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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第4章:マスターと冒険者①

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48.提供返しと宿泊

「本当にごめん! ユリア、許してくれ!」


 ケインさんが道路に土下座している。その前にいるユリアはオロオロした顔で俺を見るが、見られても何もできない。


「も、もういいよ、ケイン。私はリチャードさんの魔法のおかげで別に怪我してないし、ケインに撥ねられたのだって初めてじゃないから。」


 ユリアはそう言うが、ケインさんは頭を上げようとしない。


「ケインさん、いい加減やめてもいいんじゃないですか?」

「いや、しかし……」

「通行の邪魔です。それに、交通事故のプロフェッショナルであるケインさんがいちいち土下座なんてしてたら、明日から郵便配達できなくなりますよ。」

「嫌なあだ名をつけないでください! 何かいつも人を轢いているみたいじゃないですか!」

「実質俺は毎回あなたに轢かれてますけど?」

「ケイン、私も工場勤務時代から合わせて600回以上轢かれてるよ。それに、鍛冶師のヨーゼフさんのことだって800回は轢いてるよね? 他にもギルドに突っ込んだり、他の人のドーイバイクと正面衝突したり……それだけ事故を起こしてるんだから、交通事故のプロフェッショナルって呼ばれてもしょうがないと思うけど。」


 ユリアがこう言うと、ケインさんは黙り込んだ。反論できないらしい。


「ケインさん、あなた今までにどのくらい事故起こしてるんですか?」

「そ、そんなの数えてないから分かりませんよ! で、では僕はこれで失礼します!」


 ケインさんはそう言うと即座にドーイバイクに飛び乗り、来た時の倍は出ているんじゃないかと思う程のスピードで去って行った。


「逃げたか……」

「まあ、いいじゃないですか、ご主人様。ケインさんが起こした事故件数を把握したって意味がありませんし。」

「知っておいて悪い事は無いだろ? まあ、もう逃げられちゃったから追及はできないけど。」


 俺はそう言うと、ユリアの方に向き直り、


「ユリアさんって、聖属性に適性があったりしますか?」


 と唐突に聞いた。


「えっと、私が適性を持っているのは炎属性と氷属性だけなので、聖属性に適性はありません。」

「そうですか。」

「はい。でもなんでそんなことを聞くんですか?」

「いや、ヤスパースで武器を仕入れてきたので、ユリアさんが扱えるようならSRスーパーレアの【神秘の聖銃】を差し上げようと思っていたんです。あれは聖属性に適性のある人しか使えないみたいなので。」


 俺がこう言うと、ユリアは目をまん丸に見開いた。


「ん? どうかしましたか?」

「どうかしましたか? じゃないです! 神秘の聖銃なんてレアな武器、どこで仕入れてきたんですか?」

「ヤスパースのガートン鍛冶屋ですけど。」

「ガートン鍛冶屋! それってあの、ヨーゼフ・ナルカック・ガートンさんのお店ですよね?」

「ええ。」


 俺がそう肯定するとユリアは、


「ガートン鍛冶屋の武器だなんて……ああ、何で私は聖属性に適性が無いんだろう……」


 と急に沈んだ声になって言った。


「あそこの武器が欲しいんですか?」

「それは勿論! リチャードさんはメイン武器が宝石杖だから分からないかもしれませんが、あそこの武器は斬れ味抜群、劣化しにくい、オマケに凄くカッコイイ、と評判なんです! だから私も、あそこで打たれた武器を使いたくて……でも収入が少ないから買えなくて……例え今日の収入を全部使ってもあそこのミスリルソードがやっと買えるか買えないかぐらいですし……」


 そう言って涙を零すユリア。


「ユリアさん、泣かないでください。そんなにあそこの武器が欲しいなら差し上げますから。」


 俺は異次元倉庫からアイアンナイフ、シルバーソード、セイントダガーを取り出しながらそう言う。


「え? こ、これって全部ガートン鍛冶屋のなんですか?」

「ええ。元々ユリアさん用に仕入れた物ですし、3つ全部どうぞ。」

「頂くことはできません! これはリチャードさんがお買い上げになられたんですから!」

「既に俺はユリアさんからシトリンの杖と今夜の宿を提供して頂きましたから、そのお返しです。遠慮なさらないでください。」

「そ、そんな! 価値が対等じゃありません!」

「俺にとっては対等な価値ですよ。まあ、でもどうしても受け取らないと仰るのなら、俺は使わないので返品してきます。ついでに、俺から差し上げられる物は何もないので、今夜宿泊させて頂くという話もナシで。」

