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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第1章:マスターとダンジョン
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3.ダンジョンと妖精

「くうー……肩凝った……」


 俺は椅子の上で伸びをしながらそう呟いた。ダンジョンを作り始めて早30日、まだ第1階層しかないものの、その深さは10に及び、横道も作ったので侵入者をそれなりに惑わすことができるだろうと思われる。因みに、初期と比べると遥かに大量に入るようになったDPは、ダンジョン拡張以外、ウルフやジャイアントモールの餌となるモンスターや動物の召喚、その他コントロールルームの設備などに消えていく。かなり大きくかかるのだが、今は深さが10となっている。1日10000P入るので、足りないという事は無い。実を言うと、今日入ったDPには俺はまだ手を付けておらず、昨日までに入っていたが使っていなかったDPで俺はダンジョン内の壁を整えたり、ビッグワームを召喚したりしていた。


「そろそろ、あれを購入してもいい頃かな……ティリは今ダンジョン内の魔力マナ量の調査に行ってるから、戻ってこないうちに……」


 俺はそう言いつつ、shopを開く。そして、家具一覧をスクロールし、スプリングベッドを見つけた。実は、ダンジョンの拡張やダンジョン内の環境を整えるのには時間が予想以上にかかり暇が無かった為、俺が寝ているのは未だに藁のベッドなのだ。


「やっと念願のスプリングベッドが購入できるか……2000DPって結構高価だけど今溜まってるDPのポイント量からすれば安い方だな。」


 俺はそう呟いてスプリングベッドを購入する。すると藁のベッドが消滅し、DPが50増加。そしてスプリングベッドが出現し、今度はDPが2000減少した。


「よし、次は……」


 俺は家具一覧をスクロールして、もう1つのお目当ての物を見つけると、それを召喚する。3000DPを消費したが、これでティリの喜ぶ顔が見られるなら安い物だ。俺はティリが帰って来るのを待ちつつ、せっせと穴を掘るジャイアントモール(新たに召喚され20体に増えている)とエネルギー消費を抑える為に寝ているウルフ(新たに召喚され30体に増えている)をウィンドウ越しに眺めていた。



「ただいま戻りました、マスター。ダンジョン内のマナ量は異常なしです。ただ、やはり濃度が少し薄いです。このままではワームの召喚にDPが削られていきますし、モンスターたちも増えたので、早めにマナの確保方法を考えた方が良いですね。」

「ああ、分かった。じゃあ、マナを生み出せる非光合成の植物系モンスターでも探すかな。まあ、まだあと11か月の猶予があるし、焦らずじっくり強化していくか。ティリ、これからも俺を支えてくれるか?」

「勿論です。マスターは私のご主人様ですから。」


 俺はティリの中でいつの間にか『マスター』から『ご主人様』にランクアップしていたようだ。


「ありがとう。じゃあ、そんないい子のティリにはプレゼントだ。」


 俺はそう言って、3000DPで召喚した物を取り出す。


「これって……ドールハウスですか?」

「ああ。それもマホガニーっていう名前の木を使っている、最高級品らしい。俺が藁のベッドからスプリングベッドに変えたら、ティリが使ってた藁も無くなっちゃってな。でも俺と同じベッドで寝る訳にはいかないだろうし、かと言って布団が無い状態で寝るのは厳しいだろ。という訳でshopで探したら丁度いい物があったから、毎日毎日ダンジョン内を飛び回って頑張ってくれるティリにあげようと思ってな。」


 俺のこの言葉を聞くと、ティリの目から涙が零れた。


「えっ、ちょっ、何で泣く? まさか、気に入らなかった? そうか、ティリは妖精だから、人形と一緒にされるのは嫌だったか。悪い、すぐに捨てる!」


 俺が500DPを使用して【焼却炉】を召喚し、そこにドールハウスを放り込もうとすると、ティリは泣きながらも慌てて止めた。


「ち、違います! う、嬉しくて……嬉しくて泣いてるんです……」

「何が泣くほど嬉しい? 俺はティリが俺を支えて、いろいろアドバイスしてくれて、その上毎朝起こしてくれたりする、俺にとってなくてはならない存在だから、ねぎらいの為にドールハウスをあげようと思っただけなんだが。」

「そのお心遣いが嬉しいんです……私みたいなダンジョン運営にとってほとんど役に立たない妖精に、このような上等なものを純粋にくださるお優しい殿方には、今までお会いしたことがありません……普通、ダンジョン付きの妖精は使えるだけこき使われて、動けなくなったらダンジョンコアに吸収されてDPの足しにされるだとか、モンスターに餌として与えられてモンスターの保有魔力量の足しにされるだとか、そのような悲惨な末路を辿ることが多いんです。」

「何だって……そんな酷いことを……」


 俺は怒りに震えた。偽善かもしれない。でも、ダンジョンのことなど何も知らないダンジョンマスターに手取り足取り教えてくれる妖精をそんな酷に扱うなんて、最低だ。


「でも、マスター……ご主人様は違いました。私を必要としてくださりますし、毎日毎日びしょ濡れにしてもちっとも怒らず、それどころか『起こしてくれてありがとう』とお礼を言ってくださいます。それだけでも幸せなのに、ご主人様はご自分のベッドの藁を使って私の寝床を作ってくださったり、このような、ご自分がお休みになられるベッドよりも高価なドールハウスをプレゼントしてくれたりと、私の事を考えてくださいます。私はご主人様のようなご主人様にお仕え出来て、幸せです。」

「……買い被りすぎだよ。昔の記憶は無いけど、多分俺はティリが思ってるような立派な人間じゃない。」

「いいえ! ご主人様は立派で謙虚で誠実な人間の鑑のようなお方です! ですが……」


 ティリは口ごもった。


「どうかしたのか?」

「実は……私はご主人様にこの30日間、ずっと隠していたことがあるのです……ご主人様を欺き続けていたのです……本当は、ご主人様に話すつもりはありませんでしたが……ご主人様の優しさに触れた今、私はもうご主人様をこれ以上騙し続けることができなくなりました……」


 そう言うと、ティリは衝撃的な一言を口にした。


「私は……ダンジョンの死神なんです……」









ダンジョン名:‐‐‐‐‐‐

深さ:10

階層数:1

DP:4550P

所持金:0ゴルド

モンスター数:55

    内訳:ジャイアントモール  20体

       ウルフ        30体

       ビッグワーム      5体

侵入者数:0

撃退侵入者数:0


ダンジョン開通まで残り335日


住人

ダンジョンマスター(人間)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

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