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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第3章:マスターと街

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31.試験とリチャード

「まずは、これに触れてください。」


 部屋に入ると、レナさんはなんか見覚えのある水晶玉を差し出した。


「これは……?」

「この水晶玉に触れることで、適性のある魔術属性が分かるんです。」


 やっぱり訓練場でルキナスさんが使っていた水晶と同じようだ。


「これに触ればいいんですか?」


 既に使用方法は分かっているのだが、俺は一応聞き、水晶に触れる。すると、あの時と同じように水晶は虹色の光を辺りに発し、激しく輝いた。


「え? 嘘……全属性に適性ありなんて……」


 レナさんは目を見開いて固まっている。やっぱり相当珍しいんだな、全属性に適性ある人間って。妖精のティリですら全属性に適性は持ってないし。


「あの、どうかしたんですか?」


 俺が声をかけると、レナさんはハッとしたような顔になった。


「……い、いえ! な、な、何でもありません! で、では、魔力量調査に移りますので、こちらの魔力石に触れてください。」


 そう言ってレナさんは、今度は真っ黒の石を持って来た。


「これに触れることによって、魔力量が分かります。魔力の量により、橙、黄、黄緑、緑……と色が変わるんです。」

「さっきと同じように、これに触れればいいんですか?」

「ええ。」


 俺はその魔力石というらしい黒い石に手を当てる。すると……


 ――パーンッ!


「きゃあ!」

「うおっ?」

「ひっ!」


 レナさん、俺、ティリの声が被る。魔力石が粉々に弾け飛んだのだ。


「魔力石が粉々……単純に考えると、魔力が強すぎて計測不能ってことに……」


 レナさんはまた絶句。


「あの、俺は何かおかしいんですか?」

「あ、い、いえ! そういう訳では……ただ、その、何と言いますか……規格外、っていうことになります。」

「それはつまり、俺は冒険者になれないってことですか?」

「そういうことではありません。試験を受験し、合格すれば例え殺人鬼でも冒険者にする。それが冒険者ギルドの信念ですので。」


 えらく物騒な信念を掲げているな。まあ、特に問題ないならいいけど。


「では、リチャードさんの試験を行いますので、試験場へご案内致します。こちらへどうぞ。」


 レナさんはそう言うと、部屋の奥の扉を開ける。俺たちは、促されるままその部屋に入った。中はかなり広く、壁も床も天井も、土でできているかのような焦げ茶色。そして、髭面でガッチリしている、所謂ガチムチの男性が立っていた。


「こちらが試験場です。そして、あの方が今回の試験官の……」

「バミック・ジョー・レイティルだ。よろしく頼む。」

「あ、はい。リチャードです。よろしくお願いします。」


 バミックさんというらしいその試験官は軽く会釈をしてきたので、こちらも会釈をして返す。

 

「試験はリチャードさんとバミック試験官の模擬戦。どちらかが行動不能になるか、ギブアップするまで続きます。バミック試験官に魔術の腕を認めさせるか、バミック試験官に勝つか、どちらかをクリアすれば晴れてリチャードさんは冒険者です。」

「成程。他には?」

「妖精さんの手助けは禁止です。試験終了まで、こちらで預からせて頂きます。」


 そう言ってレナさんはティリに手を伸ばす。俺はさっと肩を引き、レナさんを睨みつけるとこう言った。


「レナさん、預かるのは別に構いませんけど、ティリに触れないで貰えますか?」

「え? いや、しかし……」

「私にご主人様以外の人間が触れるのは禁止です。うっかりして接触してしまった、ぐらいならば別にいいですが、故意に私に触ろうとしたら……」


 そこでティリは一度言葉を切ると、ニコッととても可愛らしい笑みを浮かべ、


「跡形も無く消し飛ばしますよ♪」


 と言ってウインク。


「おい、ティリ……」

「何ですか? ご主人様が触るなって仰ったので、私も私なりの考えを述べたのですが……それもやめろと仰るのですか? またお説教ですか?」

「いや、今回ばかりは何も言わない。寧ろグッジョブだ。」


 俺はそう言って親指を立てる。俺たちの雰囲気に怖気づいたのか、レナさんはブルブル震えている。


「あ、じゃあレナさん、ティリを預かっていてください。但し、絶対に触ろうとしないようにお願いしますよ。」


 俺の言葉と同時に、ティリがフワリと浮き上がり、レナさんの横に行く。


「は、はい……かしこまりました。」


 レナさんは少し引きつった顔でそう答えると、部屋の真ん中まで歩いて行った。そして、


「では、これより試験官バミック・ジョー・レイティルと受験者リチャード・ルドルフ・イクスティンクの模擬戦を始めます。使用してよい魔術の量、属性は共に無制限。但し、召喚獣の使用は禁止。どちらかが行動不能になるか、ギブアップをしたら模擬戦終了です。では、開始!」


 と宣言。バミックさんは手をこっちに向けると、クイクイッと動かした。かかってこい、ということだろう。こういう感じの戦いは初めてなので、何だかワクワクする。俺はルビーの杖を構えると、


「【アクアトピア】!」


 と呪文を唱えた。水が滝のように降り注ぐが、バミックさんは少し水を浴びただけで、すぐにサッと躱すと、


「【ブラックホール】!」


 と唱えた。水の軌道が強引に捻じ曲げられ、バミックさんの手から出たビー玉ぐらいの大きさの黒い球に吸い込まれていく。


「今のは闇属性の魔術か? まあいいや。【サンドストーム】!」


 今度は俺は土風二重属性の魔術で砂嵐を起こす。バミックさんに砂嵐が迫る。しかし、


「【ウィンドカッター】!」


 バミックさんが放った風の刃が砂嵐を切り裂いた。その後もいくつかの魔法を使ってみた。ポイズンスモーク、ウォーターカッター、コールドフィールド、ダイヤモンドダスト。更にあのセクストゥム・ド・ゲイルとかいうバカ貴族に放ったトルネードサンダーやあっちが使っていたウィンドスラッシャー。しかしそのどれもがバミックさんの使う防御魔法に阻まれてしまう。


「君は少し力の使い方を考えた方が良い。もう魔力だって残り少ないのだろう? 今は冒険者になるのは諦めた方が良いんじゃないのかね?」


 バミックさんがそう言ってくるが、はっきり言って俺の魔力は1割も減っていない。俺はバミックさんが油断している今がチャンスと思って、ルキナスさんに教わったスーパーアクティブの魔法を放った。


「【クラッシュ・キャッスル】!」

「なっ?」


 威力は凄かった。杖から出た七色のエネルギー弾がもの凄い勢いでバミックさんに襲いかかる。そして、バミックさんが張ったバリアを次々とぶち抜き、バミックさんを吹き飛ばした。バミックさんは壁に背中を打ち付け、ゴホゴホと咳込むと、意識を失う。


「そこまで! 勝負あり! リチャード・ルドルフ・イクスティンクの勝利です!」


 レナさんの声で、俺は勝ったのだ、という実感が湧いてきた。ティリが凄い勢いで飛んできて、俺に抱き付く。


「おめでとうございます、ご主人様!」

「ありがとう、ティリ。まあ、これで冒険者になれるみたいだし、良かった良かった。」

「では、冒険者カードを発行いたしますので別室へご案内致します。」


 そう言ってレナさんはドアを開けた。


「え? バミックさんは放っといていいんですか?」

「ええ。試験官は頑丈ですから、2分もすれば目覚めますし。」


 そう言うと、レナさんはスタスタとドアから出て行った。俺たちは慌てて後を追った。

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