「え? そ、そんな……」


 泣きそうな声で呟くユリア。俺はそれを見て、ティリにチラッと目配せする。ティリは心得たとばかりに頷くと、ユリアの前に飛んでいった。


「ユリア様、このお話はユリア様にとってデメリットはありません。なぜ武器を受け取ろうとなさらないのですか?」

「それは……リチャードさんに迷惑をかける訳にはいかないので……」

「そのあなたの態度がご主人様に迷惑をかけているとは気付かないのですか? ご主人様は、ダンジョン内で武器を失われたユリア様の為にわざわざヤスパースまで行って武器を購入なさったのですよ?」

「じ、じゃあ、あの時仰っていた用事というのは……」

「ユリア様の武器の調達です。ユリア様には共に戦う仲間として良い武器を持っていて貰いたいとお思いになられたご主人様は、急遽ヤスパースへ向かうとお決めになったのです。」

「し、しかしリチャードさんにお金を使わせて武器を得るというのは……」

「全く、面倒臭い人ですね。自分の気持ちに素直になられればいいのに。【ブロック・レイ】!」


 ティリが呪文を唱えると、ユリアはつらつらと喋り出した。


「あのナイフも剣も欲しかった物です。でも、あれはリチャードさんがお買い上げになった物だから、私が貰う訳にはいかない。本当はとっても欲しいけど、我慢しなきゃ駄目。リチャードさんに嫌われるなんて、死んでも嫌。私があれを躊躇わずに貰ったらはしたないと思われるかもしれないから受け取る訳には……」

「ああっ! もう! 本当面倒臭いですね! 欲しいならくださいって言っちゃえばいいのに!」

「まあまあ、ティリ。ユリアもそれなりに考えてたみたいだし、良いじゃないか。取り敢えず、魔法を解除して。」

「かしこまりました。【ストップ】!」


 ティリの呪文によって、ユリアの喋りが止まった。


「ユリアさん、この武器を受け取られたところで俺は別にユリアさんをはしたないと思ったりはしません。だから、受け取って貰えませんか?」

「で、では……」


 そう言いながら、ユリアは武器をおずおずと受け取る。


「欲しかった物なら遠慮せずに受け取って頂いた方が俺は嬉しいですよ。」

「分かりました。これからは気を付けます。」


 ユリアは申し訳なさそうにそう言うと、


「ではリチャードさん、ティリさん、中へどうぞ。」


 と言って、家のドアを開け、俺たちを中へ招き入れた。



「凄いですね。これを全部ユリアさんが?」

「はい! リチャードさんの為に腕によりをかけて作りました。沢山召し上がってください!」


 俺たちが通されたダイニングのテーブルの上には、ユリアが作った料理が所狭しと並んでいる。


「凄いです! 冒険者が作る料理と言えば、サバイバル向けの料理、例えば生肉とか干し肉とか硬いパンとかだと思っていましたが、ユリア様は通常の人以上の料理ができるのですね!」


 ティリも感激した声をあげる。ユリアは少し照れくさそうに頬を赤くした。


「そ、そんなことないですよ。それより早く召し上がってください。冷めちゃいますので。」

「はい。いただきます。」


 俺はそう言って軽く手を合わせると、スープを口に運ぶ。


「うん、美味しい。モンスターレストランにも引けを取らないくらいです。」

「え? モンスターレストランって、あの王都を中心に全国展開している有名チェーンのですか?」

「有名チェーンかどうかは知りませんけど、ホイジンガにあるお店のです。あそこのクラムチャウダーはかなり美味しかったんですけど、このスープもそれに負けないくらいです。」

「そ、そんなに……お口に合ったようで何よりです!」


 ユリアは顔を真っ赤にしながらはにかみ、そう言う。ティリには及ばないが、やっぱり可愛い。


「お、おかわりもありますから、もっとどうぞ。」

「はい。」


 俺はユリアにそう応えると、箸を進めるのだった。



「成程! リチャードさんは魔狼族モンスターに遭遇経験があるから簡単に奥まで進めたんですね!」

「まあ、彼らは体毛の色で弱点属性が分かりますからね。」


 夕食後、俺はリビングでうちのダンジョンモンスターについて話していた。シルヴァやビッガースネイク、コバルトなど強力戦力のことは隠しつつ、他のモンスターたちのことを俺が冒険の中で出会ったということにして。


