い勢いで迫っていった。
「グワ?」
ミニスタードラゴンは焦ったように体を捻って躱す。俺はその逃げる先へもファイアレーザー。しかしそれもサッと躱される。何回かやったところで、俺は一旦ファイアレーザーを撃つのをやめ、今度は相手の出方を見る。
「グルルルル!」
ミニスタードラゴンは、俺が攻撃をやめたのを隙と見たらしく、唸って炎を吐き出した。その炎はあっという間に俺の身体を包み込む。普通の人間なら灰になるほどの熱さだ。やはり小さくてもドラゴンはドラゴンということなのだろう。だが……
「ふん、大した事無いな。」
【炎耐性】のスキルを所持している俺からすれば、本当に大した事は無い。アクアトピアを使用すると、あっさりと炎は消え去った。
「グワ?」
ミニスタードラゴンは驚いたような声をあげる。これはチャンスだな。
「【ウォーターボム】!」
俺の呪文によって、杖の先端に直径70cm程の水球ができる。もの凄い勢いでミニスタードラゴンに迫る水の砲弾。しかし、奴は炎を吐き出して水球を蒸発させてしまった。
「なっ?」
これにはさすがに驚いた。炎は水に勝てないという世界の条理をあっさりと覆すとは……
「やっぱりドラゴンなんだな。侮れねえ。」
俺はそう言いつつ、鑑定を発動。
ミニスタードラゴン ランクB+
名前:スターライト
保有魔力:???/???
称号:なし
スキル:ファイアブレス(炎を吐き出せるスキル)
炎属性無効(炎属性の悪影響を無効化するスキル)
状態:焦り
「ね、ネームモンスターかよ?」
俺は思わずそう言った。ネームモンスターなど、俺はシルヴァとコバルト以外に見たことが無い。ルキナスさんから聞いたところによると、ネームモンスターは名前が無い同族モンスターより強くなるらしい。実質、コバルトはフレイムイーグルを除く他の鳥系モンスターを統率しているし、シルヴァもモールやワームやウルフを従えられるから、それは間違ってはいないのだろう。つまり……
「こいつも通常種より強いってことか……」
「ギシャアアアアアア!」
俺の呟きに答えるようにミニスタードラゴンが先程までとは明らかに違う、大きな咆哮をあげた。
「グオオオオオオオオオー!」
吼え声と共に、奴の身体が炎に包まれる。すると、奴の雰囲気が一気に変わった。プレッシャーが跳ね上がる。
「まさかあれは……【フレイムウォールコーティング】か?」
俺がベアゴローと戦った時に使った、筋力と耐久力を大幅に上昇させるあの魔法。あれは本来ならば魔力と体力が削られるのだが、こいつは炎属性無効を持っている為その悪影響が無いのだろう。俺にとっては最悪の組み合わせ、相手にとっては最強のカードだ。
「クソッ、【アクアウォールコーティング】!」
俺は炎を纏って突っ込んでくるスターライトに対応する為、自らの身体を水で包み込む【アクアウォールコーティング】という魔法を使用した。これは水に包まれている間魔力と体力が削られていくが、耐久力と物理攻撃力が上がる。今、フレイムウォールコーティングでパワーアップしている奴に対抗するにはこれしかない。
「グオオオオオオオオオー!」
「うおおおおおおおおおー!」
俺とスターライトが真正面からぶつかる。そして、
「グワッ……」
「ぐうっ……」
ぶつかったところから衝撃波が発生。気を抜いたら押し返される。引いた方が負けだ。俺は全身に魔力を込めて、何とか押し返そうとするが、スターライトも炎を大きく燃え上がらせて抵抗。
「グルルルル!」
「負けるかよ!」
俺たちはぶつかった状態のまま、全く動かない。力がほぼ同じなのだろう。どちらも一歩も引かない。しかし、俺の方が圧倒的に不利だ。スターライトはフレイムウォールコーティングのデメリットを受けていないが、俺はアクアウォールコーティングのデメリットを受けている為、魔力と体力がだんだん減っている。現に、奴の方がもう少しでも力を込めたら、俺は押し返されてしまうだろう。このままではまずい……と俺が考えていると、地面の方から声が聞こえてきた。
「ご主人様! 負けないでください!」
「リチャード様! 踏ん張って!」
ティリとキャトルの応援だ。これを聞いた時、俺の中で何かが変わった。はっきり何とは言えないが、確かに何かが変わった。
「うおおおおおおおおおー!」
俺は大声で叫び、気合いを入れ直すと、ニヤリと笑う。スターライトが怪訝そうな顔をした。まあ、この状況で笑うなんて普通ならありえないからな。だが、俺は普通じゃないんだ。
「【アクアウォールコーティング・モードⅡ】!」
こう叫んだ途端、俺の身体を包んでいた水が消え去り、一瞬の後、スターライトがフレイムウォールコーティングごと水に包み込まれた。先程、ウォーターボムを消し去った奴の炎だが、それは向こうの炎の方が量が多かったというだけ。今回は同量だから互角だ。
「グオッ?」
慌てたように暴れて水を振り払おうとするスターライト。だが、そんなもので俺の水壁は振り落とせない。しかも、奴の身体は炎に包まれているのだ。暴れれば暴れる程水と炎が触れ合う回数が多くなり、炎はどんどん消えていく。
「暴れるだけ弱体化することに気付かないのか……所詮は頭がトカゲだな。」
俺はそう言うと、手に力を込め、
「食らえ! 体術武技Lv3スキル、【瓦割り】!」
と言って拳を振り下ろし、怯んだところをヒールフレイムの杖で叩き落とした。スターライトは地面に激突。地面に降りて鑑定してみると、状態の欄は【気絶】となっていた。どうやら勝負あったようだ。
「ふう、俺の勝ちだな。」
そう呟くと、ベアゴロー戦のときと同じような機械的な声が脳内に響いた。
【ダンジョンマスターが体術武技を使用しました。体術スキルをレベルアップします。】
【ダンジョンマスターが杖で物理攻撃をしました。杖術スキルを解放します。】
【ダンジョンマスターのスキル数が10に到達しました。称号【スキル収集家見習い】を入手します。】
【ダンジョンマスターがドラゴンを撃破しました。称号【龍を討伐せし者】を入手します。】
今回は新スキル入手と新称号入手らしい。
「さてと、レッドワイヴァーン、次はお前が相手をしてくれるんだろ?」
『うむ。では、貴様の魔力と体力の回復を待つ。どのくらいで回復する?』
「1時間も要らないだろう。」
『1時間か。ならば、我は戦闘の準備でもしてくるとしよう。』
そう言うと、レッドワイヴァーンは翼を広げて飛び立つ。奴が飛んでいった方を視覚強化して見ると、8kmほど先にレーザーホースの群れがいるのが分かった。きっとあれを襲いに行くんだな。
「今のはそれ程本気出せなかったし、次は全力が出せるか? ストレスの発散をさせて貰えることを期待してるぜ、レッドワイヴァーン。」
俺は徐々に小さくなっていく奴の背中に向けて、こう呟いた。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:140
階層数:14
モンスター数:360
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 50体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
プレデターラビット 2体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
ブルースパロー 20体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:28→37
スキル:鑑定眼(Lv2)
剣術(Lv1)
鎌術(Lv1)
杖術(Lv1)
体術(Lv3→Lv4)
全属性魔法(上級)
無詠唱
炎耐性
毒耐性
呪耐性
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ヒールフレイムの杖(R、炎属性魔術と治癒属性魔術の威力上昇)
神秘の聖銃(SR、邪属性に特効)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)




