表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第4章:マスターと冒険者①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/200

37.嬉しい誤算

「うーん、こいつ、中々の手練れだな……まあ、あいつらはあくまで囮役だけど……」


 俺はコントロールルームで呻いた。ウィンドウには深さ3のルートの真ん中辺りでブルースパロー3体とブルースワロー2体を相手取って戦っている探索者シーカーの女の子が映っている。じっと見ていると、彼女は高く跳躍し、重力1.3倍ということを感じさせない程の素早さでブルースワローの翼を斬りつけた。ブルースワローは慌てて躱そうとするが、少し斬られたようだ。パッ、と青い羽毛と赤い血が飛び散り、ブルースワローの甲高い悲鳴が響く。


「またやられたか。お前たち、緊急退避だ!」


 俺がダンジョンコアを通して命令を下すと、ブルースパローたちはダンジョンの奥へと撤退した。彼らが命を落とさずに済んで良かった良かったと胸を撫で下ろしていると、


『何だか妙ですね……』


 とウィンドウから女の子の声が聞こえてきた。


『普通のダンジョンモンスターは、ダンジョンの中枢であるダンジョンコアを守る為に命を惜しまず戦いを挑んでくるはずです。それなのに少し傷付いただけで逃げていくなんて……ダンジョン内の魔力マナにはモンスターの治癒効果があるのだから、もう少し傷を負うまで戦ったっていいはずなのに……これでは肩慣らしにもなりませんね。腰抜けのモンスターもいたものです。』


 このセリフに俺はブチギレた。うちのモンスターを腰抜け呼ばわりとは、少し冥界に行って反省して貰わないとな。そう思って強力なトラップを設置しようとしたのだが、ティリに止められた。


「ご主人様! ダメです! 思いとどまってください! あの子が無事に脱出しないと新しい冒険者が来ません!」

「……クソッ! 分かったよ。本音を言えば今すぐにでもっちまいたいんだけどな。」


 もはや平和主義者とは思えないセリフを俺は吐く。


「リチャード殿、これを飲めば少しは落ち着けるはずですぞ。カモミールティーには興奮を抑える作用がありますので。」

「ああ、ありがとうございます、ルキナスさん。」


 俺はルキナスさんが淹れてくれたカモミールティーを飲んで、やっと少し落ち着いた。


「しかし、この子凄すぎるだろ。運もめっちゃいいし。何で入り口のところの宝箱からスタンボールとかダッシュシューズとか出るんだよ……重力1.3倍のトラップの意味がねえじゃねえか! せっかくDP5万も支払ったってのに……」


 俺はそう言って溜息を吐く。ここまで、あの子は一つも傷を負っていないのだ。体当たりもつつく攻撃も鋭いかぎ爪の攻撃も、一切当たらない。全てを躱し、軽やかな動きと流れるような足さばきでブルースパローたちを混乱させると、地の利も制空権もあるこちらに長剣でダメージを与えてくる。見事としか言いようが無い。


「ウルフたちは50体いるから、ジョブ能力上は索敵能力と隠遁力に優れるが非力である探索者を抑えきれないことはないと思うけど……とりあえず更に準備しておこう。フレイムウルフ、1体だけ影にシノビシャドウを潜らせて深さ10へ向かってくれ。」


 そう命令を下すと、深層にいたフレイムウルフが1体駆けだした。さすがは身体能力の高いモンスター。階層ごとにある厚い土の壁を体当たりで粉々にし、2分とかけずにウルフたちのところに到着した。因みに壁はアースウルフが遠隔の地魔法ですぐ作り直してくれた。


「そこの戦闘中の指示はお前に一任する。ただ、命は最優先だ。こっちも向こうも。奪わず、失わず、敵を撤退させろ! 負わせていい傷は何とか動ける程度までだ。動けないようにはするな!」

『アウ!』


 フレイムウルフは『勿論!』と言っているように一声鳴いた。


「さて、あの子は……クソッ! またやられちまったか! お前たち、緊急退避だ!」


 深さ4のルートの最初の部分でまたブルースパローたちがやられていた。俺はすぐに退避命令を出す。


「このままじゃジリ貧だぞ……この子、予想以上に強い……本来の作戦ではあいつらでちょいちょいHPを削って、重力1.3倍の効果と相まって疲労が溜まった頃にウルフ軍団、って感じだったんだが……」


 俺がこう呟いた時、ダンジョンの入り口付近を映していたウィンドウに動きがあった。横道から急にジャイアントワームが2体這い出してきたのだ。恐らくあの少女が来たときは横道の整備中だったのだろう。これは嬉しい誤算だ。


「ジャイアントワーム、ウルフたちと敵の戦闘が始まって少ししたら、後ろから急襲してくれ! 不意討ちの奇襲だ! 粘液拘束は使用しても構わないが、窒息すると困るから顔にはかけるな! 命令は以上! ダンジョン奥へ向かえ!」


 こう俺が命令を下すと、ジャイアントワームたちは5m近い巨体をゆっくりと動かしながらダンジョン内を移動し始めた。


「これで挟み撃ちができるからちょっとは有利になったかな。で、あの子は……え? 嘘だろ? もう深さ6かよ! 足速っ!」


 探索者の子はさっき深さ4のルートの最初の部分にいたはずなのに、俺が少しウィンドウから目を離してジャイアントワームに指示を出している間に深さ6まで移動していた。ダッシュシューズの恩恵もあるのだろうが、それにしたって速すぎる。しかし、俺がさらに深さ10に戦力を集めようとした時、


『……奇妙ですね。』


 とウィンドウから声が聞こえた。


『あれしかいないということは、ここは鳥系モンスター専門のダンジョンと考えていいでしょう。』


 この言葉に俺は目を輝かせた。彼女はこのダンジョンを鳥系モンスター専門のダンジョンと勘違いしたらしい。鳥系モンスター専門と思わせる為ではなく、単に奥へ誘い込むための囮として配置しておいたブルースパローたちがまさか致命的な勘違いを誘発するとは。2つ目の嬉しい誤算が起こった瞬間だった。

ダンジョン名:友好獣のダンジョン

深さ:140

階層数:14

モンスター数:360

    内訳:ジャイアントモール   10体

       キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ウルフ         50体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       プレデターラビット    2体

       ビッグワーム      25体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       レッドスワロー     12体

       フレイムイーグル     5体

       イートシャドウ     10体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ブルースパロー     20体

       ブルースワロー     10体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    3体


友好条約締結者

リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)

レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