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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第3章:マスターと街

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side ??? 憎む心と2度目の派遣

「はあ……せっかく人間のダンジョンマスターが見つかったというのに、まさか繁殖期に被るなんて……」


 【ドラゴンの巣窟】のダンジョンマスター、リーン・クレイティブ・カールは地下210階のコントロールルームで溜息を吐いた。腹心のレッドワイヴァーン、レッディルが調査した人間のダンジョンマスターがいる可能性の高いダンジョン。一刻も早くそこのダンジョンと一戦交えてダンジョンマスターを捕虜にしたい所なのだが、今の時期は丁度フライングドラゴンの繁殖シーズン。気が立っているフライングドラゴンたちが落ち着くまで、あと10日はかかるのだ。


「こんなことではあのダンジョンに攻め込めないではありませんか……A-ランクとはいえ、彼らの凶暴性は欠かす訳には行きませんし……困りました……」


 そう呟いた時、脳内にレッディルの念話が届いた。


『主よ、聞こえるか? 主よ。』

「レッディル? どうしたのですか?」

『冒険者の気配がする。5人組で、2体が獣人、2体が龍、そして1体が人間だ。』

「なっ? に、人間ですか?」

『ああ。人間だ。』


 『人間』というフレーズを聞いた瞬間、リーンの目が輝いた。彼女の最愛の兄、セントグリフ・クレイティブ・カールは数年前、この【ドラゴンの巣窟】の中でダンジョンを攻略しに来ていた人間に殺された。リーンは、兄を殺した『人間』という種族そのものを目の敵にしているのだ。


「ならば、なんとしてもその人間は倒します! その他は逃がしても構いませんが、人間だけは……」

『相変わらずだな、主よ。ならば、どこまでで始末する?』

「フライングドラゴンのいる第7階層に入られると面倒ですから……最悪でも深さ60ですね。まあ、そこまで来させる気はありません。レッディル、第5階層にいるブルーワイヴァーン20体を第4階層に、それから、第1階層にいるミニスタードラゴンたちを第2階層に移動させてください。」

『その他には?』

「フライングドラゴンたちのいる第7階層にのみ精神安定作用のある霧をグランドドラゴンに散布させておいてください。よろしくお願いします。残りの指示や細かい位置調整は私がダンジョンコアを通して行います。」

『了解した、主よ。』


 レッディルはそう知らせると、念話を切った。リーンはダンジョンコアに手を当て、その他のドラゴンたちに指示を与え始めるのだった。



 3時間後、ダンジョンの戦闘は終わった。結果は【ドラゴンの巣窟】の圧勝。ダンジョン側の被害はミニスタードラゴン1体がかすり傷を受けたことのみ。リーンの思惑通り、人間の冒険者を殺害することにも成功し、残りの冒険者には逃げられたものの、目的は達成された。


「ああ、兄上……兄上のいらっしゃる世界にまた人間を1人送り込むことに成功しました……兄上はお喜びになってくださるでしょうか……?」


 リーンはダンジョン内に造った墓地にあるセントグリフの墓に向かって合掌した。ここにはリーンが今までに倒した冒険者や、ダンジョン内で殺された配下のドラゴンたちの墓も並んでいる。リーンは人間を憎んではいるが、倒した者は種族を問わず弔ってやる主義なのだ。


「これで38人……兄上を殺した人間はまだ見つかっていませんが……いつか、私がこの手にかけて殺します。その為には、一刻も早くあのダンジョンに侵攻して、ダンジョンマスターを捕らえなければ……」

『主よ、そんなに焦る事は無かろう? 先日調査した、あのフェリアイルステップのダンジョンはまだできたてだ。』

「それが何だというのですか、レッディル?」

『少しは落ち着け、主。できたばかりのダンジョンの新米ダンジョンマスターがそんなに大量に人間を呼び寄せるような罠を作れる訳がないだろう。せめて2年ほどは経過していないとな。』


 レッディルの至極冷静な物言いにリーンは少し落ち着く。


『それに、前にも言ったがセントグリフ殿が帰って来るわけではないのだぞ。いい加減『人間』という種族そのものを目の敵にするのはやめた方が良いのではないか?』

「前にそうあなたに言われた時に言いましたが、そんなことは百も承知です。でも憎いんですよ。それに、人間が大量に来れば、あの時攻略に失敗したあの人間がまた来るかもしれません。この髪の毛と同じDNAを持った、兄上を殺したあの憎き人間が……」


 リーンはセントグリフを殺した人間が落としていった髪の毛を睨みつける。


『なぜそこまでセントグリフ殿に執着するのだ? 我には理解できん。』

「生まれてからの記憶を全て失った私をずっと育ててくれたのは兄上です。あなたは理解できないのかもしれませんが、私は兄上を尊敬し、崇拝し、恋い焦がれていたのです。」

『それは一時の気の迷いではないのか? 肉親に恋心を抱くなど、失礼だが正気の沙汰とは思えん。』

「気の迷いではありません。私は兄上を心の底から愛していたのです。だからこそ、兄上を殺した者を許す訳にはいかないのです。」


 リーンはそう宣言した。


『ならば、我がもう一度調査に行って来るか? 今回は炎を吐かんように注意する。もっと確実なあのダンジョンの情報を手に入れてくると誓おう。』

「それならば心強い限りですが……くれぐれも気を付けてくださいね。ドラゴン族モンスターの中で最も速く飛べるとはいえ、あなただって無敵という訳ではないのですから。」

『我のことは我自身が最もよく分かっている。案ずるな。必ず根拠のある情報を持ち帰ろう。』


 そう強く言い切ると、レッディルは念話を切った。リーンがウィンドウを開けると、羽根を広げてゴーンドワナ大陸の方角へと飛び立っていくレッディルの姿があった。


「レッディル、頼みましたよ。あのダンジョンのダンジョンマスターが人間だという確たる証拠を、どうか……兄上の無念を晴らすためにも……」


 リーンはセントグリフの墓の前で、切実な表情でそう呟いた。

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