46.鍛冶屋の恩返し
「リチャード殿、助かったぞ! あの迷惑者を始末して貰えて、ありがたい事この上ない!」
ガートン鍛冶屋に戻った瞬間、俺はヨーゼフさんにこう声をかけられた。
「始末って……人聞きの悪い事言わないでくださいよ。ただ捕縛して連行してポリスセンターに送致して貰っただけですから。」
「ハハハ! 冗談が上手いな、リチャード殿! 本当はポリスセンターではなく墓場に送致して貰ったのだろう?」
「違います! レオナルドさんとかイライズさんに聞けば分かりますから!」
「ふむ、ではそういうことにしておこうか……ククク……」
なんか勝手に勘違いをしているヨーゼフさん。訂正は面倒臭いので、俺は放置することにした。
「まあ、それはそうと、今日は何の用だ?」
「ああ、武器を買いに来たんです。探索者用と魔術師用の武器をそれぞれ2、3個ずつお願いできますか?」
「予算はどのくらいある?」
「えっと、取り敢えず1000万ゴルドです。」
俺はローブのポケットからミスリル貨を取り出してカウンターに置く。ヨーゼフさんはそれを手に取ると、
「ふむ……本物だな。分かった。では、色々持ってくるから、少し待っていてくれ。」
ミスリル貨を俺に返し、鍛冶屋の奥へと歩いて行ってしまった。
「ティリ、ヨーゼフさんはミスリル貨を見ても全然驚いてなかったけど、何でだと思う?」
「見慣れてるんじゃないですか? ミスリル製の武器とか売ってるみたいですし。」
ティリは店頭に並べられているミスリルソードやミスリルバックラーを指差し、ちょこんと首を傾げた。可愛い。
「ああ、そういえば、バックラーでも500万ゴルドはするんだっけ。そんなの売ってるなら、ミスリル貨ぐらい見慣れてるよな。」
俺は少し溜息を吐くと、ヨーゼフさんが戻ってくるのを待つのだった。
「待たせてすまない。今あるのはこんなところだ。」
10分後、ヨーゼフさんは店の奥から持って来た武器や防具を並べながらそう言った。ナイフや長剣はもとより、大剣、盾、双剣、レイピア、ワンド、メイス、その他諸々。もの凄い量だ。
「何か望む武器はあるか?」
「えーと、探索者用にナイフと長剣、あと1つ。魔術師用は適当でいいです。」
「ふむ……魔術師用はワンドか? ジュエルワンドとか、アイアンワンドとか……」
「あ、いえ。杖はもうあるので、近接用の武器でお願いします。」
「杖は近接用の武器だぞ? 武術的スキルに【杖術】があるように、物理的な攻撃ができるだろう?」
「杖で殴り飛ばすんじゃ、すぐ復活してくる可能性があるじゃないですか。もっとしっかりダメージを与えられるのが欲しいんです。」
「ああ、そういうことか。ならば、このあたりがベストだろう。」
ヨーゼフさんは6種の武器を差し出してきた。俺は早速鑑定。
【アイアンナイフ】 アイテムレアランク:N
鉄でできたナイフ。斬れ味は良いが、劣化が早い。
【シルバーソード】 アイテムレアランク:R
銀でできた長剣。斬撃と刺撃に適し、刃毀れを起こさないという特殊効果がある。
【セイントダガー】 アイテムレアランク:R
聖なる加護を受けた鉄でできた短剣。持ち主に邪耐性のスキルを与え、邪属性のモンスターに特効の攻撃力を示す。
【神秘の聖銃】 アイテムレアランク:SR
聖属性の魔力が籠もった弾丸を発射できる銃。聖属性に適性のある者ならば誰でも使えるが、適性の無い者が使用した場合、99.99%の確率で暴発する。
【ソウル・ウォーサイズ】 アイテムレアランク:SSR
死霊系モンスターにのみダメージを与えられるウォーサイズ。特に霊族や不死族モンスターに対しては効果が大きい。持ち主に【呪耐性】のスキルと呪属性への適性を与える。更に、倒したモンスターの急所に刺すことでそのモンスターの魂を浄化し、捕らえることができる。
【ドラゴンスレイヤー】 アイテムレアランク:SSR
ドラゴン族の中でも特に硬い鱗を持つジュエルドラゴンの鱗を加工して作成された魔法剣。斬撃、刺撃、打撃の全てに適するが、魔術師か魔法剣士でなければ扱うことができない。複数の魔術属性を同時に付与することが可能。
「こいつらを全部合わせたら5000万ゴルドだ。だが、リチャード殿には先程迷惑者を始末して貰った恩があるからな……うむ、300万ゴルドぐらいが妥当な値段だろう。」
ヨーゼフさんのこのセリフに、俺は驚愕した。
「えええ? ちょ、ちょっと待ってください!」
「何だ? これ以上はどんなに粘られても割り引かんぞ。」
「違いますよ! SRのミスリルバックラーですら500万ゴルドはするでしょう? ってことは、SSRであるソウル・ウォーサイズやドラゴンスレイヤーはもっと高いはずです。それをこんなに安くしてもらうのは……」
「そんなことか。心配は無用だ。この2つを使うことが出来るのは魔術師のみ。だが、魔術師にとってはワンドの方が使い勝手が良い。」
「つまり、売れないってことですか?」
「うむ。ご明察だ。リチャード殿を在庫処分係のように使うのは悪いのだが、これらを使える奴など、リチャード殿とルキナス以外にはいないだろう。普通の魔術師にやっても持て余すか暴走させるだけだろうからな。」
「そういう理由なら頂きますけど、本当にいいんですか?」
「ああ。」
「じゃあ、ありがたく。支払いはこれでお願いします。」
俺はミスリル貨を出す。ヨーゼフさんは俺に釣り銭としてプラチナ貨を7枚手渡すと、
「毎度あり。あ、それと、こいつはオマケだ。持っていけ。」
と、アイアンナイフをもう1本差し出してきた。
「え? 良いんですか?」
「構わん。リチャード殿は俺の悩みを2つも解決してくれたのだからな。ありあわせですまないが、感謝を示したいのだ。ぜひ持って行ってくれ!」
「別にそんなに気を遣って頂かなくてもいいんですが……まあ、くださると仰るなら。ありがとうございます。」
俺はアイアンナイフをありがたく受け取る。そして、購入した武器を異次元倉庫に放り込むと、ガートン鍛冶屋を後にした。ついでだし、あの人にも会って行こうかな……と思いながら。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:140
階層数:14
モンスター数:360
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 50体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
プレデターラビット 2体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
ブルースパロー 20体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:21
スキル:鑑定眼(Lv2)
全属性魔法(上級)
無詠唱
炎耐性
毒耐性
呪耐性
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ヒールフレイムの杖(R、炎属性魔術と治癒属性魔術の威力上昇)
神秘の聖銃(SR、邪属性に特効)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)




