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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第4章:マスターと冒険者①

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38.草原の救助活動

「いくら血の匂いを嗅いで興奮してるからって草原まで出て行くなよ……どんだけ食い意地張ってるんだ、あいつらは……」


 俺は呆れ気味にそう呟いた。ウィンドウにはフェリアイルステップで探索者シーカーを追いかけているプレデターラビットが映っている。


「あの調子だと、30分後にはあの子確実に骨だけになってるだろうし……仕方ない、行くか。」

「ご主人様、まさか助けに行くおつもりですか?」


 俺がルビーの杖を手に持って立ち上がったのを見て、ティリが訝しげな顔をしながらそう聞く。


「そうだけど。何か問題でもあるのか?」

「問題大ありですよ! もしそんなことをして、あの子にダンジョンマスターだってバレたりしたら……」

「そんなドジは踏まないっての。それに、あの子は武器失ってるし、俺だって女の子に力で負けるほど非力じゃない。心配しなくても大丈夫だって。」


 俺がこう言うと、ティリは泣きそうな顔になって、こう言った。


「ご主人様、これからもの凄く失礼なことを言わせて頂きます。怒らないで貰えますか?」

「ああ。」

「では、遠慮なく。」


 ティリはそこで一度言葉を切ると、真顔になって、


「失礼ながら、ご主人様の脳にはコナヒョウヒダニでも湧いていらっしゃるのではないでしょうか?」


 と、マジで失礼なことを言ってきた。


「俺の脳はお好み焼き粉か?」

「だ、だって、そんな感じじゃないですか! 冒険者を助けるなんて危険すぎる行動をしようとして……」

「最初にあの子を殺そうとした俺を止めたのは誰だよ。それに、大きな情報は取られてないんだから、平気だって。」

「ご主人様がそこまで仰るならば、私は反論致しませんが……」


 ティリはルキナスさんとルーアちゃんをチラッと見る。


「リチャード殿の好きになさるが良い。」

「私は基本マスターの判断に異論は挟みませんから。」


 2人とも了承してくれた。


「じゃあ、行ってきます。ヤバくなったら帰って来るから、心配しないで待っていてください。」


 俺はそう言うと、転移陣でフェリアイルステップへと転移したのだった。



「久々の外だな。それはそうと、あの子は……」


 俺はそう呟きながら首を回す。すると、10m程先で2体のプレデターラビットに追い回されている女の子が目に入った。間違いなくあの探索者だ。戦えるのかどうかちょっと傍観していると、プレデターラビットは2匹同時に跳躍し、探索者の喉に向かって突っかかっていく。


「危ない!」


 俺は急いで駆け寄ると、ルビーの杖を突き出した。その杖はプレデターラビットたちの行方を阻み、探索者の女の子、ユリアへの攻撃を防ぐ。プレデターラビットたちはキョロキョロと首を回して、明らかに動揺し始めた。本来侵入者を排除するはずの俺が侵入者を守っているのだから当然か。


「あ、あなたは一体……?」

「俺はディック、しがない魔術師ですよ。このダンジョンの深層まで行っていたんですが、不穏な気配がしたので転移の魔法陣を使用して急いで戻ってきたんです。まあ、間に合って良かった。」


 俺は当たり障りのない、それでいて嘘ではないことを言う。その時、プレデターラビットが牙を剥いて俺に襲いかかってきた。


「おっと! そんなのは当たりませんよ!」


 鑑定したところ、状態の欄に【演技】と出ている為、俺の考えを汲んだんだろう。


「俺が引きつけているうちに、早く逃げてください!」

「え? で、でも……」

「俺は平気ですから!」


 俺はそう言いながら威力を下げたウィンドカッターを放つ。無論、身軽なプレデターラビットたちは跳躍して軽々と躱し、そのまま俺に突っ込んできた。そこで俺は、


「爆ぜろ! 【ファイアボム】!」


 と叫ぶ。その途端、俺のルビーの杖からいくつもの火球が生まれ、それがプレデターラビットめがけて飛んでいった。そして、その火球はプレデターラビットに触れる直前に爆音を響かせて爆発。熱風が吹き荒れ、プレデターラビットたちが悲鳴を上げる。


「キュキュキュー!」

「この程度で悲鳴とは情けないですね。ダンジョン外に飛び出してまで人を追い回すのなら、もう少し根性を付けるべきでしょう。」


 俺はそう言うと、杖をブルンと振るい、


「燃え尽きるがいい! 【フレイムランス】!」


 と叫んで威力を落とした炎の槍を放つ。それはプレデターラビットの脇を掠め、フェリアイルステップに一本の灰の道を作り上げた。威力落としてこれとか、本気でやったらシャレにならないな。俺の規格外の魔力量とルビーの杖の炎属性魔法威力増幅効果が混ざる訳だし。っと、こんなこと考えている場合じゃない。


「おっと、外してしまいましたか。まあいいでしょう。次は当てますから。」


 俺はそう言って、プレデターラビットたちに杖の先端を向ける。『後で何か食べ物あげるから、今はおとなしくダンジョン内に戻ってくれ!』とテレパシーで送りながら。すると、彼らは、


