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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第3章:マスターと街

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side ホイジンガ、ウェーバーギルド クエストの見方

「ククク、フフフ……」


 ホイジンガギルドのマスターの執務室。そこでギルドマスターのリカルツ・グレイ・ガルドスは気味の悪い嗤い声をあげた。


「ダンジョン発見情報がこの時期に入るとは運が良い。あの3人パーティも使えると思っていた獣人もいなくなって稼げなくなるかと思っていたが、ダンジョンならば希少なモンスターがいる可能性もある。その素材を売ればかなりの稼ぎになるだろうな……ククク……」


 守銭奴のリカルツは、リチャードが貼っていったダンジョン発見情報を見て、稼ぎになりそうだと思っていたのだ。


「早速、明日にはギルドメンバー全員対象の攻略クエストを発注するか……報酬は多少高くつけてもお釣りがくるだろう。まだ発見されたばかりならば低ランク。大した問題はないだろうし、俺も行ってみるか。」


 そう呟くと、リカルツはまたあくどい嗤い声を漏らすのだった。



「おい、見たか? あのギルドメンバー全員対象のダンジョン攻略クエスト!」

「見た見た。報酬が桁外れだよな! モンスターの素材を持ち帰ったら10万ゴルド、いるモンスターの種類を調べたり内部の地図を作ったら50万ゴルド、完全攻略してダンジョンコアを持ち帰ったら500万ゴルド! あのドケチで有名なマスターがこれだけ報酬を出すんだ。こんなチャンスは滅多にねえ! もちろん受注するよな?」

「ああ。当たり前だろ。だが、見つかったばかりとはいえダンジョンはダンジョン。俺は仲間を集めてからかかることにするぜ。」

「俺もそうする。」


 翌日、ギルドは大賑わいだった。皆、リカルツが発注したダンジョンの攻略クエストの報酬額に目を輝かせている。だが、シーズンが問題だった。


「これが今じゃなければもうちょっと早くかかれるんだがな……」

「ああ、確かにそうだな。そろそろフライングドラゴンの襲来シーズンだから、俺のパーティメンバーも何人か飛龍の渓谷に向かってるし……」

「ま、命あっての物種だ。面子が揃ってからの方が確実だろ。」


 今の時期は1年に1度のフライングドラゴンが襲来するシーズン。フライングドラゴンはドラゴン族の中でもかなり凶悪な種族で、ランクはA-。普段人里に降りてくる事は無いのだが、繁殖期には人の街を襲うことがある。それを抑える為のクエストも発注されており、多くのパーティはそれを受注して飛龍の渓谷というフライングドラゴンの塒へ向かっていたのだ。


「フライングドラゴンどもが今繁殖期じゃなけりゃ、大きく稼ぐチャンスだってのに……まあ、仕方ねえ。あと10日程で奴らの繁殖期も終わる。それからでも遅くはねえだろ。どうせウェーバーギルドの奴らも同じような状況だろうしな。」

「ああ、そうだな。焦ることはねえ。」


 ホイジンガギルドのギルドメンバーは、そう言いつつも、逸る気持ちを抑えるのに大変だった。


              ☆  ☆  ☆


 ところ変わって、こちらはウェーバーギルド。受付嬢のレナ・ルー・ミウはウェーバーギルドのギルドマスター、ヴェトル・カリス・ティグルに新しいクエストの説明をしていた。


「マスター、新しいクエストはダンジョン発見情報です。どうやらフェリアイルステップに出来たようです。」

「何? ダンジョンだと? 戯言では無いな?」

「はい。Aランクである大魔術師のリチャード・ルドルフ・イクスティンク様が発注なさったクエストですので、確かな情報です。」

「ふむ……大魔術師か……ならば、戯言で自らの地位を危うくするようなことはせんだろうな。よし、では早速挑戦者を募ろう。まずは偵察に行く者。それから攻略に挑戦する者。内部情報などがさして分からぬうちに挑戦させたりしたら、ギルドメンバーの多くが命を落としてしまうだろう。レナよ、偵察に適任者はいるか?」

「今はフライングドラゴンの襲来シーズンにピッタリ被ってしまっていますから……高ランクの斥候や探索者シーカーなどは暴れやすいフライングドラゴンを探す為に飛龍の渓谷に向かっていますね……」

「そうか……ダンジョン探索に単独で向かわせるとなると、B+ランク以上が望ましいからな。一級以上の称号を持つ斥候や探索者が欲しいところだが……」


 そう言うと、ヴェトルは溜息を吐いた。ダンジョンというのは、放っておけばどんどん巨大化して攻略が難しくなる。そして、ダンジョンが大きくなればなるほどそこの瘴気や邪素など負の魔力は濃くなっていく。ダンジョンで人が死なないのならばそれは別だが、そんなダンジョンはあり得ない。


「そうだ、このダンジョンクエストの発注者は大魔術師だったな? Aランクならば不足は無い! その大魔術師……リチャード・ルドルフ・イクスティンクに頼むのはどうだ? お前が専属担当受付なのだろう?」


 目を輝かせて言うヴェトル。レナはいささか返答に困った。リチャードに頼めば、彼は恐らく重要なところを隠した地図やダンジョン情報などをくれるだろう。彼自身変化が欲しくて地上に来ていたのだ。少しぐらい冒険者が奥に入ってこないと面白くないから、と。しかし、そんなことをさせようものなら、彼のお付きの妖精……ティリが黙っている訳がない。次に会った瞬間に消し炭にされたり、灰も残さず吹き飛ばされたりしても何の不思議も無いのだ。


「それは……いささか難しいです。リチャード様はAランクではありますが、ウェーバーギルドのギルドメンバーではありませんから。彼はどこのギルドメンバーでもないですが、こちらの都合で振り回す訳には行きません。」

「そうか……では、取り敢えず招集をかけよう。単身で挑める上級の斥候や探索者。それと、その調査をもとにして適性ランク以上でダンジョンにチャレンジする勇気のある冒険者。この際、報酬は要求額で構わん。メンバーの命の方が大切だからな。レナ、書類の作成を頼む。」

「はい。了解しました、マスター。すぐに書類の作成に取り掛かります。」


 レナはヴェトルに言われた通り、書類仕事に取りかかった。


「くれぐれも冒険者を煽るようなことは書くなよ。また、探索に行く場合は必ず私と面会できるように。意味無くメンバーの命を失うことは、私の最も忌み嫌うものだ。」


 これまでの話で分かっただろうが、ヴェトルは人格者で、メンバーを皆家族と同じように思っている素晴らしい高潔な人物だ。ギルドのメンバーや職員は皆彼のことを尊敬、若しくは崇拝していると言っても過言ではない。



 一口にギルドと言っても、マスターの性格一つでクエストをただの稼ぎと見るか、それとも慎重に行うべき危険なものと見るかは違うのだった。

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