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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第3章:マスターと街

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35.ウサギとリチャード

「なあ、ティリ。」

「はい、何ですか?」

「ここ、どこだ?」


 俺たちは道に迷っていた。なんかアサンドルからヤスパースに向かっているときと同じ感じだな。


「ダンジョンに向かってるはずなんだけど……こっちがフェリアイルステップなのか?」

「そんなの分かりませんよ。私は万能ナビゲーションじゃありませんから。」

「ま、そうだよな。ルキナスさんに聞いてもどうせわからないだろうし……」


 俺は途方にくれた。ドーイバイクに乗っているので、シルヴァに乗って帰る訳にはいかないのだ。そんなことをしたら、ドーイバイクをここに置いて行かなければならなくなる。しかし、それは不法投棄に当たる。


「どうしよう……」


 俺がこう呟いた時、突然ドーンという音がし、横にあった木が空へ打ち上げられた。ティリはびっくりして肩から飛び上がる。


「え? し、シルヴァ?」

「クウー!」


 シルヴァが飛び出してきた。俺は呼んでいないのに……と思っていると、


「クク! ク、クウウウウー!」


 変な鳴き声を出し始めた。


「ティリ、なんて言ってるか分かるか?」

「えっと、『凶暴な肉食モンスター接近中!』って言ってます。」

「な、何だって? うちのダンジョンにいるモンスターか?」

「クククウウ! クウ!」

「『いません! プレデターラビットです!』……って、ええ? プレデターラビット?」

「ティリ、プレデターラビットってそんなヤバいのか?」

「はい。プレデターラビットは見た目は愛玩動物ですが、中身は猛獣です。実質肉食ですし。」


 と言って、説明を開始した。


「外見にそぐわない凶暴性を持っていて、もの凄い大食漢です。草食モンスターのみならず、肉食のモンスターすら襲います。自らの攻撃が通じない者に服従するので飼いならすことは不可能ではないですが、かなり難しいです。」

「ウルフとどっちが強い?」

「どっこいどっこいですかね。単純な力比べではウルフの方が若干勝りますがスピードはプレデターラビットの方が上ですので。」

「ファイアウルフとだったら?」

「あ、それは確実にファイアウルフですね。攻撃力、防御力、スピード、筋力、どれをとってもファイアウルフが勝ります。」

「成程。じゃあさ、そのプレデターラビットってうちのダンジョンに配置できるかな?」


 俺のこの質問に、ティリは目を丸くした。


「何言ってるんですか! 無理じゃないですけど、飼いならすのは難しいって……」

「じゃあ、もしそいつら野放しにしといたらどうなる?」

「恐らく、即討伐クエストが下されますね。Dランクモンスターとはいえ、凶暴性は無類ですから。」

「そんなクエスト出てみろ。俺がなんで危険冒してまで街に出たと思ってるんだ? もちろんデートはしたかったが、それ以前にダンジョンの宣伝の為だぞ?」

「あっ……」


 ティリはようやく気付いたようだ。


「申し訳ありません。ご主人様の考えに気付けないとは、恥ずかしい限りです……」

「分かればいいよ。ところで、中々襲ってこないけど、そいつらどこにいるんだ、シルヴァ?」

「ク、クウクククウクク! ククククク!」

「『1kmほど先です! 死んだレーザーホースの肉を食べているようです!』って言ってます。」

「そうか……お前、スキル【超嗅覚】持ってたもんな……鋭すぎて勘違いすることもあるんだろう……」


 俺は落胆する。死んだ動物の肉を食っているのなら、こっちに向かっているのではないだろう。


「ご主人様、先程も言いましたが、プレデターラビットはもの凄い大食漢です。ですから、死体を食べ尽くしたら、次はこっちに向かってくると思いますよ。」

「え? そうなのか?」

「はい。彼らはそういうモンスターですから。」


 そうティリが言い終わったとき、西の方から何かが駆けてくる音が微かに聞こえた。そして、その音はあれよあれよという間に大きくなり、口元が赤く染まった2匹のウサギの姿が見えてきた。奴らがプレデターラビットか。