「キュッキュー!」


 と鳴いて、ダンジョンの中へと駆け込んでいった。確実に喜んでいる鳴き声だったが、この状況では悲鳴にしか聞こえない。


「大丈夫でしたか?」


 結局最後まで逃げなかったユリアの方を向いて、俺がそう聞くと、ユリアはおずおずと頷いた。そして、


「た、助けてくださってありがとうございます。でも、何で……?」


 と聞いてきた。


「先程も言いましたが、入り口付近で不穏な気配がした。だから来たんですよ。」

「えと、その、良かったんですか? 見ず知らずの私なんかの為にダンジョンの探索を中止して……」

「ああ、気にしないでください。俺が勝手に戻ってきたんですし、ダンジョンにはまた再挑戦すればいいだけです。それに、深層にいたと言っても、あなたがいた地点より深いところにいた、というだけのこと。俺がいたのは深さ25の地点ですから。」


 俺は滑らかに嘘を吐く。さすがに全部バラす訳にはいかないからな。ティリにも怒られそうだし。


「えぇ? に、25って……情報が無い状況でそこまで行かれたんですか?」

「まあ、雑魚敵ばかりでしたし。俺は各ダンジョンのモンスター種数や生態の調査を請け負っているので、こういうのには慣れているんですよ。」


 俺がこう言うと、ユリアは目を輝かせた。


「ん? どうしました?」


 俺が聞くと、ユリアはハッとした顔になり、


「あの、実は私、このダンジョンの調査をしに来た探索者なのですが、深さ10で撤退せざるを得ない状況に追い込まれてしまったんです。それで、その……無理なお願いだということは分かっているのですが、あなたが行った深さ25までの情報を私に教えて頂けないでしょうか? 報酬が必要でしたら、私が出せる限度額いっぱいまでお支払いします。ですから、どうかお願いします!」


 と言って、腰を直角に折った。


「んー、まあ、別にいいですよ。減る物じゃないですし、報酬は必要ありません。」


 俺はそう言って微笑むと、階層の分かれ目ごとに厚い土壁があることと、ブルースパロー、ブルースワロー、ウルフ、フレイムウルフ、ジャイアントワーム以外にビッグワーム、ファイアウルフ、ウォーターウルフ、ソイルウルフがいることを伝えた。


「アクアウルフとアースウルフは見ていませんが、その進化前の種はいましたし、フレイムウルフがいたということも視野に入れて考えると、いる可能性は極めて高いですね。あとは……ああ、イートシャドウがいましたよ。ウォーターウルフに気を取られている間に足の影を喰われた時は焦りました。なんとかフラッシュライトで影を作り直したから助かりましたけど、危なかったです。」

「い、イートシャドウまでいたんですか……」


 ユリアは俺が言うことに相槌を打ちながら、情報を羊皮紙に書き込み、


「助かりました。情報提供ありがとうございます!」


 と俺に礼を言って、頭を下げた。


「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ。お役に立てたようで何よりです。」


 俺はそう言ってから、


「あ、そういえばお名前を伺っていませんでしたね。教えて頂けますか?」


 と聞いた。


「あ、も、申し訳ありません。名前も明かさずに……私はウェーバーギルドのギルドメンバーでB+ランクの一級探索者、ユリア・エステル・ローレライと申します。」

「ユリアさん、ですか。俺はリチャード・ルドルフ・イクスティンクです。先程はディックと名乗りましたが、本当はディックと呼ばれるのはちょっと嫌なので、そうは呼ばないでください。ああ、それと……」

「どうされました?」

「万が一、俺がモンスターを見間違えていたら、あなたのギルドでの信用が下がってしまいますよね? それに、今からウェーバーに歩いて戻るのもお辛いでしょう。送りますよ。俺が見たモンスターだとギルドで言えば、もし見間違えていたとしてもあなたの信用は下がらないですし。」


 俺はそう言うと、ドーイバイクを召喚した。


「え? いや、そこまでして頂く訳には……」

「遠慮しないでください。さぞお疲れでしょう?」

「で、ではお言葉に甘えて……」


 ユリアはそう言うと、遠慮がちにドーイバイクの後部座席に乗り込んだ。


「あ、ちょっと待っていて貰えますか?」

「あ、はい。何か?」

「危うく従者を忘れるところでした。急いで来たので、従者は深さ25に置いてきたんです。すぐ迎えに行くから、と言って。」


 俺はユリアにこう言うと、ダンジョンの中に入り、コントロールルームに転移した。そして、ルキナスさんとルーアちゃんに留守番を頼むと、ティリを肩に乗せて深さ1の入り口付近に転移し、ダンジョン外に出る。そして、


「お待たせしました。」


 と言ってから、運転席に乗り込み、ウェーバーへと向かってドーイバイクを発進させたのだった。 

ダンジョン名:友好獣のダンジョン

深さ:140

階層数:14

モンスター数:360

    内訳:ジャイアントモール   10体

       キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ウルフ         50体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       プレデターラビット    2体

       ビッグワーム      25体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       レッドスワロー     12体

       フレイムイーグル     5体

       イートシャドウ     10体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ブルースパロー     20体

       ブルースワロー     10体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    3体


友好条約締結者

リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)

レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)

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