「イートシャドウ系のモンスターは、影の何かを使って闇属性の攻撃をしてくることが多いんで、警戒が必要なんですよね。俺が会ったことのある奴の中で、一番手強いのはシノビシャドウです。」

「それはどんな生態のモンスターなんですか?」

「ああ、イートシャドウ時から受け継ぐスキル、【影潜】で影に潜り、新スキルの【影縛】で影を縛り付けて動きを封じてきます。また、死角から【影手裏剣】と呼ばれる闇魔力の刃を飛ばして攻撃してきたり、その手裏剣を短剣のように使用して戦ったり……動きも素早いので、討伐は難しいですね。」

「どうやって倒したんですか?」

「こいつも倒してはいません。聖魔法の【セイントアロー】で影手裏剣を打ち落としながら、光魔法【フラッシュ】を浴びせて退散させましたけど。闇属性には光ですからね。」

「勉強になります! 他には何かありませんか?」

「まだありますけど、もう遅いですし、話の続きはまた今度でどうですか? 俺は明後日からちょっと遠くのダンジョン生態調査に行きますので、そこから帰ってきてからの方がもっと色々話せますし。」


 俺がこう言うと、ユリアはちょっと残念そうな顔をしたが、


「分かりました。じゃあ、また次の機会に。」


 と言った。そして、


「では、今日はもうお休みになられますか?」


 と聞いてきた。


「あ、はい。」


 俺がそう答えると、ユリアは、


「ティリさんはどうしますか?」


 とティリにも聞く。


「私はご主人様と行動を共にさせて頂きます。」

「分かりました。じゃあ、ティリさん用のベッドを作りますね。」


 ユリアはそう言うと、バスケットを持って来て、その中にタオルを敷き詰める。あっという間にティリのベッドが完成した。


「ベッドルームは2階です。こちらへどうぞ。」

「はい。」


 俺はユリアに促されるがまま、2階へ上がった。



「……ユリアさん。」

「は、はい。」

「これはまずいんじゃないでしょうか?」

「な、何がでしょう?」


 俺はベッドルームでユリアに詰め寄っていた。なぜって? それは……


「ベットが1つしかないじゃないですか! ここで寝るっていうのはさすがにまずいでしょう!」

「だ、大丈夫です。私は何もしませんから!」

「そういう問題じゃありません!」

「問題ないでしょう、ご主人様。」


 ティリが割り込んできた。


「ご主人様が防御魔法を使えば、何も問題は起きないはずです。」

「あ、そうか。気付かなかった。ユリアさん、バリア張ってもいいですか?」

「はい、勿論です!」

「じゃあ、【オールサイド・クリティカルシールド】!」


 俺は防御魔法でバリアを張った。


「私は先に眠らせて頂きます。」


 ティリは俺のバリアに触れると、さっさと枕元に置かれた即席ベッドに潜り込む。


「ユリアさん、じゃあ俺も眠らせて貰います。」

「あ、私も眠ります。」


 俺はベッドに入る。ユリアもベッドに入った。


「おやすみなさい、ユリアさん。」

「おやすみなさい、リチャードさん。」


 俺たちはそう挨拶を交わすと、電気を消す。バリアのおかげで何か間違いが起きることも無い。俺は安心して夢の世界へと旅立つのだった。

【ダンジョンステータス】

ダンジョン名:友好獣のダンジョン

深さ:140

階層数:14

モンスター数:360

    内訳:ジャイアントモール   10体

       キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ウルフ         50体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       プレデターラビット    2体

       ビッグワーム      25体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       レッドスワロー     12体

       フレイムイーグル     5体

       イートシャドウ     10体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ブルースパロー     20体

       ブルースワロー     10体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    3体


友好条約締結者

リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)

レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)



【リチャードのステータス】

リチャード・ルドルフ・イクスティンク

種族:人間

職業:ダンジョンマスター、魔術師

レベル:21

スキル:鑑定眼(Lv2)

    全属性魔法(上級)

    無詠唱

    炎耐性

    毒耐性

    呪耐性

称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)

   大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)


所持武器:アイアンナイフ(ノーマル、鉄製のナイフ)

     ヒールフレイムの杖(レア、炎属性魔術と治癒属性魔術の威力上昇)

     神秘の聖銃(SRスーパーレア、邪属性に特効)

     ソウル・ウォーサイズ(SSRダブルスーパーレア、死霊系に特効)

     ドラゴンスレイヤー(SSRダブルスーパーレア、全属性対応)

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