「うわ、マジで来た。シルヴァ、戦うぞ。まずは砂を巻き上げろ!」

「クウ!」


 シルヴァは一声鳴くと、地面に前足を突き立てる。途端に砂埃がもうもうと舞い、視界が悪くなる。


「トルネードサンダー!」


 続いて俺の放った魔術が砂を巻き込み、雷を纏った砂嵐となってプレデターラビットに襲いかかる。しかし、プレデターラビットは俊敏な動きでそれを避けると、俺に向かって大きく跳躍。恐らく一撃で喉笛を噛み切ろうとしているのだろう。だが、狙いが甘い。


「フライ!」


 俺は呪文を唱えると、地面を蹴ってプレデターラビットより高いところまで浮かび上がり、そこで魔術を解除。そして、落下しながらルビーの杖を構え、


「アイスホールド!」


 と叫ぶ。すると、ルビーの杖が青白く光り、そこから飛び出した魔力の塊がプレデターラビットを包み込んだ。プレデターラビットは空中で凍りつき、そこから垂直に落下。地面に激突し、そこで氷は砕け散ったが、2匹とも気を失っていた。


「エアフロー。」


 俺は上昇気流を起こしてそれに乗り、フワリと着地。


「ああ、ご主人様……凶暴なモンスターを歯牙にもかけずに撃退なさる凛々しきお姿……素敵です……」


 ティリがなんかうっとりとした顔をしていたが、俺は取り敢えず放置して気を失っているプレデターラビットに近付く。すると、プレデターラビットたちは目を覚まし、俺を見ると腹を見せてゴロンと地面に寝転がった。試しに腹を撫でてやると、


「キュー! キュー!」


 と鳴いて、くすぐったそうに身をよじる。しかし、牙を剥いたりはしない。完全に服従していると思って良いようだ。


「お前ら、俺のダンジョンに来るか?」


 俺が聞くと、プレデターラビットたちはガバッと起き上がって、


「「キュー!」」


 と鳴くと、ピョンピョンと飛び跳ね始めた。


「ティリ、こいつら何やってるんだ?」

「あ、えと……喜んでるみたいです。主と認めた人の住むところに居られるっていうことに喜びを感じているんでしょう。」

「へー。そういう種族特性なのか。ま、いいや。じゃあ、プレデターラビット。早速だけど初仕事。フェリアイルステップまで、俺たちを案内してくれ。」


 俺がこう言うと、プレデターラビットたちはピョンピョンと跳ねながら駆けだした。それを見てシルヴァは地中に戻り、俺はドーイバイクを運転して追いかけた。



「「キュー! キュー!」」


 15分後、俺たちは無事にフェリアイルステップに到着した。


「ふう、着いたか。1日も開けてないのに、なんか懐かしく感じるな。」

「そうですね。」

「クウー!」

「キュー!」

「キュー!」


 俺たちは一人一言ずつ感想っぽいものを述べる。


「よし、それじゃダンジョンに帰るぞ。」


 俺はそう言うと、ドーイバイクに乗ってダンジョンの入口へ向かった。後ろからはシルヴァが背中にプレデターラビットを乗せてついてくる。すぐ入り口に着いた。


「よし、シルヴァ、ご苦労だった。」


 俺はそう言ってシルヴァの頭を撫でる。シルヴァは嬉しそうに鳴き声を上げた。


「シルヴァ、プレデターラビットたちが冒険者の迎撃をするのに一番適していそうなところに案内してやってくれるか?」

「クウー!」


 シルヴァはそう鳴き、ダンジョンの中へと入って行った。俺はシルヴァたちの姿が見えなくなると、ドーイバイクを操って地下120階、即ちコントロールルームのある最深部までゆっくりとダンジョンの中を進み、ドアを開けて言った。


「ただいま!」


ダンジョン名:友好獣のダンジョン

深さ:120

階層数:12

モンスター数:223

    内訳:キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       プレデターラビット    2体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       フレイムイーグル     5体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    3体


友好条約締結者

リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)

レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)

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