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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第4章:マスターと冒険者①

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side 探索者 深さ10

「お、お願いです……この深さには、どうかこの深さには……」


 ユリアは何かに縋るような口調でそう言った。深さ7~深さ9の30km以上に及ぶダンジョン内のルートで、ユリアは全くモンスターとエンカウントしておらず、また1つのトラップにも引っかかっていないのだ。トラップはモンスターが階層移動後にアースウルフとソイルウルフが作成し直した階層ごとの厚い土壁、深さ39の沼地、深さ40の落とし穴群など大量に用意されてはいるが、それでも深さ10が最初。また、深さ7~深さ9に全くモンスターがいなかった理由は、ただ単にリチャードが配置を忘れただけなのだが、そんなことを知らないユリアはこのダンジョンがもの凄く不気味に思えてきているのだ。


「もうこの際、ドラゴンとかガルーダとかグリフォンとかクトゥルフとか出てきてくれませんかね……そうなれば逃げ帰る大義名分いいわけが生まれるのですから……お家に帰りたいです……」


 迷子のようなことを言いだすユリア。自らの発言の矛盾(陸上系ダンジョンに水中棲息モンスターのクトゥルフがいる訳がないということ)にすら気付いていない。因みに、この様子を見ながら少し気の毒そうな顔をしている人間の男と獣人の女、『自意識過剰はこれだから……』と呆れ気味に呟く妖精、『泣き言を言うくらいならば最初からクエストなど受注しなければ良いのに……バカの極みですな。奴らよりもずっと……』と非情な言葉を吐きつつ、過去を思い出してダークなオーラを出している闇属性が苦手なはずの魔術師がいたのだが、やはりユリアの知ったことでは無い。


「うう……何でいないんですか……何でもいいから出てきてください……」


 いよいよ涙目になったユリア。と、その時、ミャーンミャーンミャーンと何かの鳴くような音がユリアの耳に飛び込んできた。


「! い、今の音は……このルートの奥の方からですね! 行ってみましょう!」


 ユリアは急いでダッシュシューズに魔力を込めると、今までにない速度で駆けだした。そこに強大な戦力が集結しているなどとは考えもせずに……



「な、なぜ……なぜ鳥系専門のはずのダンジョンに獣系モンスターのウルフが……しかもこんなに大量に……」


 ユリアは驚愕していた。無理もない。鳥系専門とばかり思っていたダンジョンに獣系モンスターであるウルフが50体もいるとは思っていなかったのだろう。


「ま、まさかあのブルースパローたちはフェイクだったのですか……? 簡単に逃げられないように深くまで誘い込んでから倒すための……」


 ユリアはそう呟きながらも震える手で長剣を抜く。恐怖に怯えながらも、ウルフに立ち向かおうとしているのだ。


「い、いくらいようとも所詮ウルフはウルフ! 雑兵です! こんなモンスターに遅れは取りませんよ!」


 そう叫び、先頭にいたウルフに斬りかかろうとしたユリア。しかし、そこに真上から炎が襲いかかる。


「えっ? キャッ!」


 間一髪、熱波を感じて飛び退いたユリアが上を向くと、そこには真っ赤な体毛を逆立たせた、通常のウルフの3倍ほどの体躯のウルフがいた。それはウルフの群れとユリアとの間にスタッと着地すると、威嚇の唸り声をあげる。


「グァルルルルルル!」

「こ、これはフレイムウルフ? 第二進化種まで……しかもあれは身体能力の高いファイアウルフの進化種ですから身体能力は人間とは比べものにならない程高い! 危険です!」


 ユリアは咄嗟にマジックポーチに手を伸ばし、今度は垂直に高々と跳躍したフレイムウルフに向けてスタンボールを投げる。しかし、そのボールがフレイムウルフに当たる事は無かった。ボールがユリアの手から離れた瞬間、黒い何かが音も無く飛んできて、スタンボールを破壊したのだ。そしてスタンボールは割れた時に最も近くにいた者に麻痺スタンのバッドステータスを与える。従って……


「う、動けない……」


 その効果はユリアに発現する。因みに、スタンボールを破壊したのはシノビシャドウの影手裏剣。フレイムウルフの影に隠れ続けていたシノビシャドウは、リチャードの命令により影の中を移動してウルフの群れの後方に位置するコバルトの影から飛び出すと、影手裏剣を放った。そして、間髪を入れずに影に埋没してその場から消え去ったのだ。その一連の動作にかかった時間は僅か0.00025秒。目で追うことは当然不可能なので、ユリアが気付けないのも頷ける。


「う、動いて……お願い、私の身体! 動いて! お願い!」


 ユリアは半狂乱になりながら叫ぶが、そんなことで解ける程スタンボールの与える麻痺のバッドステータスは弱くない。ヒュージ級のドラゴンの動きすら封じるほど強力な麻痺を与えるスタンボールの効果に抗う方法など、ただでさえ非力な探索者シーカーである彼女にはないのだった。


「こ、こんなのは嫌です……来ないで……こっちに来ないで……や、やめて……」


 そうユリアは言うが、ウルフたちはそんな言葉など意に介さず、一歩一歩確実に近寄ってくる。そして、先程跳躍したフレイムウルフが業火を吐き出した。その炎はユリアに向かって真っすぐに襲いかかる。


「キャー!」


 ユリアがそう叫んで必死に身をよじろうとした瞬間、スタンボールの効果が切れた。ユリアはすぐさま横に転がって炎を躱すと、急いで撤退を開始する。後ろからアレ・・が迫ってきていることなどには全く気付かずに……

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